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もう一度、劇団と向き合う。コンプソンズ『善人はなかなかいないっぽい』インタビュー金子鈴幸×大宮二郎×細井じゅん

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コンプソンズ#14『善人はなかなかいないっぽい』インタビュー 左より)細井じゅん、大宮二郎、金子鈴幸 (撮影:藤田亜弓)

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コンプソンズ#14『善人はなかなかいないっぽい』が10月15日(木)〜20日(火)、ザ・スズナリで上演される。コンプソンズの旗揚げ10周年を記念した今作で、脚本・演出の金子鈴幸は改めて劇団と向き合うという。その真意について、金子、劇団員の大宮二郎、細井じゅんに話を聞いた。

「戦争反対」と言うか、言わないか。そう言った人をどう受け止めるか

──新作公演『善人はなかなかいないっぽい』が10月に上演されます。ちょっと先ですが。

大宮 でも、意外とね?

金子 方向性は決まっていて。

──ぜひ教えてください。

金子 コンプソンズは演劇ユニットとして始まりましたけど、固定メンバーもいるから劇団ぽいな、と自分たちでも思っていたし、外側から「これほぼ劇団だよね」と言われることも多かったんです。でも、メンバーと必要以上に近づかないところは劇団らしくなくて……。この10年間、劇団というものについてかなり考えてきたんですよ。最近の僕らは、半分プロデュースユニットのような感じで、華のある客演の方をお呼びして、周りを劇団員で固めるような形でやってきました。でも今回は、客演はいるけれども、劇団員メインでやってみようと。で、この二人が主役というところからスタートしています。

──10周年を迎えるにあたり、コンプソンズという団体のあり方から考えてみたというわけですね。

金子 そういうことです。

大宮 劇団員に対して今言ったような提案が金子からあって、今はそれについての話し合いを密にしている状況です。

細井 そもそも劇団員とは? というところから。僕らずっと試行錯誤してきて、自分もわからない状態で10年経ってしまって。ここ最近は客演の方が主演をやることが多かったので、原点回帰でもあり、力をつけて以前のスタイルに戻る、集大成になる公演かなと思っています。

──コンプソンズが活動してきたこの10年間は、まさに劇団のあり方をいろんな人が模索していた時期でもあるように思います。

金子 僕らが結成した頃は青年団が強くて、無隣館(青年団による演劇学校)もできたばかりで。

細井 僕も無隣館を受けて、落ちました。

金子 まさに無隣館に落ちる側からのスタート。青年団リンクも強くて、友達もたくさんいるんですが、彼らが見に来てくれたときの感想がどこかしら上から目線というか……。

大宮 「頑張ってますね」みたいな。

細井 「反抗してますね」って。

金子 こっちが勝手に感じてるだけなんですけど。「こういうの懐かしいわ」「若いよね」みたいなことを言われがちだった。でも10年の間に劇団的なものも変わってきましたよね。いちばん象徴的な存在は南極だと思いますけど、あとダウ90000。

大宮 これまでとは別の何か。

金子 そう、また別のあり方があるんだと気づかされて、我々も頑張らないとなという気持ちからの、劇団公演ということです。去年プロデュース公演をやってみて、ざっくりいうと、劇団の泥臭さ、重苦しさからいかに逃げるかを試行錯誤した結果、戻ってきた感じです。

──これまで実際の事件を題材に取ってこられたと思いますが、今回モチーフは決まっていますか?

金子 やっぱり「戦争反対」ですね。それを言う/言わないことについて。SNSで発言するからどうとか、言わないからどうとか、そういうところから発想しています。祖父が反戦運動家としてわりと著名で、ベトナム戦争の時に「アメリカはベトナムから出ていけ」というゼッケンをつけて8年くらい通勤していたんですよ。ああいう人が今いたらどうだろうと思うんです。祖父が書いた本を読むと、今SNSで行われているのと同じようなことが起きているんです。祖父が街で反戦活動をする。すると「特需で儲かってる」と反論されたり、カンパしてくれる人がいたり、いろんな意見があると書かれていて。じゃあ今、駅前で反戦を主張する若者がいたら、人はどう彼を受け止めるだろうというところから着想しています。

──岸田國士戯曲賞候補になった『愛について語るときは静かにしてくれ』では、日本の若者が遠隔的に戦争に関わる姿が描かれました。今、現実は上演時より作品の世界に近づいているように思います。大宮さん、細井さんは演じる側として、金子さんの作品を演じることについてどう捉えていますか?

