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村井良大×深作健太 いまの世界は『カリギュラ』よりも不条理だからこそ笑ってほしい

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左から)村井良大、深作健太 (撮影:石阪大輔)

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アルベール・カミュの傑作不条理劇が、深作健太の演出により神聖朗読劇『カリギュラ』として上演される。実力派の声優・俳優陣を配し、複数のチームで公演が行われる本作。皇帝カリギュラを演じる4人のキャストのひとりである村井良大と深作が、本作の魅力、そして、いまこの作品を上演することの意義を語り合った。

――小栗旬さんや菅田将暉さんなどが主演して、これまで舞台上演されてきた『カリギュラ』ですが、深作さんの演出で朗読劇として上演されることになった経緯を教えてください。

深作 2016年から声優さんを起用しての朗読劇で様々な作品を上演してきたんですが、『カリギュラ』は僕が一番やりたかった作品なんです。蜷川幸雄さんが「さいたまネクスト・シアター」の作品として上演された時に稽古場を拝見し、あまりに感動して蜷川さんに「本当に素敵なセリフですね」とお伝えしたら「うん、素敵な“言葉”だよね」と返されたんです。それは蜷川さんからのお説教で「お前も演出家なら“セリフ”なんて渇いた言い方ではなく“言葉”と言え」という意味なんですね。
そんな経験もあり、自分にとって演出家をする上で転機となった作品として今回、カミュのこの美しい“言葉”を伝えたいと思いました。この戯曲は、ナチス政権の樹立から5年後の1938年に執筆されました。当初は世の中と戦う独裁者をカミュが自分で演じたいという無邪気な動機で書いたらしいんですが、ヒトラーによって、とんでもない情勢になっていく中、カミュは何度も書きかえたそうです。そうした世界の状況が、トランプやネタニヤフが台頭し、世の中が右寄りになっている混迷の現在のご時勢と重なって、いまこの作品をやる意味が出てきたと感じています。

――村井さんは、2015年の『カワイクなくちゃいけないリユウ』、『シアワセでなくちゃいけないリユウ』という連作以来となる深作さんの演出作品への出演です。

村井 久しぶりにご一緒できるのが嬉しいですし、いまの深作さんのお話を聞いて、朗読劇でなく、本を離して立って芝居をやりたかったと思いつつ、今回は朗読劇だからこそシンプルに、より伝わる部分があると感じています。深作さんもおっしゃったように、言葉にすごく感銘を受ける部分が多いんです。だからこそ、余計な装飾を排し、俳優が発する言葉だけで伝えるほうがいいのかなと。混迷の時代にこの作品を投げ落とすというのはすごく良いタイミングであり、楽しみです。

――カリギュラという存在をどのように捉えていますか?

村井 感情移入をするには難しい部分もありますが、言葉の端々から“弱さ”を感じる部分があって、そこが魅力的だと思います。彼を取り巻く周りの人間が素晴らしくて、そこから浮かび上がってくる不完全さ、不均衡な感じが人間らしくていいんですよね。制御したいけど制御できない、そのギリギリの塩梅が、1938年に書かれた戯曲とは思えないような“不完全な完璧さ”を持っていて、そこも面白いです。

――深作さんから見た俳優・村井良大の魅力を教えてください。

深作 僕にとって『カワイクなくちゃいけないリユウ』、『シアワセでなくちゃいけないリユウ』は、この十数年の中で最も好きな作品のひとつですが、その前にも村井くんとはご一緒していて、本当に信頼している俳優さんです。クレバーで、言葉の立て方の感性も素晴らしい。本当に大ファンです! いや、久しぶりに会えるのが嬉しくて、昨夜はウキウキして眠れなくて(笑)。

村井 ありがとうございます(笑)。いまでもそのときの稽古場の深作さんのことを思い出します。僕もすごく楽しかったです。

――2015年の連作はラブストーリーで今回は不条理劇、落差が激しいですが……。

深作 でも村井くんは、戯曲の面白いところ、笑える部分を見つけるのがすごく上手いんです。今回の作品も、ブラックジョークとして笑ってもらえたらと思っていますし、ぜひ面白がって、みんなをいじめる暴君になってほしいです。

村井 深作さんは言葉の立て方や意図を非常に的確に指摘してくださる演出家。「ここはしっかりと言ってほしい」というのをきちんとおっしゃってくださるんです。一方で、俳優の感性を信じ、活かしてくださるので、すごく居心地よく作品をつくっていけるんです。

深作 いま、お話していて思い出したんですけど(『カワイクなくちゃいけないリユウ』の作者の)ニール・ラビュートの描く女性がすごく強烈で、そこへの受け答えも含め、言葉をちゃんと立てなくてはいけなかったんですけど、村井くんをはじめ、それが得意な俳優さんたちだったので、すごく楽しかったんです。あれ以降、会話劇で強調すべきところをしっかり立てることを意識するようになって、僕にとってあの作品は転機だったと改めて思いました。当時、舞台の演出をするようになって、まだ2年目。右も左もわかってなくて……。

村井 2年目であんなすごい演出をされてたんですか!? 4人のキャストが客席で、本を読んだり音楽を聴いたりしながら座っている状態から始まるって、2年目の演出家がすることじゃないですよ!

