「フィルハーモニー・カメラータ・ベルリン」が来日。亀井聖矢を迎え、ベートーヴェンのピアノ協奏曲を披露
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©Masayuki Carvalho
フィルハーモニー・カメラータ・ベルリンは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団にふたつある公認の室内オーケストラのひとつ。この9月の彼らの来日公演の中心に位置づけられるのが、亀井聖矢をソリストに迎えた、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番の弦楽合奏版だ。ベルリン・フィルの最古参メンバーで、今回のツアーのため特別にこの協奏曲を編曲したヴィオラ奏者のヴォルフガング・タリアズに話を伺った。
5月半ばのある日、フィルハーモニー室内楽ホールで行われたフィルハーモニー・カメラータ・ベルリンのリハーサルで、タリアズ編のベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」が初めて鳴り響いた。タリアズはいくらか不安も抱いていたというが、午前のリハーサルが終わった頃には、確かな手応えを掴んだようだ。
「ベートーヴェンの協奏曲は、19世紀のヴィンツェンツ・ラハナーによる弦楽五重奏のための編曲版がありますが、私はそれをベースにしつつ、さらに自分たちの編成に合わせて工夫しました。例えば札幌のKitaraのような素晴らしいホールで演奏するためには、12人の奏者であってもシンフォニックな次元に到達させなければなりません。室内楽的な繊細さと、大編成の交響曲のような響きの厚み。その両立こそ、今回私たちが目指すところです」

この協奏曲のハ短調という調性は、ベートーヴェンの作品群において決定的な意味を持つ。交響曲第5番《運命》、序曲《コリオラン》など、いかにもこの作曲家らしい悲劇的な傑作が生み出された調だからだ。この豪華アンサンブルを前に、若手の亀井聖矢がどんなソロを聴かせるか期待は高まる。
「ハ短調という調性は、ベートーヴェンにとって『情熱』と『英雄的な表現』の象徴です。彼の初期の作品であるピアノ三重奏曲第3番から、それはすでに現れています。当時、ベートーヴェンはハイドンに師事していましたが、ハイドンはこの作品をあまり好まなかったと言われています。あまりにベートーヴェンらしい、激しい情熱があふれた作品だからでしょう。
私たちの挑戦は、このハ短調の情熱と闇から光への道を、小編成の室内オーケストラでいかに表現するかということ。単に音符を正しく弾くだけでは意味がありません。音楽の本質的なメッセージを届けることこそが何より重要です。亀井聖矢さんとは今回が初共演ですが、評判は私たちの耳にも届いていますし、今から楽しみにしています」
フィルハーモニー・カメラータ・ベルリンは、2001年に設立。コンサートマスターを務めるルイス・フィリペ・コエーリョ(第1ヴァイオリン)など、ベルリン・フィルの顔ともいえる名手たちで構成されている。
「日本には非常に特別な編成で参ります。というのも、ベルリン・フィルのさまざまな世代が、このアンサンブルに集まっているからです。ヴァイオリンのアレクサンダー・イヴィッチは私と同世代、コエーリョとトーマス・ティムが中堅の世代、そしてロクサーナ・ヴィスニェフスカのように、入団してまだ数年の若いメンバーもいます。この世代の融合こそが、日本でのコンサートにお越しいただく皆さまに届けたいメッセージのひとつです」
豊かな白髪のタリアズがベルリン・フィルに入団したのは1983年にさかのぼる。2026年現在、彼はベルリン・フィルにおける最古参の団員であり、ヘルベルト・フォン・カラヤン時代を直に知る数少ないメンバーの一人でもある。日本での思い出を尋ねると、タリアズはあふれるように語り出した。

「日本に行くことは、私にとって特別な思い出を呼び起こします。初めての来日は1984年、カラヤン指揮ベルリン・フィルでのツアーでした。
大阪のザ・シンフォニーホールでの出来事です。冒頭はR・シュトラウスの交響詩《ドン・ファン》でした。カラヤンが指揮台に上がり、最初の合図を出したのです。が……誰も弾き始めません。彼はドビュッシーの交響詩《海》だと思い込んでいたのです。コンサートマスターがカラヤンに近寄ってささやくと、彼はようやく気付き、客席に向かって茶目っ気たっぷりに笑みを浮かべました。あの『帝王』と言われたカラヤンがですよ!
にもかかわらず、私がこれまでのオーケストラ人生で経験した中で最大の成功、最も忘れられない瞬間も、まさにその年の日本ツアーで起きたのです。曲はブラームスの交響曲第1番。日本の聴衆の皆さんは真に熱狂的で、あのような成功は後にも先にも記憶にありません。カラヤンの音楽作りには、常に圧倒的な情熱、完璧主義、そして楽譜に対する誠実さがありました。この精神を受け継ぎながら、秋のツアーに向けて準備を進めているところです。思い出の詰まった日本の皆さまの前で演奏できることが待ちきれません」

■チケット情報
東京・宮城・神奈川・福岡・大阪
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2665101
北海道
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2666978
9月15日(火) 東京芸術劇場 コンサートホール【プログラムA】
9月17日(木) 札幌コンサートホールKitara大ホール 【プログラムC】
9月18日(金) 東京エレクトロンホール宮城【プログラムA】
9月20日(日) 横浜みなとみらいホール 大ホール【プログラムA】
9月23日(水・祝) アクロス福岡 福岡シンフォニーホール【プログラムA】
9月24日(木) サントリーホール 大ホール【プログラムB】
9月26日(土) ザ・シンフォニーホール【プログラムA】
取材・文:中村真人
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