賀来賢人が確立した“二枚目コメディ俳優”というポジション 同世代のなかで抜きん出た個性とは
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今、テレビを見ていると賀来賢人を見ない日はない。それもそのはず、賀来は今年に入って7社ものCMに出演している。テレビドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)で視聴者にインパクトを与えた賀来だが、実は本作までは脇役が多いバイプレイヤーであった。ドラマデビューは『東京少女 セピア編 さよなら少女』(BS-i)であり、この作品は若手女優の登竜門とされている作品だ。当時はヒロインの水沢エレナに声をかけるイケメンと評判の先輩役として出演し、現在のコメディの多い賀来とは違うイメージである。
端正な顔立ちゆえに、かっこいい青年という若手俳優に多いステレオタイプな役が多かった賀来だが、キャリアを積むうちに次第にその芝居は三枚目に徹し、新たなキャラクターを確立。2014年にはNHK連続テレビ小説『花子とアン』に出演し、『紅白歌合戦』中のスペシャル映像にも登場。さらに同年、ドラマ『Nのために』(TBS系)に出演し、現在の配偶者である榮倉奈々と出会う。この頃からお茶の間にも賀来賢人の名前が浸透してきた。
舞台挨拶や会見取材でもよく喋り、場を盛り上げる役に徹するサービス精神旺盛の賀来だが、役者として道を見失っていた時期があったという。しかし、福田雄一監督のひと言で気持ちに変化があったことを『今日から俺は!!』出演時に明かしている(参考:https://www.ntv.co.jp/kyoukaraoreha/articles/72tffqagzgrrtguqx9.html)。賀来が福田監督から言われた「同世代で一番コメディができる俳優になりなさい」「そういうことをやっている人はいないんだから、そこをもっと極めたらいいんじゃないの」という言葉が響いたという。さらに日刊スポーツのインタビュー(https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201810210000261.html)では、舞台への挑戦で転機が訪れたとも話していた。賀来自身、そろそろ主演を経験したいという気持ちが芽生えるようになったきっかけをくれたのが当時舞台で共演していた小栗旬。こういった刺激に揉まれながら、自身の俳優としての役割=キャラクターをブラッシュアップさせ、イケメンなのにコメディ俳優というポジションを確立した。
実は賀来の同世代の俳優には岡田将生(NHK『なつぞら』放送中)、佐藤健、窪田正孝(フジテレビ系ドラマ『ラジエーションハウス』放送中)、松坂桃李(関テレ・フジテレビ系ドラマ『パーフェクトワールド』放送中)など、そうそうたる俳優が名を連ねる。多くが連続ドラマや映画で主演を張っている俳優だ。そんな中、賀来は埋もれない個性をコツコツと磨いてきたのであった。
賀来のキャラクターがここにきて人気になった理由はいくつか考えられる。1つは、お笑いの在り方が変化してきたことだ。SNSなどでも、人を馬鹿にしない、暴力を振るわない笑いを支持する流れができている。人気のお笑い芸人はサンドウィッチマン、バナナマン、おぎやはぎなどコンビ仲がよく愛情に溢れた人柄が売りの芸人ばかり。俳優が演じるマイルドなコメディが視聴者にとっても心地よいと感じる時代になってきたのではないだろうか。
さらに2つ目として、賀来は、整った顔にも関わらず思い切りよくふざけられるサービス精神がある。その行動は、クラスに1人はいる、おふざけキャラでモテた男子を想起させる。ふざけているものの、誰かを傷つけたりバカにしたりしているわけではない。故に子供から大人まで、男性も女性も分け隔てなく好印象を持たれやすいのだ。明るく場を盛り上げるクラスの男子に好意を持つように、賀来の全身全霊のコメディはクスリと笑いながらも「好きだな」と感じさせるパワーがある。憎めないのだ。そんな賀来の芝居の個性と『今日から俺は!!』の三橋は非常に相性がよかったのではないだろうか。ゆえに大ブレイクを果たした。
賀来は5月に『ドラマスペシャル 死命~刑事のタイムリミット~』(テレビ朝日系)の出演を控える。病で余命宣告を受けている殺人犯という、自身の得意としてきたキャラクターとはまた異なる表情を見せる作品だ。さらに7月には『WOWOWオリジナルドラマ アフロ田中』がWOWWOWプライムでも放送予定。映画でも人気を博した『アフロ田中』のドラマ版であり、賀来の真骨頂であるコメディ作品である。それぞれテイストの違う作品だが、勢いある賀来の手にした次のチャンスでどう魅せてくれるのか。今後の賀来の活躍から目が離せない。
(Nana Numoto)