大宮 コンプソンズは、旗揚げからずっと同時代性がテーマになっている芝居が多いなと思います。金子が考えていることを反映したその作品に携わるにあたり、自分なりに調べたり起きた出来事に対してどう捉えるかを考える作業が、他の作品に客演するときと比べてもすごく重要な作業だなと思っています。「どうしてこうなっているんだろう」という展開を、自分の中で落とし込む。自分なりに納得して出すというのが、コンプソンズにおける俳優の仕事としてかなり大事だなと。

細井 金子さんが考えることって周りの二、三歩前を行っているんですよ。『ビッグ虚無』で描いた世界も、行き着くのがみんなより早いというか、先を行きすぎている感じさえある。それはすごく信頼できるし、この人の書くこと、考えることにはついていきたいなと思えるから、演劇で、最先端のところでできるのは役者としてすごく嬉しいことだなと思います。主人公を演じた『何を見ても何かを思い出すと思う』の時にすごく苦労したので、久しぶりの主演は緊張していますけど、自分の活動も広がったから、そこで僕を知ってくれた人をコンプソンズに呼べたらいいなと思います。新しいことをやり続けているとは思うので。

金子 ただ、二歩三歩先を行く、その感覚が自分の中で衰えてきた感じがあって、それをどうしようかとは思っています。思考の先取りゲームが激しくなっていくことに懐疑的になっていて。それに、自分が思ってることはみんなも思っていそうだなと考えてしまう。AIという言葉を出すのも恥ずかしいですけど、みんなAI化してしまっている気がして。だから、地に足をつけたこと、自分の周りにあることで普遍的なものを作れないか、と今は思っています。カルチャーネタに興味がなくなってきているのもどうしようかな、と。僕は特に作風的にも、オラついているというか、世の中に言いたいことがあるように見られがちですけど……。

大宮 「いったれ!」みたいな?

細井 社会に物申したい、みたいな。

金子 でもそうでもなくて。今まではカルチャーネタで場つなぎしてきましたから。

大宮 それで10年やってきたからね。でも、そのカルチャーネタに興味が薄れてきたっていう個人的な考えを反映することもできるから。

ヨーロッパ企画に影響を受けて、「ここだからこそできる」ことを

──今話してくださった「劇団コンプソンズとして公演をやる」というのは、10年かけてたどり着いた結論なのか、それともあくまでも今回のモードなのか、どちらですか?

金子 今回一度やってみて、それで見極めようと思います。で、「やっぱり劇団じゃないわ」となったらやめた方がいい。

大宮 新たな一歩目で踏み外したら、そりゃ二歩目を続けない方がいいですから。

細井 僕らもある程度歳をとって、冷静になってきている部分もあるからね。

──そもそも、コンプソンズを10年間続けようという意識は結成当初からありましたか?

金子 まったくないですね。早くやめたい、卒業したいと思っていたので。

大宮 演劇をね。

細井 「結果残して消える」と言ってましたね。

金子 だからこそ、劇団員個人の活動もスタートしていて。

──いつまでコンプソンズがあるか、わからないから。

金子 そうです。若かったのもあるのか、ベタベタしたくない、ビジネスライクなのがかっこいいと思っていたんです。でも考えを変えたのは、僕がヨーロッパ企画に関わったのがすごく大きくて。

──どんなところに影響を受けたんですか?

金子 主宰の上田誠さんの言葉を借りると、「面白いものやお客さんをハッとさせるようなものはAIにとって代わられるかもしれない。そこで残るのは結局、劇団としてやってきた、その時間がもつ文脈だけ」と。僕はこれまでコンプソンズらしさから逃げて、個人的であろうとしてきた。でも細井や大宮、鈴木(啓佑)、星野(花菜里)さんと向き合ってきた10年という時間の文脈を見つめ直してみようと。彼らと作品でだけ繋がっているのではなくて、人として繋がろうと思っているんです。それが、ヨーロッパ企画の影響だと思っています。

──ビジネスライクに接してきた中でも、やっぱり10年の間に積み重なってきたものが、否応なしにある。

金子 ですね。ビジネスライクであったのは、劇団感が強固になることでメンバーの可能性を潰してしまうことになるのではないか? という気持ちもあったんです。もっと面白いことができるはずなのに、コンプソンズにいることでそれができなくなる可能性があるのではということも考えていて。でも、そうじゃなくて「ここだからこそできる」ところに今は目を向けたい。

──改めて劇団と向き合う作品の、客演の方々も面白い取り合わせですね。

細井 意外ですよね。

金子 僕も意外です。今までにないパターンです。

大宮 「コンプソンズにおいて意外なキャスティング」じゃなくて、すべての演劇の中で意外。マンガだったら全員、掲載雑誌が違う。

金子 平田敦子さんは、東京にこにこちゃんの萩田頌豊与さんの誕生日会にいらして、最初は萩田さんに「出してよ」と迫っていて。しばらくしたら「じゃああんたでいいわ」って。コンプソンズは観たことないらしいんですけど、これも何かの縁かと。

大宮 なんでも縁として受け止める(笑)。

細井 でもありがたいですよね。

──金子さんが昨年プロデュース公演(『きみは一生だれかのバーター』)を経験されたことも、コンプソンズに影響がありましたか?

