藤井流星「コメディを書いてくれませんか?」熱望から実現した『ROLL⦅CAKE⦆TIME』 で見せたいもの
ステージ
インタビュー
(撮影/米玉利朋子)
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すべて見るこの夏、WEST.の藤井流星が挑むのは、西田征史の脚本・演出のハートフルなサスペンスコメディ『ROLL((CAKE))TIME』。2020年にドラマと舞台化した『正しいロックバンドの作り方』以来、6年ぶりに西田と藤井がタッグを組んだ舞台だ。藤井の熱望により実現し、企画段階から携わって届ける本作。物語は、主人公が本当に守るべきものと向き合うことになる、少し不思議で、少し切ないが笑って泣けるストーリー。不器用なパティシエ役で、藤井の可愛らしさと男らしさの両面の魅力を味わえる作品になりそうだ。
西田さんに「コメディを書いてもらえませんか?」とお願いして実現
西田征史による完全オリジナルの書下ろし最新作舞台は、ハートフルなサスペンスコメディ。2020年にドラマと舞台化で話題になった『正しいロックバンドの作り方』以来、6年ぶりにタッグを組むのが藤井流星だ。
「西田さんとの舞台は、6年ぶりになります。『またいつか一緒に作品を作れたら嬉しいですね』という話をずっとしてきて。僕が舞台『NOISES OFF』(2023年)に出演した時に観に来て下さった時もそんなお話をしましたね。1年前にご飯に行った時に『コメディを書いてくれませんか?』とお願いをしたことから、実現したのが今回の舞台です。西田さんがプロットを3つくらい考えて下さって、『どういう方向性が面白いか』と話していたんです。でも、舞台はスケジュールもあるから、いつできるんだろうって感じだったので、やっと実現して嬉しいです」
今作は15年前に両親を交通事故で亡くした悲しみを抱えたまま、親から受け継いだロールケーキ専門店【くるん】を守ってきたパティシエの青柳敬治郎が主人公のハートフルサスペンスコメディだ。コメディを書いてほしいと提案したのは、藤井だが、コメディにしたかった理由とは?
「舞台は観劇するのも、演じるのも、コメディが好きなんです。舞台を観た時に笑いたいなと思うんですよね。これまで舞台は3年に1回ペースでやっていて、今回が4度目なので、たくさんやってきたというわけではないんですけど。演者として、観に来た人のリアクションが1番分かりやすく感じられるのってコメディだと思います。自分の中で舞台に出演するんやったら、笑ってもらいたいという思いがあり、コメディ作品にしたかったんですよね」
西田は、朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』やアニメ『TIGER & BUNNY』、ミュージカル『SUNNY』など、ジャンルを問わず、多くの作品の脚本と演出を手掛けている。今回の西田の書下ろしのシナリオについては、一体どんな印象を受けたのだろうか。
「西田さんのオリジナル脚本ということで、もう絶対に面白いものになるとは思っていたんですけど。西田さんの頭の中にあるものがどう展開していくのか、期待していましたからね。西田さんの脚本に共通して言えるのが、ストーリーの巧妙さ。『だからこうなのか』と後半になって分かってくるのが、醍醐味なのかなと思っていて。サスペンスというジャンルでもあるので、伏線回収もあります。その中に馴染みのある定番的な展開も入ってきますし、いろんな要素がすごく絶妙にマッチしているなという印象を受けました。あと、『正しいロックバンドの作り方』の時は、僕と神ちゃん(神山智洋)が兄弟という設定だったんです。今回も兄弟もので、家族の物語でもあるので、家族の絆にほっこりできる話になっていて。サスペンスではあるけれど、最後は笑って終われる舞台という印象を受けました」
主人公は自己犠牲を厭わない、良いやつ

藤井が演じる青柳敬治郎は、ロールケーキ専門店【くるん】のイケメンパティシエ。困っている人がいたら助けるのがモットーの青年だ。取材のタイミングでは「稽古も始まっていないので、どう演じようかなってまだ悩み中です」と話しながらも、役をどう捉えているのか、語ってくれた。
「西田さんが考える役のイメージがあると思うので、自分の中で決めすぎずに稽古に挑もうと思っているところで。キャラクターとしては、陽キャでバカもできるタイプ。台詞は、標準語ですけど、意外と関西っぽいノリなんですよね。兄としての責任感とか、頼りがいはしっかりあるタイプで、すごくいいやつなのかな。僕は妹がいるので、性別は違うけど、長男であるという点は、自分に置き換えて、重ねやすい役どころ。物語の中で、弟のことをすごく大事に考えているところは、共感できますね」
