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EXILE ATSUSHI、清 竜人、ドレスコーズ……濃密な個性と芸術性をあわせ持った男性アーティスト

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 EXILE ATSUSHIの“日本の歌”をテーマにしたベストアルバム、J−POPを再定義/更新するような清 竜人のアルバムなど、明確なコンセプトを持った新作を紹介。濃密なキャラクターと高い芸術性をあわせ持った男性アーティストの新たな表現をじっくりと味わってほしい。

(関連:EXILE ATSUSHIが示す、アーティストとしての歩み 『IT’S SHOW TIME!!』ライブ映像を観て

 EXILE ATSUSHIのベストアルバム『TRADITIONAL BEST』、テーマはずばり、日本の心。このテーマは“日本に生まれたアーティストとして、 日本という国を想い、日本に生きる人々を想う。そんな活動の中で生まれた”という。収録曲は、友人に子供が生まれた際にお祝いに贈ったという童謡「ふるさと -C.BECHSTEIN ver.-」、日本歌謡を代表する名曲「愛燦燦」(美空ひばり)、100年前の童謡誕生の史実を描いた映画『この道』の主題歌「この道」などのカバー、久石譲との共作による「懺悔」「天音」、ピアニスト・辻井伸行とのコラボレーションによる「それでも、生きてゆく」など全15曲を収録。原曲に対する深いリスペクトと「日本の名曲を歌い継ぎたい」という思いに満ち溢れた作品だ。ブラックミュージックに傾倒し、EXILEとして頂点を極め、アメリカ留学を経て、シンガーとして新たなフェーズに入っているATSUSHI。さまざまな経験、そこで生まれた感情を注ぎ込んだ彼の歌はここから、さらに幅広い層のリスナーに届けられることになりそうだ。

 平成元年生まれの清 竜人は、平成最後の日に、日本のポップスの新たな傑作をものにした。一夫多妻制アイドル・清 竜人25→完全オーディエンス参加型プロジェクト・清竜人TOWN→男性ピンアーティス・清 竜人とリスナーの予想や期待を余裕でぶっちぎりながら音楽的な質の高さとエンターテインメント性を体現してきた清 竜人。現在のコンセプトは、昭和の歌謡曲の優れたポイントを抽出し、現代の音楽と混ぜ合わせることだが、その主体性とも言えるのが本作『REIWA』だ。叙情性とドラマ性を感じさせるメロディライン、ラテン/ソウル/ジャズなどの要素をいいとこ取りしたサウンドメイク(アレンジにはミッキー吉野、星 勝、井上鑑、原田真二、瀬尾一三が参加!)、そして、風景と心情を重ねながら、日常のなかにある切なさ、慈しみ、悲しみをじんわりと描き出す歌詞。そう、本作によって彼は、J-POPの再定義と更新を同時に示したのだと思う。

 これから人類は穏やかに衰退していき、新たな種として繁栄するのかもしれない。そんなイマジネーションから制作が始まったというドレスコーズの新作『ジャズ』は、神話的な世界観とリアルな現実感、エキゾチックな雰囲気と近未来的なイメージを交差させながらーーそう、この作品は完全なフィクションではなく、現代と地続きなのだーーまるでオペラのような一大叙事詩へと結実させた作品となった。全編を貫く壮大にして生々しいストーリー性、フリージャズ、ジプシー音楽などを取り入れた美しくも野蛮なサウンドメイク、そして、すべての物事を鳥瞰し、優れた語り部として存在しているボーカル。現実を起点にしながら、想像力の力でどこまで飛べるか? がアーティストの資質を図る指標だとしたら、志磨遼平は完全に日本のトップランナーだと思う。映画『アンダーグラウンド』で知られるエミール・クストリッツァ監督が映像化したら、とんでもない傑作が生まれそうだ。

 2017年に丸山康太(元ドレスコーズ/Gt)、大久保仁(Gt)が加入し、5人編成となった踊ってばかりの国。オリジナルメンバーは下津光史(Vo/Gt)ひとりだが、自主レーベル<FIVELATER>からの最初の作品となる6thアルバム『光の中に』からは、このバンドが(ようやく)理想の場所を見つけつつあることが感じられる。トリプルギターを軸にした極上のサイケデリアサウンド、ゆったりと揺れたくなるしなやかさと骨太のグルーヴを兼ね備えたリズムセクション、穏やかな透明感に溢れたメロディ、そして、殺伐としたこの世界のなかで“自分(たち)だけの桃源郷”を指し示すような歌詞。それをもっとも明確に提示しているのが、タイトル曲「光の中に」だ。オーディエンスを包み込み、気分を上げ、日々に向かう力を与えてくれるボーカルも最高。こんなにも踊れて、こんなにも平穏な気分にさせてくれるバンドの音楽は本当に久しぶりだ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。