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ヴィジュアル系次世代を担う奇才? 東のDADAROMAと西のザアザア、共通点と人気の理由

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リアルサウンド

 昨今、次世代を担うバンドが出てこないと言われているV系シーン。そんな中、東西から“奇才”が頭角を現してきた。東京を中心に活動するDADAROMAと、関西を中心に活動するザアザアである。 同じ事務所に属し、ほぼ同期である2組は先日2マンツアーも開催。改めて2バンドの共通点を見つけていくと共に、人気の理由や両バンドの世界観を紐解いていこうと思う。

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 DADAROMAが放つ世界は“天邪鬼”とも言えるもので、相反するはずの2つのものが多々共存している。例えば、激しさと静寂、リアルとファンタジー、シャウトとメロディ、希望と絶望といった対極。耳に焼き付くような叫びで傷つけてきた後に、その傷を舐めるように優しく囁いてくる。人が生きるということは白黒つけられることではないことを、様々な方法で表現しているようにすら感じる。

 対してザアザアの世界はまるで短編集に入り込んだような物語性の強いものだ。曲毎に主人公が変わり、その都度変わる心情をトレースして歌い上げているかのようである。毎度変わる物語の世界を綿密に表現出来るような彩のあるクランチトーンとメロディを主体としながらも、時にラウドにシャウトも交えつつダークな世界まで堕ちていく。どんな物語を繰り広げても根幹にあるのは、憤り、苦しみ、無力感など、負のエネルギーに満ちている主人公をリアルに表現している点だろう。

 この2組には共通項が3つある。まず1つ目にボーカルの独自性。両者共に敢えて少し音程を外したような歌い方を用いることがある。これは自分のスタイルを確立できていないボーカルが真似をするとたちまちチープな演出になる、紙一重の手法である。それをいともたやすくこなすことができる2人は、完全にオリジナルのスタイルを確立していると言えるだろう。

 2つ目は表現の生々しさ。両者共に、他バンドと比べてもボーカルがグロテスクな歌詞や艶めかしい描写をリアルに表すのだ。最近は奇抜な歌詞で他との差別化を図ろうとするバンドが多いのだが、DADAROMA・よしあつとザアザア・一葵が紡ぐ言葉はそれらとは一線を画している。歌詞が直接的なだけでなく、そこにリアルな心情を伴うドラマや、広大な情景が浮かぶのである。聴き手のトラウマを掘り起こしかねない暴力性や、入り込んだら戻れなくなるような危うさを両バンド共に含んでいる。

 3つ目はV系ファンの心を掴んで離さない“V系らしさ”だ。ボーカルの声質が低音豊かで儚さと憂いを含んだV系らしいものであることもそうだが、おそらくV系ファンが求めている、傷ついた自分のそばにいてくれる音や、現実を忘れさせてくれる色気とグロテスクさを含んだ異世界感を彼らは体現している。手が届きそうなほどリアルなのに、どこかこの世のものではないような彼らの存在感は他バンドと大きく差をつけるフックになっている。

 これら3つは過去に大きなステージに上り詰めていったDir en grey、MUCCといった先人達と共通しており、近年話題に上がり一歩上の段階へ上がっていったアルルカン、DEZERTなどとも共通しているように思う。“売れる要素”ともいえるこれらを兼ね備えた2つのバンドが時を同じくして東西で現れ、切磋琢磨している。どちらのバンドも作品を出す度に進化しており、特にフロントマン2人の歌の威力は跳ね上がり続けている。

 どちらもフロントマンに奇才を擁したバンドの東西対決。いずれ後を追うバンド達や先人達へも飛び火し、シーン全体を巻き込んだ群雄割拠の大乱戦へと発展していくことだろう。(タンタンメン)