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21世紀のフランツ・リストに! デビュー15周年、金子三勇士の挑戦

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©友澤綾乃

ピアニスト・金子三勇士が、2026年、日本デビュー15周年を迎えた。6月10日、節目を祝う記者懇親会が開かれたのは、東京・三田の駐日ハンガリー大使館だった。日本人の父とハンガリー人の母を持ち、幼少期からハンガリーで学び、リスト音楽院(リスト・フェレンツ音楽大学)で研鑽を積んできた彼にとって、自身の歩みとこれからを語るのにふさわしい、象徴的な場所だ。

会見の冒頭に、金子は大きな目標を掲げた。

「21世紀のフランツ・リストになりたい」

2011年、リスト生誕200年の年に日本デビューを果たした金子は、当初「リストを弾くピアニストの、世界で五本指に入りたい」と目標を掲げていたという。その目標は次第に変化していった。
「リストを演奏するだけでは足りない。彼が残した教えを現代社会の中で生かすには、リストになりきるぐらいのことが必要だと思った」
演奏そのものを超え、リストが社会に残した役割まで含めて、すべてを継承するという覚悟だ。

日本デビュー以降の15年だけでも、1,300回を超える演奏活動を重ねてきた。呼ばれればどこへでも行き、意欲的に生演奏を届けてきたという。
しかし現在36歳を迎え、「ここからは、音楽を通して人々や社会に何を伝えられるか。そこに、よりフォーカスしていきたい。ピアニストとして、音楽家として、そして社会人として新たなステップへ向かいたい」と語り、次の15年に向けて活動の「3つの柱」を挙げた。

(1)コンサート・ピアニストとしての活動(演奏活動はもちろん、メディア出演なども含む)
(2)教育的活動(アウトリーチや、ホールに子供たちを招く“インリーチ”、次世代支援プログラムなど)
(3)文化活動(音楽の枠を超えた社会貢献・国際交流・文化外交)

これらはすべて、19世紀にリスト自身が確立したこと、実践していたことだという。たとえば音楽史上初の「リサイタル」という形式の創始、音楽学校の設立、文化人としての広範な交流……。それを現代において継承したいと熱弁した。

©友澤綾乃

そんな金子の現在地を示すのが、10月18日(日)に開催される日本デビュー15周年記念リサイタルだ。会場は、2011年の正式デビュー公演と同じ東京オペラシティ コンサートホール。節目の公演のプログラムは、自身の「音楽的アイデンティティそのもの」と語るリストとベートーヴェンの作品で固めた。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番《月光》、第8番《悲愴》、第23番《熱情》
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
金子が学んだリスト音楽院の教授たちは、師弟関係をたどればリストへと続く直系に連なり、金子自身はその6代目に当たるという。その系譜はさらに、リストの師チェルニーを経てベートーヴェンへと続く。そんなルーツが、彼のアイデンティティを形成しているのだ。
その系譜の中で金子は、大切なのは作曲家が伝えたかった思いを読み解くことであり、そのためには楽譜だけでなく、時代の背景にある歴史や思想、作曲家自身の人生にまで目を向ける必要があることを叩き込まれた。
その探究の成果はときに、現代のコンサート・シーンで聴きなじんだ、いわゆる「伝統的な解釈」につながらない場合もあるという。この日、会場のピアノで実例を示したのは、リサイタルでも演奏する《月光》の第1楽章。速めのテンポ、ダンパーペダル踏みっぱなしで解放される余韻。
「聴き慣れた《月光》と、だいぶ違うと思います。でもこれがベートーヴェン本人が楽譜に書いているものなんです。現代のピアノやホールの環境の中で、それをどれだけ忠実に引き出せるか、工夫しなければなりません」
広く共有された演奏イメージをなぞるのではなく、作曲家自身が楽譜に記した指示からその意図を探り、作品を見つめ直す――。そうした姿勢は、演奏活動そのものにとどまらず、その先に見据える活動にもつながっていくのだろう。
また、国際的な活動もさらに拡げていくと述べ、その第一歩として、2027年1月にプラハ交響楽団の日本ツアーにソリストとして出演することが発表された(ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》)。

教育的活動・文化活動の一環としては、金子がエグゼクティブプロデューサーを務める「日本ハンガリー未来プロジェクト」が本格始動する。
今年8月に長野県千曲市で行われる国内選考会で選ばれた10人の子供たちを11月にハンガリーへ派遣。「子供のためのバルトーク国際ピアノコンクール」への参加に加え、現地の子供たちとの交流や民族舞踊の体験など、多様な教育プログラムに取り組む。このコンクールは異色で、順位をつけない。順位を競い、単に演奏技術の向上を目指すよりも、異文化への理解を深め、国境を越えた友情を育むことを重視している。
子供たちの渡航費・滞在費はすべてプロジェクト側が負担する。子供たちの家庭環境にかかわらずチャンスを提供するという、大人の責任を持った試みだ。日本とハンガリーの文化外交における新たな節目となることを期待したい。

©友澤綾乃

会見の最後に、金子はリストの『コンソレーション(慰め)第3番』を繊細なタッチと豊かな響きで演奏した。超絶技巧のイメージが強いリストだが、これは内省的な一曲。この日語られた未来への決意を、静かに、深く印象づける締めくくりとなった。

©友澤綾乃

日本デビュー15周年記念 金子三勇士 ピアノ・リサイタル
10月18日(日) 16:00
東京オペラシティ コンサートホール
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2667314
11月15日(日) 13:30
鳥栖市民文化会館 大ホール
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2622598

トマーシュ・ネトピル指揮 プラハ交響楽団 ニューイヤー名曲コンサート
2027年1月15日(金) 19:00
サントリーホール 大ホール
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2669243

取材・文:宮本明

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