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新国立劇場こつこつプロジェクト発! 鈴木アツト×國崎史人×仁木祥太郎が語る『チョコレート・アンダーグラウンド』

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左から)仁木祥太郎、鈴木アツト、國崎史人 撮影:松村蘭(らんねえ)

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新国立劇場が展開する、短編・中編作品を中心とした20作品を上演する“フェスティバル”「20の物語-週末を、劇場で-」で、イギリスの作家アレックス・シアラーの児童小説を原作とした『チョコレート・アンダーグラウンド』が上演される。脚色・演出を担うのは、1年間をかけて試演を重ね、作品を育てていく新国立劇場の「こつこつプロジェクト」第三期(2024年夏~2025年夏)で、1st、2nd、3rdと3期間にわたり本作に取り組んだ鈴木アツト。スマッジャー役の國崎史人、ハントリー役の仁木祥太郎とともに、作品への取り組みを語った。

選挙で勝利した健康健全党が発令したチョコレート禁止令のもと、スマッジャーとハントリーのふたりの少年がチョコの密造販売を思いつき、圧政に対抗していく──。2015年に文化庁の新進芸術家海外研修制度研修員としてロンドンに留学、児童向けの作品の演出を学び、数々の児童青少年向け作品を手掛けてきた鈴木は、この物語をどのように表現するのか──。

──鈴木さんは、この物語のどんなところに魅力を感じていらっしゃったのですか。

鈴木 イギリスのディストピア小説の系譜にある作品だなと思っていました。ジョージ・オーウェルの『1984』に似ているんです。チョコレートが禁止されるという部分は子ども向けですが、監視社会、管理社会をめぐるメッセージが込められているところはむしろ大人向け。小学校高学年くらいをメインターゲットに、その親世代も楽しめる作品だと思い、こつこつプロジェクトで取り組みたいと提案しました。

鈴木アツト 撮影:松村蘭(らんねえ)

──アニメやミュージカルなどでも取り上げられているお話ですが、演劇だからこそ表現できる面白さ、楽しさはどんなところにあると思われますか。

鈴木 原作は500ページほどの分厚い本で登場人物も多いのですが、こつこつプロジェクトでは大人数のものはできなかったので、ひとりの俳優が複数の人物を演じます。それが、演劇ならではの面白さに繋がると思います。取り締まられていた人が、ある瞬間に取り締まる方にまわったりしますが、僕らの社会でも、支配する方だけが悪いわけではないし、統治権力の側の官僚も市民、僕らの中にも役人になる人はいる。キャラクターが合わせ鏡のように反転する、とても演劇的な構造になると思います。

仁木 実は、こつこつプロジェクトで台本をいただいたとき、「これ、知ってる!」とドキドキしました。中学生か高校生の頃、漫画でこの作品を読んでいるんです。今回の上演台本では登場人物が割愛されたり、大人がやっていたことを子どもが担っていたりと、いろいろ変わっていたのが印象的でした。

鈴木 原作では大人が担う演説シーンを、主人公である子どものふたりにやってもらうようにしています。大人が演説したら、問題は大人が解決してくれるんだと感じられてしまうのでは、と思ったんです。

國崎 僕は3rdからの参加でしたから、2ndの試演会を観たのが最初でした。感動しました。その前後、僕はナチスにまつわる作品に出演していたのですが、この作品も同じように、普遍的なテーマを持つと感じたんです。さらに台本を細かく見ていくと、視覚的に楽しめる仕掛けがいっぱいあるんですよね。

國崎史人 撮影:松村蘭(らんねえ)
仁木祥太郎 撮影:松村蘭(らんねえ)

──俳優が観客に話しかけたり、客席まで降りてお芝居をしたりと、楽しい演出を随所に取り入れているそうですね。

鈴木 選挙がモチーフなので、観客の皆さんにも一緒に考えてもらえるような構成にしたかったんです。留学時の経験を意識した部分もあります。イギリスでは、クリスマスにパントマイムと呼ばれるファミリー劇が上演されます。題材は『シンデレラ』などのお伽噺。独特の形式があって、主要な人物の性別を入れ替えたり、コール・アンド・レスポンスをしたりもする。子どもにとっては普通でも、大人には際どいジョークに聞こえ、大人だけが笑う箇所があったりもするんですよ。

仁木 試演会に関係者のお子さんたちが10人くらい観に来てくれたことがあり、そこでの経験が手がかりになりました。僕は、芸術鑑賞事業で福岡の学校を巡演した経験があるのですが、子どもたちの反応ってとても面白い。同じ作品でも、小学校、中学校、高校とでは反応が違って、どうしたらその反応になるのか、どんな台詞が受けるのかと考えながら演じていました。でも、予想外の言葉がすごく受けたりもするんですよね。こつこつの試演会でも、「どこが刺さるのかな」と考えながらやっていました。

國崎 僕が観た2ndの試演会にも、女の子がひとり来ていましたが、すごく楽しそうでした。舞台上の俳優と客席のお客さんの間にはどうしても隔たりがあるものだけれど、テレビの向こう側の人が演説するシーンなどでは、バーンとその隔たりが取っ払われ、自分がこの物語の当事者になった感覚に。予測していないところから俳優が出てきたり、突然喋りかけられたりして、そこの隔たりをぶっ壊してくれる。まるでおもちゃ箱みたいな楽しさです。

