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『わたし、定時で帰ります。』“新人時代”だからこそできることがある 双方向的に学びを得る姿勢

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リアルサウンド

 「新人類とかモンスターとか、そういうレッテルを貼らないで、その人自身を見ていくことじゃないかな」

 現代の“働き方“と真正面から向き合ったドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)の第3話。描かれたのは、変化を受け入れるときの摩擦だ。

参考:泉澤祐希、『わたし、定時で帰ります。』でも「ベテラン」感を発揮 現代の若者役で新たな扉を開く

 主人公の東山結衣(吉高由里子)は、今春入社したばかりの新人・来栖泰斗(泉澤祐希)の教育係になっていた。仕事の筋は悪くないのだが、二言目には「辞めようかな」とつぶやく来栖を、“イマドキの若者“と静観していたところに事件が起こる。大事なクライアントのCM撮影現場で、来栖が撮った動画がSNSで拡散されてしまったのだ。しかも、その内容は商品のキャラクターが味を酷評するというスキャンダラスな映像。

 結衣は、恋人の諏訪巧(中丸雄一)の両親への挨拶をドタキャンして、元婚約者で今は上司の種田晃太郎(向井理)、先輩社員の賤ヶ岳八重(内田有紀)と共に、クライアントへ謝罪に向かう。来栖の行動を危なっかしいと思っていた矢先の出来事に、頭を抱える結衣。だが、当の本人は電話にも出なかったことを悪びれる様子もなく「休みだったから」と言ってのける。その態度を注意されると、すぐに「辞めます」と結衣に辞表を突き出すのだった。

 もちろん、新人が辞めるときに出すのは辞表ではない。そう言われると、今度は異動願を書いてくる来栖。オフィスから逃げて現実逃避をしたかと思えば、一文無しで見知らぬ街で発見される始末。そんな来栖を「これが新人類?」と呆れていた結衣だったが、1周回って笑えてくるのだった。

 かつて、結衣自身も“イマドキの若者“だった。しかも、「定時帰り」のモットーを崩さない姿勢は、よっぽど“新人類“だったと、かつての教育係だった賤ヶ岳から指摘される。そして、先述した「レッテルを貼らないこと」というアドバイスにつながっていく。

 結衣も、最初から効率よく仕事をこなせているわけではなく、社会人として約10年コツコツと続けてきた結果なのだ。いつの時代も、どんな人でも、失敗続きの新人時代がある。だが、できるようになってから、できない時期を思い出すのは、とても難しい。

 そんな中、晃太郎に連れ出されて、初めてフットサルを経験した結衣。ボールの蹴り方も、相手との距離感もわからず、空振って、ぶつかって、転んで、汗まみれ。疲労具合に対して、全く戦力にもなれていない不甲斐なさ。仲間に“迷惑しかかけていない“という、独特の居心地の悪さ。そんな「やったことないのだから、できなくて当たり前」を、人は新しいチャレンジをしていないと忘れてしまうものなのだと、ハッとさせられる。

 新しい環境に飛び込んだ本人も、そして新しい仲間を迎え入れる側も、どちらにとっても“変化“なのだ。飛び込む側だけに、なってほしい像を押し付けて、迎え入れる側が待っているだけでは、チームは育たない。その人が入ることで、どう良くなるのか、というイメージを共有し、そこに到達するまでに出てくる課題に協力体制を組んでフォローしていく。それがチームの強みだ。

 そして、フォローしている中で、いつもとは違う視点で考えるきっかけになったり、新しい刺激をもらったりと、新人から学ぶことも多い。そうして、双方向的に学びを得ていく姿勢こそが、変化を進化にしていくのだ。

 もちろん、変化はやはりしんどい。どちらの立場であっても、うまく立ち回れない自分に苛立ち、落ち込む。それでも、変化を受け入れることでしか、人は人とつながることはできない。「辞めたい」とボヤくのか、「なってない」と嘆くのか、それとも「だから飽きない」と笑えるのか。そのスタンスが、あなたの働き方を決めるかも知れない。

(文=佐藤結衣)