『なつぞら』吉沢亮VS清原翔、スキー対決で描かれたもの “なつの幸せ”とは何か?
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5月10日放送のNHK連続テレビ小説『なつぞら』第35話では、天陽(吉沢亮)と照男(清原翔)のスキー対決の模様が描かれた。
参考:『なつぞら』第36話では、泰樹(草刈正雄)がなつ(広瀬すず)に結婚についての話をもちかけ……
前回の放送の最後にて、大会前に照男に呼び出された天陽。林の中で、照男は天陽に「なつのことをどう思っているのか」と問いかける。前回の放送でも、列車の中で天陽はなつ(広瀬すず)に「(アニメーターになるために)東京に行ったらいい」と告げるも、なつは
「アニメーターになりたいとは言っていない」と反論。思わず、「だったら、行くなよ!」と、自分の想いを露わに。これまで、天陽が自分の気持ちを表にすることがなかったため、視聴者に大きな衝撃を与えた。
そして本日の放送では、ついに天陽が「なつのことを好きだ」とはっきりと自分の気持ちを口にした。これまで、『なつぞら』で自分の「好き」を口にしたのは、門倉番長(板橋駿谷)と雪次郎(山田裕貴)のみ。両者の告白は作中のコミカルな一面を担っていたことを踏まえると、今回の天陽の宣言はこれまでのものとは違った印象を与える。
一方で、照男は泰樹(草刈正雄)に「なつと結婚しろ」と念押しされている立場だ。当初は戸惑いを見せていたが、第6週に入ってからは、なつを映画に誘おうとしたり(結局は、天陽と行くことになるのだが)、スキー板を買ってもらった時の様子からは、泰樹の提案に真剣に向き合おうとしているように見えた。しかし、天陽の胸中を確認した照男は、「俺が勝ったら、なつに告白しろ」と挑戦をふっかける。なつの幸せを考えてのことだ。一方でなつの幸せは東京にあるのではないかと暗に察する天陽は、「僕が勝ったら、諦めます」と挑戦を受けることとなる。
清原翔と吉沢亮と言う端正な顔立ちの2人が真っ白な雪景色の中、言い合う姿はそれだけで、朝から眼福のシーンであったが、ここで重要なのは、2人とも“自分の幸せ”ではなく“なつの幸せとは何か”を第一に考えて行動している点にある。当人のいない場で、なつの幸せを、ある種決めつけて話を進めてしまっているのだ。北海道に来てから、なつは誰に強制されるでもなく、自分の意思で決断を下してきた。柴田家の中で自分の居場所を見つけるため酪農を手伝い始めたり、泰樹と農協の問題をなんとかしたいと思ったから演劇に出演したのだ。
そんななつが、与えられるだけの幸せを享受するとも思えない。スキー対決は照男が勝利し、天陽がなつに話があると持ちかけて幕を閉じた第35話。春の雪解けの前にどうやらひと吹雪ありそうだ。
(文=安田周平)