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駒田一×東山義久×桐山照史 『ミス・サイゴン』日本初演35周年、それぞれの思いを胸に挑むエンジニア

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インタビュー

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左から)桐山照史、駒田一、東山義久 (撮影:杉映貴子)

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この秋、ミュージカル『ミス・サイゴン』の日本初演35周年記念公演がスタートする。1992年から長く愛されてきた本作の魅力について、エンジニア役の3名が和気あいあいトーク。2014年からエンジニアを務める駒田一、2022年から参加した東山義久、そして今回初出演となる桐山照史が今の心境を語る。

長く愛される理由と、それぞれのエンジニア像

――最初に『ミス・サイゴン』の魅力を教えていただけますか。

駒田 史上最悪の戦争と言われたベトナム戦争の混沌とした時代をミュージカル化した作品です。当時を生きていた人がだんだん少なくなっていますが、風化させてはいけない話。それがクロード=ミシェル・シェーンベルクが作った素晴らしい音楽により、マイルドに、情熱的に描かれています。ミュージカルを初めて観る方でも、内容がよくわからなくても、この音楽を聴くだけで気持ちが上がると思います。嘘偽りなく音楽が素晴らしい。製作発表では歌を聴いて泣きそうでした。

東山 僕も4年前を思い出しましたね。『ミス・サイゴン』の魅力といえば音楽はもちろん、登場人物一人ひとりが本当に生きていて、ある意味、敵がいないミュージカルなんです。どんな手段を使ってでも人生を生き抜こうとする人たち。悲劇ではあるけれども、それぞれの人生の生命讃歌、人間讃歌がある上でこの物語を観てほしい。エンジニアやキムが過酷な時代をどう生き抜いたのかを見届けていただきたいです。

桐山 登場人物は皆、胸に大きなものを抱え、それぞれにもがき、互いの矢印がすれ違ってしまう。この矢印がお客様に届くと面白さが伝わるのかなと思っています。戦争を背景としているので重たいところもありますが、愛ゆえのずれ、ボタンのかけ違いも面白いです。

――駒田さんと東山さん、エンジニアを演じる面白さについて教えてください。

駒田 僕は26、27歳の頃に初演を観て、エンジニアにしか興味が湧きませんでした。そもそもシェイクスピアが大好きで、これまでパック、フェスト、道化など、狂言回し的な役を演じてきて、『レ・ミゼラブル』を観た時もテナルディエにしか興味がありませんでした。『ミス・サイゴン』は40歳くらいになったらオーディションを受けようと思い、いつかエンジニアをやりたいと憧れていました。なぜなら、エンジニアはお客様に直接語りかけることができる役だから。第4の壁を取り払って、お客様とやり取りするとゾクゾクするんです。そしてテナルディエは登場人物の中でもよくその辺にいる庶民代表のような立ち位置でして。エンジニアも同じような役割だとオーディションで言われ、面白いなと。一つ自慢するなら、テナルディエとエンジニアの両方を演じた人は僕以外いないんです。やったぁ!(笑)

ーー素晴らしいですね。東山さんは『レ・ミゼラブル』アンジョルラス役をやられて、今はエンジニア。

東山 だいぶ路線変更しました(笑)。

駒田 振り幅が広い方がお芝居は面白いから、すごいことです。

東山 『レ・ミゼラブル』と『ミス・サイゴン』はたまたまご縁があり、オーディションを受けました。稽古場で驚いたのは、キャストの皆さんがいきなり歌って、その歌が完璧! もう大感動しました。ただし自分ひとりで「アメリカン・ドリーム」や「生き延びたけりゃ」を歌うとなると、前日から吐きそうなくらいドキドキで。忘れられないのは、「アメリカン・ドリーム」での景色のすごさ。稽古を積むことで、あの光景を独り占めできる。本当に贅沢です。僕はDIAMOND☆DOGSというグループを率いており、一昨年は「ボレロ」をソロで約15分踊りました。そんなダンスを軸として活動する僕がエンジニアを演じるのも珍しいはず。役者として幅を広げたい、その思いに応えてくれる役がエンジニアだと思っています。

桐山 ――桐山さんはエンジニアを目指していたのですか?

桐山 オーディションを受ける段階では、クリスやジョンという話も出たんです。そもそもエンジニアはもっと歳歴を重ねないとできない役だと思っていたんです。でも、いろんな方とお話ししたらエンジニアの方が合っていると。僕もやらせていただきたいと思い、シフトチェンジしました。確かにエンジニアの人間臭くてずる賢いところは自分と似ている気がします(笑)。僕はお母さんの前ではお母さんの前の顔をしますし、友達の前では友達の前での顔、アイドルをやっている時はアイドルの顔をしています。この『ミス・サイゴン』は戦争時代のお話なので悪い顔がフォーカスされますが、生きるためにみんな無意識でやっていることなんだと思います。エンジニアは多面体である分、ひとつの役なのに5つくらいの役をやっている感じで、一回歌うとどっと疲れます。Aでありつつ、違う方を見たらBになり、こちらを向いたらC、Dと様々な顔になる。それを掴みきれたらめちゃくちゃ楽しいだろうな、と稽古を楽しみにしています。

不器用な男の妄想「アメリカン・ドリーム」に込められたもの

――エンジニアはソロ曲「アメリカン・ドリーム」で、アメリカへの思いを歌います。エンジニアにとってアメリカとはどんな存在だと捉えていますか。

駒田 歌詞のままだと思います。運転手付きのキャデラック、葉巻、博打、グラマーな女、いろんな薬、ハゲも毛がボウボウ……。でもエンジニアはアメリカに行ったことがなくて、雑誌などからどんな国かを知ったんでしょうね。ベトナムで成功してクラブのオーナーになったけれど戦争で傾き、タイへと逃げ延びた。そしてバンコクへ行ったら行ったでみんなにいじめられて。エンジニアは常にアメリカに行く夢を見ながらも抜けているところもあって。不器用なところに人間らしさを感じます。きれいな夢がたくさん出てくるナンバーですが、所詮、彼の妄想なんです。