物語は、15年前の両親の事故の裏に眠る“ある影”を知ったことから、主人公の日常が揺らぎ始める。やがて、敬治郎は避けられない出来事に導かれるように過去と向き合うことになっていく。真実に迫ろうとする者とそれを阻もうとする者。絡み合う思惑は、周囲を巻き込み、予測できない展開を迎えるストーリーだ。
「ハートフルなコメディでもあれば、サスペンスでもあるお話です。だから、結構シーンによっては振り幅があるんです。ドーンと落ちるところもあるというか……。その振り幅は大げさにしたくはないですし、役の軸から外れすぎずに、全部できるように頑張りたいです。舞台って、あまりテンション感を変えると別の人物みたいに映るような気がしていて。そうはならないようにしたいですね。人が変わったようになる場面もありますけど、そこでは敬治郎に心情の変化があって、こうなったんだって理解できるようなギャップにしたいです。この人が落ちこんだら、こうなるんだ、というのを違和感なく、キャラクターの芯をぶらさず演じたいですね」
プロットの段階では決まっていなかった主人公の職業。なぜパティシエなのかは、西田さんの狙いがあるそうで、交通事故の裏に眠る“影”が明るみになるにつれて、分ってきそうだ。
「パティシエとして店を続けようとする姿勢にはもちろん共感できますし、なぜロールケーキ屋をやっているのかにもちゃんと理由があるんですよね。ちょっと不器用な主人公だから、突っ走ってしまう……。でも、それは弟のためだったり、誰かのためだったりする。自己犠牲を厭わない、良いやつってことは間違いないです」
皆で楽しくできるカンパニーにしたい
ここ1、2年は、ドラマ『キスでふさいで、バレないで。』『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』『ぜんぶ、あなたのためだから』『エラー』と映像で次々と活躍。舞台は久しぶりになるということで、舞台の芝居を思い出すところからになりそうだと話す。
「この舞台は、西田さんと一緒にゼロから作り上げていくものになりそうです。『正しいロックバンドの作り方』の時は、脚本も役ももう出来上がっていた舞台だったんですけど、今回はゼロから一緒に作っていっている感じがします。最近はドラマが続いていて、舞台は久しぶり。声の張り方もどれくらいだったっけって思い出すところからになるかもしれないです。ちなみに僕の場合、ドラマだったら役作りをどうするか考えながら何回も台本を読みます。だから、台詞を覚えるというより、どう演じるか考えるほうがメインで。一回考えて、2、3日後に撮影となったら、台詞を覚えるみたいな作業をしてきたんですけど。舞台は、稽古までにまず台本の台詞をまるまる覚えます。稽古までには台詞を全部入れておきたいので。舞台での動き方や見せ方は、稽古でまた変わってくるので、役作りより台詞入れ先行。そのやり方は久々だなって」
藤井が演じる青柳敬治郎と共に支え合って生きてきた弟の直役には、濱田龍臣、地元で絶大な力を持つ黒崎建設の社長の息子で大きな秘密を抱える黒崎克也役を駿河太郎が演じる。共演には芸達者なメンバーが名を連ねる。
「濱田くんが弟役で出演して下さるので、兄弟関係を演じられるのが楽しみですね。兄弟の掛け合いの台詞は、テンポ感が大事になってきます。濱田くんとほんとの兄弟みたいな関係性に近づけたら、役の関係性を演じられるのかなと思うので、仲良くできたらいいですね。共演者の皆さんの年齢の幅が広いので、皆さんの負担にならないようなら、ご飯を食べに行けたらいいなと思います。あと、克也役の駿河さんとのお芝居も楽しみです。ドラマにもよく出ているじゃないですか。お芝居の経験豊富な方々ばかりなので、学ばせていただきたいと思ってます。皆で楽しくできるカンパニーにしたいですね」
メインビジュアルでは、イチゴや抹茶、チョコレートカラーのカラフルなロールケーキの前で白いパティシエの作業着を着て微笑む藤井の姿が。ポップで可愛らしい仕上がりでサスペンス感はゼロなのが面白いところだが、撮影では「久しぶりにアイドル誌に出た気分やった(笑)」と笑う。
