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犯罪にハマる! 有村架純×黒木華×南沙良の『マジカル・シークレット・ツアー』──闇の中で輝く一瞬【おとなの映画ガイド】

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『マジカル・シークレット・ツアー』 (C)2026「マジカル・シークレット・ツアー」製作委員会

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2017年に起きた、主婦たちによる金密輸事件に着想を得て生まれた映画『マジカル・シークレット・ツアー』が、いよいよ6月19日(金)から全国公開される。監督は、『ミセス・ノイズィ』の天野千尋。生活に行き詰った、異なる環境に生きる3人が、あるきっかけで出会い、犯罪の深みにハマっていく姿を、初共演の有村架純、黒木華、南沙良が悲哀を隠しながら、スリリングに演じる。それまで他人に流されて生きてきた者たちが、今までにない自由と幸福を味わい、自立していく物語でもある。

『マジカル・シークレット・ツアー』

和歌子(有村架純)は二児の母。ある日、平穏な暮らしが一変する。倒れて病院に搬送された夫に多額の借金があることが発覚、しかも会社の金を横領して解雇されていたのだ。困り果てた彼女が、家族を支えるためにたどり着いたのは、シンガポールから金塊を運ぶ“闇バイト”だった。

そこで出会うのが、アイドルグループの推し活を生きがいにしながら600万円の奨学金返済に追われる、非正規雇用の研究員・清恵(黒木華)と、キャバ嬢をしながら、だらしない母親に代って高校生の妹の面倒を見ている未婚の妊婦・麻由(南沙良)。年齢も性格も境遇も違うけれど、努力だけでは抜け出せない現実の中で追い詰められた3人が、最初はおそるおそる、やがて、大胆に、めくるめく“魔法のような秘密の旅“にハマっていくというストーリー。

金の密輸が儲かるのは、日本の消費税制度を悪用するからだ。海外で購入した金を日本に持ち込む際には、本来、税関で消費税を納めなければならない。それを申告せずに密輸し、国内で消費税込みの価格で売却すれば、支払わなかった税額に相当する差益を得られる。

映画の舞台となる時代は2017年。その後、急増する金密輸を防止するため2018年4月に罰金刑などが大幅に強化された。つまり2017年は、金密輸が社会問題となりながら、罰則がまだ整えられていなかった時期である。

その上、オレオレ詐欺や強盗みたいに、目の前の誰かを傷つけたり、物を奪ったりする犯罪ではなく、直接困る人はいない、と考えれば、自分の中で言い訳を作りやすい。重大な犯罪であるにもかかわらず、和歌子たちが抱く罪悪感が薄くなっていく心理、なんだかよくわかる。

3人が最初に手を染める闇バイト、そのシステムにはある意味、感心させられる。まるで、観光ツアーのようにシンガポールを訪れ、ガイドを装ったチラ見えタトゥーの男に引率されるまま、ホテルへ到着・軟禁。ちゃんと仕事の説明会も行われ、なるほどね、という段取りになっている。

その闇バイトによる“運び屋業務”は、見事に、というか、あっけなく成功してしまう。いわゆるビギナーズラックだ。その時の彼女たちのアドレナリンとドーパミンの分泌量といったら、きっと人生で一番多かっただろう。報酬を手にした3人はすっかり自信をつけ、自分たちでやった方がもっと儲かると、大胆に実行を重ねていく。もちろん、犯罪もドーパミン量もどんどんエスカレートし……。

シンガポールという舞台もいい。高層ビルが立ち並ぶ街、夜の光、車窓を流れる異国の風景。日本での行き詰まった生活とは、何もかもが違って見える。ちょっと古いけど、加藤和彦が歌った『シンガプーラ』という曲に「人生を忘れそう このアジアの片すみで」という一節がある。まさしく、そんな感じなのだ。危険な犯罪の最中なのに、彼女たちはそれまでになく生き生きとする。初めて解放感を味わっている。その皮肉が、この映画の切ないところでもある。

3人を取り巻く役者たちは、なかなかシブく魅力的な顔ぶれだ。和歌子の夫役に『SAKAMOTO DAYS』で不死身のサイボーグを演じるなど、いま引く手あまたな塩野瑛久、夫の上司は斎藤工。清恵の後輩役で青木柚、上司役は佐野史郎。ほかに篠原ゆき子も麻由の母親役で登場する。

主題歌は椎名林檎の「ありあまる富」。グッドチョイス! まるでこの映画のために作られたようなインパクトがある。

犯罪は犯罪、危険で、愚かで、いつか代償を払わなければならない。それでも、「こんな時間が続いてくれれば」と願う彼女たちが、なんとも愛おしく見えてくる映画です。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

細谷美香さん(映画ライター)
「……火花のようにきらめくシスターフッドを、シンガポールの光が優しく照らしている。」

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