東山 僕はエンジニアは誰よりも少年だと思います。アメリカと言っても、彼の頭の中にあるアメリカだし。

駒田 きっと雑誌を見ただけだよね。

東山 そうなんですよ。自分は周りにいる汚い奴らとは違うと思いたい。アメリカはその目標であり象徴かもしれません。「アメリカン・ドリーム」はエンジニアの妄想がどんどん膨らむようにメロディーが半音ずつ上がって……。そして最高潮で破裂した時にキャデラックが登場する。

駒田 最後にはお金が降ってきます。つまりエンジニアはお金持ちになるのが夢。クラブではアメリカ人が気前よくお金をくれるから、アメリカに行けば儲かると信じてる。本当はそうじゃないだろうに。

桐山 おっしゃる通り、エンジニアの中でアメリカへの夢が肥大しているんでしょうね。クラブで聞いた話が脚色されて大きくなる。いわば根拠のない自信に目をギラギラさせ、夢に執着しているのがエンジニア。彼の本質としては、何かをずっと考えている、仕事ができない社長みたいだと思っています。その不器用さが不気味に見えたり、可愛く見えたり、いろんな顔になったらいいなと。まだ台本ももらっていない時点での話ですが。

駒田 今の気持ちは大事かもしれない。エンジニアを想像してイメージが膨らむ、それがヒントになるかもしれないね。

「お前はお前のエンジニアを作ればいい」

ーー駒田さんと東山さん、稽古・本番に入っていくにあたり桐山さんに伝えておきたいことがあったら教えてください。

東山 前回公演はまだコロナ明けの頃で回数も多くなかったので、僕は照史くんと同じ立場だと思っています。だから教えられることがないのだけど。一さんはこれまでの歴史を背負ったエンジニアになるだろうし、照史くんは全く新しいエンジニアになるでしょう。僕はその中間として、まだまだ探っていきたいです。僕が勝手に盗んで、ああ、それもありだね!となりそう。

駒田 僕も「お前はお前のエンジニアを作ればいい」と言われてきました。だって、僕と東山くんが同じ役ですよ(笑)。東山くんと桐山くんはちょっと似てるけど。

東山 え?髪の色から違いますよ(笑)。

駒田 結局、自分なんですよ。ただ動線や出入りなどは惜しみなく全部教えるつもりです。だけど板の上のことは教えることができない。僕の芝居を見てもらい、参考になることを拾って自分なりに浄化して出す。それを演出のクリスと共有する稽古になると思います。

桐山 僕は違う畑に入らせていただいている感覚なので心強いです。坂本昌行くんから「お前、ほんとにすごいぞ」と言っていただきました。ベースがありながらも「照史は照史なりに」と自分で作っていけることがすごく楽しみです。歴史背景ももっと勉強しなければ。

駒田 毎回、サイゴンスクールでベトナム戦争の歴史の勉強をするから。ベトナムに行ってきたんでしょ?

桐山 はい、2月に行きました。現地の温度感を肌で感じましたね。またホーチミンのネオン街を見て、もちろん時代は違えど、こういうところで一生懸命に体を張って働いていたんだろうな、と。細かいところをもっと勉強していきたいです。

――桐山さん、駒田さんと東山さんから盗みたいことはありますか?

桐山 ほぼ全部です。こんなに大人数のミュージカルも初めてなので、稽古場の居方やカンパニーの皆さんとのコミュニケーションのとり方、座長としての立ち振る舞い方など、たくさん勉強させてもらいたいです。

取材・文:三浦真紀 撮影:杉映貴子


<公演情報>
ミュージカル『ミス・サイゴン』

オリジナル・プロデューサー:キャメロン・マッキントッシュ
作:アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク

【キャスト】
エンジニア 駒田一/東山義久/桐山照史(交互出演)
キム 屋比久知奈/清水美依紗/ルミーナ(交互出演)
クリス 甲斐翔真/小林唯(交互出演)
ジョン チェ・ウヒョク/金本泰潤
エレン エリアンナ/加藤梨里香
トゥイ 岡シモン/吉田広大
ジジ 則松亜海/藤森蓮華

伊藤広祥 伊藤稚菜 岩﨑巧馬 植木達也 江口颯人 大久保徹哉 小形さくら 柿内アリマ 笠行眞綺 河本佳佑 木村つかさ 工藤彩 小林遼介 小林良輔 近藤真行 今野晶乃 齋藤信吾 坂本皓 佐渡海斗 鈴木大菜 鈴木満梨奈 仙名立宗 高瀬育海 髙田実那 田中奏 田中啓介 茶谷健太 土屋神威 常川藍里 土倉有貴 中嶋尚哉 早川一矢 深堀景介 古川隼大 三浦優水香 光由 森田茉希 安井聡 横田剛基 蘆川晶祥(五十音順)

【東京公演】
2026年10月16日(金)~11月29日(日)
会場:東急シアターオーブ

【大阪公演】
2026年12月5日(土)~17日(木)
会場:梅田芸術劇場 メインホール

【福岡公演】
2026年12月24日(木)~27日(日)
会場:福岡市民ホール 大ホール

【静岡公演】
2027年1月8日(金)~11日(月・祝)
会場:アクトシティ浜松 大ホール

【北海道公演】
2027年1月17日(日)~24日(日)
会場:札幌文化芸術劇場 hitaru

関連リンク

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/miss-saigon/

公式サイト:
https://www.tohostage.com/miss_saigon/

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