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B’z、平成の音楽シーン駆け抜け勢いそのまま令和へ 楽曲とパフォーマンスから牽引力の秘密を探る

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 令和という新元号を迎えた今月29日、B’zが21枚目のアルバム『NEW LOVE』をリリースする。昭和63年(1988年)にシングル「だからその手を離して」とアルバム『B’z』でデビューして以降、平成の音楽シーンに欠かせない存在としてヒット記録を量産し、オリコンが先頃発表した「平成30年ランキング アーティスト別セールス」では、累積売上8262.4万枚(シングル3596.9万枚/アルバム4665.5万枚)で1位に輝いた。バブル崩壊、リーマンショック、アナログからデジタルへ、激動の平成を駆け抜け、令和になってもその勢いが衰えないだろうB’zの魅力を改めて紐解こうと思う。

B’z楽曲の醍醐味は、30年以上変わらないキャッチーさ

 B’zを語る上で挙げられるのは、言葉のキャッチーさだ。例えば、初のオリコン1位を記録した「太陽のKomachi Angel」。「小町」をローマ字表記にした和洋折衷の造語タイトルは目を引き、ラテンを取り入れたサウンド乗せて、サビでたびたび出てくるハイトーンの〈Angel〉というフレーズは、耳に残って今も離れない。また1993年の「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」は、長いタイトルがインパクト大で、曲名を一気に歌い上げるサビメロも人気を集めてダブルミリオンのヒットを記録した。同様に1999年の「ギリギリchop」なども実にB’zらしい。これをB’zがやるからこそ成立するというところを見極めた、ハズしのテクニックは、稲葉浩志の言葉のセンスの妙だろう。

 90年代は、折しもタイアップソング全盛の時代だった。テレビドラマの主題歌やCMソングから、多くのヒットソングが生まれた。テレビから流れる短時間でインパクトを残すため、パッと聴いて誰もが口ずさんでしまうキャッチーなフレーズが求められ、実際にB’zも「太陽のKomachi Angel」が「カメリアダイヤモンド」CMソングだった他、多くのタイアップを担当した経緯がある。

 2000年代に入ると、R&B/ヒップホップやメロコアなど新たな音楽ジャンルの流行もあり、世の中は一語一語のインパクトよりも、等身大で身近な言葉の連なりを求めるようになった。それでもB’zは、「ultra soul」「BANZAI」「愛のバクダン」「イチブトゼンブ」など、徹底して言葉のインパクトにこだわり続けてB’z流を貫いてきた。近年の音楽シーンでは、再び90年代の歌詞やメロディのキャッチーさを再認識する傾向にある。それは、B’zがブレずにこだわり続けてきたことも要因にあるかもしれない。

 サウンド面に目を向けると、ハードロックを基盤にしながら多彩な音楽ジャンルを取り入れたサウンドメイクも、ファンを魅了して止まない要素の1つだ。現在のハードロック主体に舵を切るきっかけになった「ZERO」は、ハードロックとファンクを融合したヘヴィなサウンドが耳を引いた。Dメロには、B’zには珍しいラップも登場する。2枚組のアルバム『The 7th Blues』(1994年)では、多彩なゲストミュージシャンを迎えて、ブルース、ジャズ、ソウル、サイケデリックなど実に多くのジャンルを取り入れて、実験的作品としてファンの間では伝説だ。また、アルバム『MONSTER』(2006年)に収録の「恋のサマーセッション」では、大胆にレゲエを取り入れている。

 ハードロックと言うと熱烈なファンがいるものの、ダンス&ボーカルやアイドルが主流の日本のヒットチャートではアウェイだ。そんなハードロックを主体としながらも、これだけ広く受け入れられているのは、他ジャンルの取り入れ方とキャッチーさによるだろう。どんなサウンドであっても、歌謡曲的なメロディは口ずさみやすく、ギターのフレーズも日本的な味わいを感じさせる。例えば「ultra soul」もサウンドだけ聴けば実にハードだが、聴けば迷わず一緒に叫んでしまう。人を引き込むキャッチーさこそ、B’z楽曲の醍醐味だ。