――カリギュラの妖艶さや狂気、残虐性など、ビジュアル的なイメージが強いですが、“言葉”に重きを置いた朗読劇という形で、どのような作品になるのか…。

深作 今回、翻訳をしていただいた大川珠季さんとはこの5年ほどご一緒しているんですが、ずっとドイツ語の戯曲を訳していらして、今回が初めてのフランス語戯曲の翻訳になります。彼女が紡ぐ言葉は、過激でありつつも美しいんですよね。最初に上がってきた訳を読んで、蜷川さんのことも思い出したし、涙があふれてきました。カリギュラは最愛の妹を亡くして、この世の不条理を悟り、本人もそれが間違った方法だとわかりつつ、この世界をぶち壊そうとするわけで、それは非常に悲しい戦いだと思います。だからこそ、悲しく演じ必要はなくて、むしろ明るく破滅へと突き進んでいく姿を村井くんに見せてほしいなと思っています。
繰り返しになるけど僕、村井くんが大好きなんです。本当にクレバーな役者さんで『RENT』のマーク役は“ベスト”マークだと思っていて。主観を持ち込まないといけない役だからこそ、一番客観的に引いて見ないといけない役を演出家的な視点を持って演じていて本当に素晴らしかったです。カリギュラも、まさに引いた視点で他の6人を見つめる皇帝でいてほしいなと思っています。

――4人のカリギュラ役の俳優さんの中で、緒方恵美さん、伊東健人さん、市川蒼さんは、主に声優をされていますが、その中で村井さんがどんなカリギュラを見せてくれるのか、楽しみです。

村井 戯曲を読むと、マイクスタンドに近づいて話すというシーンが多くて、これは声優さんが多いからなのか、アフレコスタジオみたいだなと思いました(笑)。生アフレコみたいな朗読劇になるのかなと楽しみです。

――最後に作品を楽しみにされている方に向けてメッセージをお願いします。

深作 カミュがこの『カリギュラ』を書いた時代よりも、いまの世界のほうが不条理だと思うので、ぜひブラックコメディとして笑っていただければと思います。だって、カリギュラのような人物に惹かれるなんて絶対にないと思いつつ、いま、世界はトランプという存在を面白がっているわけで(苦笑)、そんな世界が孕んでいる矛盾を浮き彫りにする作品になっていると思います。

村井 「難しそう」とか「重そう」と思うかもしれませんが、作品の端々でカリギュラという人を「理解してほしい」という言葉が出てくるんです。まさに“理解”を通じて、お客さまを巻き込んでいく作品になっていると思います。「不条理劇だからわからない」ではなく、カリギュラの心の内に興味を持っていただくことが、混沌のいまの時代に必要なことだと思うので、没入体験劇として見ていただけたら幸いです。ぜひ気軽に見に来てください!

取材・文:黒豆直樹 撮影:石阪大輔
スタイリスト:秋山貴紀 ヘアメイク:西沙織

<公演情報>
神聖朗読劇『カリギュラ』

作:アルベール・カミュ
翻訳:大川珠季
音楽・演奏:西川裕一
構成・演出:深作健太

出演:
・8月12日(水) 19:00開演
緒方恵美 幸村恵理 重松千晴 鈴原希実 井上和彦 難波圭一 株元英彰

・8月13日(木) 19:00開演
村井良大 堀井美香 白井悠介 廣瀬大介 高橋広樹 宮地大介 白又敦
※村井良大×堀井美香×深作健太によるアフタートークあり

・8月14日(金) 13:00開演
伊東健人 下田麻美 中澤まさとも 山口智広 野上翔 内田夕夜 校條拳太朗

・8月14日(金) 19:00開演
伊東健人 久保田未夢 逢坂良太 市川太一 鈴木達央 増元拓也 酒井広大
※伊東健人×久保田未夢×深作健太によるアフタートークあり

・8月15日(土) 13:00開演
村井良大 堀井美香 細貝圭 伊達さゆり 関俊彦 宮地大介 葉山昴

・8月15日(土) 19:00開演
村井良大 堀井美香 細貝圭 青山なぎさ 中井和哉 宮地大介 海老澤健次

・8月16日(日) 13:00開演
市川蒼 鬼頭明里 駒田航 野中ここな 鳥海浩輔 神尾晋一郎 汐谷文康

会場・東京建物 ぴあ シアター

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/caligula/

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