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『集団左遷!!』福山雅治が見せたリーダーシップ 蒲田支店を追い詰める最強の敵が牙を剥く

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リアルサウンド

 日曜劇場『集団左遷!!』(TBS系)第4話が5月12日に放送された。

参考:『わたし、定時で帰ります。』ネット上で阿鼻叫喚の嵐! ドラマで描かれる“働き方”の変化

 第3話のラストで明かされたスパイの正体は、法人営業1課課長の花沢浩平(高橋和也)だった。合併前の三友銀行出身であり、結婚する娘のために銀行員としていまクビになるわけにはいかない花沢。常務取締役の横山(三上博史)はそんな花沢の弱みを知って、蒲田支店の情報を本部に流すように指示していたのだ。

 裏切りがバレて出向を覚悟する花沢に、支店長の片岡洋(福山雅治)は意外な言葉をかける。「ここでやり直せばいいじゃないですか。こわいのも一緒。がんばるのも一緒。生き残るのも一緒ですよ」と。心機一転、目標達成に励む花沢であったが、最終的には横山の指示で関連会社に飛ばされてしまうのだった。

 横山の所行に対して黙っていられないのが片岡だ。第3話では横山が単身、蒲田支店を訪れたが、第4話では片岡が本部に急行する。「花沢を知らない」とシラを切りとおす横山に向かって「知らない人間の人生をもてあそぶなよ」と叫ぶ片岡。利害もメンツもない、理不尽に対する魂の叫びそのもののような片岡の言葉に胸をわしづかみにされた視聴者も多かったと思う。

 『集団左遷!!』の片岡は情に厚い熱血漢として描かれている。最初は「がんばろう」を連呼するばかりにも思われたが、仲間を信頼するリーダー像が明らかになってきた。常に率先して道を切り開き、必要とあれば部下に花を持たせる。部下のために頭を下げ、いざというときは身を挺してかばう。

 最初は反発していた行員たちが次第にまとまっていくのは、片岡の人間としての誠実さがあってのこと。力及ばず出向が決まったことを詫びる片岡に花沢が返す「がんばれ! 蒲田!!」のエールには思わず眼がしらが熱くなった。『集団左遷!!』の脚本を手掛けているいずみ吉紘は、これまでにドラマ『ROOKIES』(TBS系)の脚本などを担当。男と男のちょっと良い場面を書かせたら右に出るものはいない名手だ。『集団左遷!!』では、人員整理というシリアスな要素がストーリーの縦糸に置かれ、横糸に支店長の片岡を中心とする蒲田支店の人間ドラマが描かれている。

 花沢や副支店長の真山(香川照之)のようなベテランをはじめ、滝川(神木隆之介)、平(井之脇海)のような若手も加わって織り上げる悲喜こもごものエピソードを見ていると、体育会系の部活を見ているような気分になる。そういえば、営業主任の木田恵美子を演じる中村アンは、学生時代にチアリーディング部に所属していたことでも有名だ。汗をかき一丸となって進む蒲田支店の中心にいるのは片岡。自らがんばるだけでなく、知らないうちに部下の力を引き出す片岡のリーダーとしてのあり方は、ビジネスで言うところのエンパワーメントにも通じるだろう。

 第4話では、不動産コンサルタントを名乗る神崎(戸次重幸)たちにあやうく40億をだましとられそうになったほか、本ドラマ2度目となる高橋和也の顔面流血、猫背椿演じる経済誌記者に蒲田支店の廃店計画をすっぱ抜かれるなど多事多難ぶりは相変わらずである。しかし、片岡を中心にスクラムを組んだ蒲田支店はそれらを次々と跳ね返していく。報道を聞きつけた地元の預金者が廃店を撤回するように大挙して口座開設や融資の相談に訪れる場面は、多少誇張はあるものの、これぞ下町パワーというシーンだった。

 そんな蒲田支店の躍進にひとり苦虫をかみつぶす男が。頭取の藤田(市村正親)に対しても「三友銀行の未来のため」と傲然と言い放つ横山は、支店統括部長の宿利(酒向芳)に代わる新たな刺客を差し向ける。怜悧一徹で目的のためには手段を選ばない横山を本気にさせてしまった蒲田支店。営業課長を1人失った状態で強大な敵に立ち向かう片岡たちに未来はあるのだろうか?

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京の片すみで音楽やドラマについての文章を書いています。