「子どもってこういうところで笑うんだ」と実感して。

──約1年半、こつこつしたからこそ実現できたこと、見えてきたことはありますか。

鈴木 3分間しか出てこない人物についてもしっかり考察することができ、とてもいい時間でしたね。少しずつ変えていった演出もあります。古本屋で本棚が迫ってくる演出とか──あれは『ハリー・ポッター』を観たあとだったからかもしれないけれど(笑)、試演会で一旦完成させ、皆さんにお見せしてフィードバックをもらうと、いろんなアイデアが膨らみました。

仁木 僕は、言葉の持つ意味が深くなってくるなと感じました。よく考えたのは、皆にとってのチョコレートってなんなんだろう──、自由とか、好きなものを好きと言えること、ちょっとした背徳感を味わうことなのかな、と。また、1st、2nd、3rdと重ねるうちに世界情勢が変わってきて、「もしかしたら全然遠い話ではないかも」と思うように。3rdに突入したときは「皆、蓄積しているね」というコメントをいただきましたが、俳優の身体やマインドが、本と、役と、世間で起きていることを通して変わってきたと実感しました。

國崎 3rdから入ったときはなかなかのプレッシャーでしたが、このプロジェクトは必ずしも上演を目的としないと聞いていたので、これまで積み上げてこられたものに乗って、自由に、ある種ちょっと無責任に、自分の感覚を楽しむことができました。普通は本番が近づくと、初日に向けてどう整えるかということに集中してしまうけれど、「うまくいかなくてもいい」と。温かいな、と思いました。

「こつこつプロジェクト」3rdでの試演会の様子(提供:新国立劇場)
「こつこつプロジェクト」3rdでの試演会の様子(提供:新国立劇場)

──國崎さん、仁木さんはそれぞれの役柄をどのように捉えていらっしゃいますか。ご自身との共通点は?

國崎 スマッジャーはすごく真っ直ぐな男の子ですが、自分自身はもっと暗いです(笑)。でも、次第にスマッジャーと自分との共通点が見つかってきたんですね。たとえば、世の中に対して、「おかしいだろう、こんなの!」という反骨精神。僕の場合はじゅくじゅくとしていますが(笑)、そういったところからどんどん近づき、交わるようになっていきました。

仁木 ハントリーはスマッジャーより慎重で、まずはスマッジャーにお伺いを立て、「やろうよ」と言われたらやる。僕自身は、どちらかというと「やっちまえ!」という感じですが(笑)。

「こつこつプロジェクト」3rdでの試演会の様子(提供:新国立劇場)

──劇中では歌う場面もあるそうですね。

鈴木 歌います。ミュージカルではないけれど、音楽劇のようなところもあります。子どもにとっては少し難しいところがあるかもしれませんが、帰りの電車の中や家で、「あそこはどういう意味?」と、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんに聞く。そんな演劇体験をしてもらいたいなと思って作っています。お子さんがいない方も、「子どもってこういうところで笑うんだ」と感じてもらえる舞台。それを体験しに来ていただくことが、僕の“野望”です。

仁木 シンプルに「チョコレートがなくなったら自分はどうするんだろう」と想像していただけたらな、と思います。僕自身? 僕は、暴動を起こすと思いますが(笑)、子どもには、スマッジャーのように抜け道を探す賢さがあるもの。一度失敗しても、こういう立ち上がり方があるということを描いている作品でもあります。

國崎 試演会を観終わった後、ハッとしました。これって僕たちの世界と地続きなんじゃないかなと。大人にもちゃんと持ち帰っていただけるものがある作品にしたいですし、役者が一生懸命汗かいて走り回っているのを観ることも、演劇ならではの感動ですよね。

鈴木 最後にもうひとつ。僕は、健全健康党にも、ちょっと共感してもらいたいなと思っています。僕の中にも健全健康党的な面があり、健康は大事にしたい。でも、それが行き過ぎて、たとえばタバコを好きな人の自由までも規制したり弾圧したりするのは、少し違うと思います。ホワイト化が進み、“べき”と強く言える人の声が大きくなりがちな中で、この作品が、ちょっと立ち止まって、「あなたの“べき”が誰かの自由を奪ったり、抑圧したりしていないか」と考えるきっかけになれば、とも思っています。

<公演情報>
「20の物語-週末を、劇場で-」
『チョコレート・アンダーグラウンド』

原作:アレックス・シアラー
翻訳:金原瑞人(『チョコレート・アンダーグラウンド』求龍堂・刊)
脚色・演出:鈴木アツト

出演:國崎史人、仁木祥太郎、柳内佑介、斉藤悠、篠原初実、佐乃美千子

2026年7月25日(土) 18:00/7月26日(日) 13:00/8月1日(土) 13:00/8月2日(日) 13:00
会場:東京・新国立劇場 小劇場

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2668243

公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/play/short-stories/

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