「ハートフルな要素がある作品ということで、メインビジュアルもポップで。撮影の時に『こういう感じです』と見せられたイメージ写真がカラフルなケーキの前に外国人の方が立っているもので、『めっちゃポップですね』っていうやりとりをしました。カラフルな甘いケーキに囲まれての撮影で思い出したのが、アイドル誌の撮影。久しぶりにこういうカラフルな空間で撮ったら、楽しかったです」
洋服は業者のように人一倍、持っています(笑)

ロールケーキ専門店のパティシエという役どころを演じるものの、ロールケーキを作ったことは一度もないという藤井だが、もし作るシーンがあれば練習して挑みたいという。
「ロールケーキが出来上がるまでの全ての過程を舞台上で演じることはないと思いますけど、作業工程の一部分くらいは、場面によってはあるかもしれないですよね。専門用語も台詞に出てきますから、覚えたいですし、作る場面があって練習もしたほうがいいということになれば一度は作ってみたいです。僕は、料理をたまにしますけど、スイーツ作りはしたことなくて。お酒を飲むんで、しょっぱい味の方がどっちかと言ったら好きなほう。
でも、先日、ツアーの静岡公演の時、ケータリングにプリンがあって、美味しそうだったから持って帰ったんですよ。カスタードのプリン、めっちゃ美味かったなぁ。調べたら、どこも売り切れで。売っていたら、また買いたいくらい。普段は自分でスイーツを買うことはないけど、ライブ会場のケータリングに並んでいると、食後にコーヒーと一緒に食べることはあるんですよね。あとは、手土産で買って行って、食べることもありますよ」
敬治郎は、両親が営んでいたお店を守るためにパティシエを続けている。藤井自身が長く大切にしているものはというと、古着なのだとか。「服は大事にしていますね。古着が好きで、どんどん増えていくので、昔買ったものを貸し倉庫に預けていて。捨ててないんですよ。人一倍、持っています(笑)。服以外やと時計もずっと好きだし、大切にしています」
そこから今後も長く続きそうな趣味の話に……。「ここ1年くらいは、カメラも好きになって。モノづくりをしていきたいなと思うようになりました。どこにも出してなくて、完全にプライベートですけど、作品撮りをするのが楽しくて。人物を撮るのが好きで、趣味なのにちょっと贅沢ですけど、モデルさんを撮っています。モデルさんが被写体だと上手く撮れるんで、自分の腕前がいいって勘違いしがち(笑)。
カメラが好きな向井康二が言っていたんですよ。『被写体が8割、技術が2割や』って。ホンマにそうだなって思う。人物の撮影は、モデルさんの力が大きい。最近はカメラ機材も買って、どっぷり沼に浸かってきましたね。今後は、ライブ映像を自分が撮りたいという思いがあって。もしかしたら1年後ぐらいには映像の機材も買っているかもしれないですね(笑)」
『NOISES OFF』以来、久しぶりの舞台で楽しみにしているというのは、観客の生のリアクションだという。観客と演者が同じ空間でダイレクトに繋がれる舞台ならではの良さを噛みしめてステージに立ちたいと、ワクワクしている。
「西田さんと一緒に作品をつくりたいという気持ちから始まったこの舞台、絶対にいい経験になるんだろうなと思います。ドラマが続いていたので、舞台でのお客さんの温度感や生の反応が楽しみで。そこはやっぱり映像では味わえないところですからね。舞台はもうある意味、ライブと同じ。その日によって、アクシデントがあったりするし、その場の雰囲気を楽しんでやるみたいなところが一緒なのかなと思います。
コメディのところは、しっかり笑ってもらいたいですけど、僕の普段の笑いのとり方は、はっちゃけたパワフルな笑いをするタイプではないので、役ではエネルギーを使った笑いをやっても面白いのかも!? そこは試行錯誤しながら、どんな笑いにするか考えたいですね。基本的には、伸び伸びと自由に、楽しんで演じれたらいいなと思います。その空気感がお客さんに伝わって、サスペンス要素の暗い場面があっても、最終的には笑顔になってもらえる舞台になったら理想ですね」
<公演情報>
『ROLL⦅CAKE⦆TIME』
作・演出:西田征史
出演:
藤井流星
濱田龍臣 市川しんぺー 滝裕二郎 鈴樹志保 伊藤浩樹 平井珠生 松尾敢太郎 駿河太郎
【東京公演】
2026年7月6日(月)~8月2日(日)
会場:東京グローブ座
【大阪公演】
2026年8月7日(金)~11日(火・祝)
会場:森ノ宮ピロティホール
撮影/米玉利朋子、取材・文/福田恵子
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