世界屈指のハイレベルなライブステージ

 B’zサウンドの要となる松本孝弘のギタープレイも、ファンを魅了する大きな要素の1つだ。Led Zeppelin、Aerosmith、Bon Jovi、Mötley Crüe、Guns N’ Rosesなど、松本のプレイから感じられるルーツは枚挙にいとまが無いほどで、それこそが“平成のギターヒーロー”として多くのギターキッズを虜にしてきた所以だ。『ミュージックステーション』のテーマ曲「1090 〜Thousand Dreams -」を作曲したことはあまりに有名で、7月に横浜アリーナで開催されるスケートショー『氷艶hyoen2019-月光かりの如く-』のテーマソングも手がけている。また海外ミュージシャンとの交流も幅広く、2004年には、エリック・マーティン(Mr. Big)、ジャック・ブレイズ(Night Ranger)らと共にソロプロジェクト“TMG”で活動。ソロアルバム『TAKE YOUR PICK』(2011年)では、ジャズ/フュージョンの巨人の1人であるラリー・カールトンと共演し、同作は第53回グラミー賞で「最優秀インストゥルメンタル・ポップ・アルバム」を受賞した。世界のミュージシャンも、松本のプレイには一目置いている。

 松本のギターソロも堪能できるのがライブで、ド派手の一言に尽きる。ライブ名にはデビュー当時から「LIVE GYM」と名付けられている通り、ステージの2人も観客と共にとにかく動き回って汗だくになる。B’zのライブでエポックメイキングなのは、デビュー5周年の1993年に静岡県浜松市にある「渚園」で開催し、2日間で10万人を動員した初の野外ライブ『B’z LIVE-GYM Pleasure’93 “JAP THE RIPPER”』だろう。この会場でライブを行ったのは、当時は浜田省吾に続いてB’zが2組目で、以降もサザンオールスターズ、TUBE、ONE OK ROCKだけ。以降、アリーナ、スタジアム、ドームと着実にライブの規模を拡大していった。

 同時にステージ演出もスケールアップし続けた。火を噴く巨大ロボットが登場した『B’z LIVE-GYM. a BEAUTIFUL REEL.2002 GREEN』、『B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT-』では、吊り上げたレーシングカーを落として爆発させる演出で度肝を抜いた。『B’z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”』では、巨大なピンクの恐竜が登場。昨年のスタジアムツアー『B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI-』では、火の鳥の翼を象ったトラスが組まれ、2人をキャラクターにした巨大バルーンが登場した他、稲葉がピアノを弾きながら「ALONE」を歌って、最後には花火が打ち上がった。徹底したエンターテインメント性。まるでテーマパークのような仕掛けが、いたるところに施されている。

 破格のスケールなのは、圧倒的なボーカルと演奏によるライブステージがあればこそ。ステージを埋め尽くすように並べられたスピーカーから放たれる爆音、唸りをあげるチョーキング、壮大なフレーズ。ライブでは、松本のギタープレイをフィーチャーしたコーナーもあり、あの圧倒的なギタープレイを前にしては、どんな巨大セットも小さく感じる。ステージを縦横無尽に駆け回る稲葉浩志は、何十曲とエモーショナルに歌ってシャウトしても声を枯れさせないのが驚き。鉄の喉を持っているのでは? と思うほどだ。1曲目から最後まで完璧な歌を聴かせ、ライブ終盤には筋肉美でも観客を魅了する。そうした2人を支えるのは、名うてのプレイヤーたちだ。それも今年のツアーからは、サポートメンバーを一新すると発表されて大きな話題になった。例えばギターには、『DINOSAUR』からアレンジャーと参加しているYukihide“YT”Takiyama。松本のTMGを始め、Whitesnake、オジー・オズボーン、Slash’s Snakepit等のサポート経験もあるドラマーのブライアン・ティッシー。INABA / SALASのレコーディングに参加したルー・ポマンティの息子であるサム・ポマンティがキーボード。そして、五弦ベースを操るインド人の女性ベーシストのモヒニ・デイ。彼らと共に、どんなサウンドを展開してくれるのかも、今後のライブの見どころになるだろう。

 B’zは、5月29日のニューアルバム『NEW LOVE』のリリースに続けて、6月8日からツアー『B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-』を開催。令和となって最初のツアーで、どんなステージで胸をいっぱいにさせてくれるのか楽しみだ。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。