金子 めちゃくちゃありました。端的に言うと、「プロデュース公演ってやりやすい!」と思ってしまって、やばいなと。自分の性格にも合っているわけですよ。ヘタすると、劇団公演が「やりにくいプロデュース公演」のような存在になってしまう。だったら、やりにくさをもっと活かしたような、「この文脈しかない」というところでやっていく作品を作った方がいいと思うようになりました。

──やりにくさを排除するわけではなく。

金子 そうやって同じようにしようとしても、プロデュース公演には敵わないと思ってしまう。だから、もうやりにくく、地を這うようにしてやろうと意識したことが、プロデュース公演を経験した影響ですね。あと、「俺は一人でも行けるぜ」という気持ちでしたけど、実際にやってみたら、そうでもないなと思い知ったところもあって。けっこうコンプソンズに依存している。

細井 こんなこと言っちゃなんですけど、劇団員的には「面白くあってくれるな!」という気持ちも少しだけありながら観たんですよ。そうしたらめっちゃ面白くて、「自分も頑張らないと」と奮い立ちました。

金子 細井は見終えたあとの感想が「もう(コンプソンズは)終わったんすね、俺らいらないんすね」みたいな感じでした(笑)。

細井 悔しさがあって。

大宮 (俺たちを置いて)東野(良平)さんだけを連れていくんですよ。

──大宮さんは自身が作・演出・出演を務める「大宮企画」で東野さんを呼んでいますもんね。

大宮 しかも、じゅんの映画(『結局珈琲』)にも出てるから。

細井 東野さんの奪い合い。

──大宮さんは、細井さんのような嫉妬は?

大宮 よくないかもしれないけど、白旗をあげてしまっている部分があって。金子の作品が好きだからこそコンプソンズに入っているし、ずっとやってきたし。だから割と冷静に観られたところはあって。「やっぱりこうやって巣立っていくのか、こいつは」という気持ちにはなりました。でも、劇団公演じゃできないこともやっていたし、単純に金子の昨年の舞台を外から見るのが12年ぶりだったんで、「やっぱり面白いんだ」という感じで、新鮮に見れたのが刺激になってよかったですね。

「演劇が流行っていない」時代にコンプソンズが向かう先

──最初に話が出たダウ90000の蓮見翔さんによる「演劇は流行っていない」という言葉が演劇界で大きな衝撃を与えていますが。

全員 出た!

──お三方はどう受け止めましたか?

大宮 僕は、演劇とお笑いの分断を感じましたね。蓮見くんはかなり前から「お笑いは流行っていない」という話をしていて、その文脈は「演劇が流行っていないからお笑いに来たのに、お笑いも流行ってなかった」というものじゃないですか。だからずっと言っていたことなのに、岸田國士戯曲賞受賞に関する対談でそのワードが改めて出てきて、演劇の人たちが騒いでいるのは、お笑いの人が演劇を見ていないのは知っていたけど、演劇の人もお笑いを見ていないんだなとは少し思いました。

──大宮さんは、お笑いも演劇も両方観ているし、やってもいますもんね。金子さんはどう捉えましたか?

金子 演劇界において、劇団単位で売れたのがヨーロッパ企画で止まっていて、そういうことはもう起こり得ないという前提の中で僕らは旗揚げしたんですよ。その後、助成金頼みの演劇が増えて、これからどうなる? というときに南極が出てきて、ダウ90000が出てきた。それは必然だと思います。その流れで出てきた発言だと思うんですけど、あの発言に対してSNSで色んな意見を言っている人たちが根っこで通じている点で言うと、みんな貧乏が染みつきすぎてしまって、「やめてくれ!」となっているんじゃないですかね。僕も疼くものはあります、もうちょっと頑張ればよかったのかな、みたいな。

大宮 ダウは前身の団体から顔見知りだったり、南極の端(栞里)さんがうちに出てくれたり、そういう関わりがあったから、2組がどんどん進んでいく姿には思うところはありますね。

金子 急に自分がおじさんになったような

細井 僕らもう若手じゃないんだ、って。

金子 おじさんとして頑張るしかない。少し上の人が聞いたら「何言ってんの」という感じでしょうけど。

大宮 10年なんて、お笑いだったらまだ余裕でM-1グランプリに出られるんだから。

──話が逸れましたが、ザ・スズナリでの公演は今回が初めてですね。

大宮 旗揚げの段階で話していたんですよ。

金子 「スズナリに向けて頑張りたい」と言っていたので、やっとです。僕ら、注目の劇団と言われることもありましたけど、三鷹(芸術文化センター)からも呼ばれず、こまばアゴラ劇場にも、シアタートラムのネクストジェネレーションにも落ちて……。

細井 片っ端から落ちてる。なんでだろう?

金子 とっつきづらいのかな?

大宮 可愛げがないんじゃない(笑)?

──ともあれ、今回の公演はコンプソンズにとってターニングポイントとなる作品になりそうですね。

金子 毎回ターニングポイントと言っている気もしますが。

細井 でもさすがに今回は。

大宮 気合いは入ってます。

取材・文:青島せとか 撮影:藤田亜弓

<公演情報>
コンプソンズ10周年記念作品
コンプソンズ#14 『善人はなかなかいないっぽい』

脚本・演出:金子鈴幸

出演:
川島潤哉
夏アンナ(ジャパニーズ生活)
hocoten(劇団「地蔵中毒」)
平田敦子
村田寛奈

大宮二郎
金子鈴幸
細井じゅん
星野花菜里

2026年10月15日(木)〜20日(火)
会場:ザ・スズナリ
★配信あり:2026年11月7日(土) 14:00〜2027年1月11日(月) 23:59

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/compsons/

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