瀬々敬久&東出昌大、WOWOW『連続ドラマW 悪党 ~加害者追跡調査~』での再タッグを語る
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瀬々敬久監督と東出昌大
昨年、『友罪』を映画化した瀬々敬久監督が同じ原作者、薬丸岳の小説を今度はWOWOWで連続ドラマ化した『連続ドラマW 悪党 ~加害者追跡調査~』。瀬々がそこで主演に迎えたのはやはり昨年『菊とギロチン』で初めて顔を合わせた東出昌大だった。
東出が演じるのは元警察官の探偵、佐伯修一。幼い頃、姉を殺されるという忌まわしい過去を抱えながら生きる彼が、探偵事務所所長、小暮正人(松重豊)の許で犯罪加害者たちの現在を様々に調査するうち、自身のトラウマの元凶に近づいていく。加害者たちの内面に接するうち、被害者家族の内面が変化するという特異な作品構造は、瀬々&東出だからこそ生まれたハーモニーとヒューマニティが支えている。
映画と変わらぬ質で、映画以上のボリュームを届けてくれるWOWOWドラマならではのリッチな再タッグ。瀬々と東出のふたりに本作についてたっぷり語ってもらった。
――どんな作品になったのでしょうか。
東出 瀬々監督が、(主人公の)佐伯は復讐の鬼ではあるけれど、日常の空気も出していきたいと。ハードボイルド(の世界)は、見栄を切るようなところがあるじゃないですか。そういうキャラクターとして見せることはできるんですけど、それだけに限定されちゃうと、せっかく瀬々監督とやる意味がないんじゃないかと、僕も思いました。
瀬々 探偵である主人公がいろんな人々に事情を聴いて、事件の真相が分かっていく構造なんですが、演じる人たちの力によってエモーションが渦巻く作品になったなと思います。
――おふたりは昨年公開された『菊とギロチン』で初めて顔を合わせましたよね。お互いに、どんな監督、どんな俳優だと思っていますか。
東出 俳優部を信じて、大海原に投げ出す。行ってこい!と背中を押してくださる。それが根底にある演出。瀬々組らしいなと。そして、さっきも言ったように、ハードボイルド一色になりすぎない。人間だから、もがいている様にリアリティがあって。その濁流の中にひと筋の光明が見えた瞬間に、救いが生まれる。そういう作品が、そういうお芝居が好きである。そこは瀬々監督ならではだなと思いますね。
瀬々 東出くんの役は、いろいろな人たちとぶつかって最後、トラウマみたいなところを打ち壊して、先に進んでいかねばならない。それがトータルの構成。そこにおいて自分の中で印象的だったのは、あるとき、東出くんがトラウマを乗り越えたようなパフォーマンスをするわけです。
東出 そんなこと、しました?
瀬々 ほら、第六話(最終話)のラスト近くのシーンで。
東出 ああ!
瀬々 そこに至るまではノープランで挑んでいるわけです。「こうやってほしい」ということもあまり言ってませんからね。つまり、自由演技。それを手持ち(カメラ)で撮る。俳優、東出昌大がそんなふうに挑んでいく、ある種のドキュメンタリー的な部分もあったなと。撮っていて刺激的でしたね。それと、東出くんは他者とのコール&レスポンスがすごいなと。(相手の芝居を)受けて投げ返すんですね。そうすると、東出さんと一緒に俳優も輝くし、東出くん自身も輝く。その化学反応が場の中で行われていく。たとえば、人と人とが向かい合っているだけで、感情と感情とが積み重なって、どんどん高みにいく。それはすごく感じましたね。
――東出さんご自身も、芝居のコール&レスポンスは意識していますか?
東出 何か表現をしようというのではなく、“表現をしない”という方が僕は魅力的だなと思っているんです。そうありたいなと思っているんですけど、どうしても雑念が生まれて、こうしたらこう見えるんじゃないか、とか考えてしまうことはあります。何も考えないでできるってすごいなと思うんです。でも今回は何も考えないでできる先輩方も大勢いらっしゃいましたし、『菊とギロチン』から一緒だった寛一郎も、狙いにいかないで“何もしない”をする、というのを眼の前でしてくれたりしたので。そういう共演者のみなさんの力を借りて、佐伯は存在できたと思うし、そういうお芝居をもらって変わっていく佐伯でしたね。
――松重豊さんとの共演はいかがでしたか?
東出 本当にお上手な方だなと。木暮はちょっととぼけたところのあるキャラクターなので、そういうお芝居が続いたんですけど、橋の上で面と向かうシーンがあって。こちらの目の奥を見て、眼と眼が合う初めてのお芝居があったんですが、そのとき、ちゃんと(芝居の上で)“心臓を殴りに来てくれた”んです。そういう熱があった。それを佐伯として受け止めたんです。それにしても松重さんは(役者として)尊敬の意味も含めて、ほんとズルいし、上手いなと思います。
瀬々 何回か出てもらっていますが、松重さんは天使の面と悪魔の面がある。
東出 そうそう。
瀬々 芝居(の相手)をしていたらよく分かると思うんですけど、天使のようにいいことを言ってくれるときもあるし、悪魔のように「お前、こっちに来いよ」みたいなときもある。
東出 “笑ゥせぇるすまん”的な(笑)。
瀬々 そうそう(笑)。そういう両面性があるから、不可思議な存在なんですよね。捉えどころがないというか。そのへんは松重さんならではの魅力というか。そういう俳優さんって、日本にはあまりいないと思うんです。それが今回の木暮という人物像にも表れていて。佐伯に悪魔のように囁くこともあれば、守護天使のように「頑張れよ」と言ってくれるときもある。そのあたりの二律背反した存在感が面白いなと思いました。松重さん特有のあり方ですよね。
――タイトルの『悪党』に趣を感じます。悪党という言葉は“完全な悪”を感じさせません。どこか人間的なものを感じます。なぜ、このタイトルなのか。また、“悪党”という言葉からイメージするものはなんでしょうか。
瀬々 “悪党”って、中世的だと思うんですね。バサラとか。中世って、悪が悪だけではなく、善悪両方あるみたいな感じで捉えていた時代だと思うんです。そういうイメージがこの『悪党』というタイトルにはある。各登場人物もそうなっていると思うんです。悪が悪になりきれていないというか。そういう視点で(原作者の)薬丸(岳)さんは世界を見ているのだなと。
東出 事前に(犯罪者関係の)いろいろな本を読むにつけ、悪党って、どうやって存在するのか。それを考えたんです。やっぱり家庭環境に原因があったんじゃないのか。幼い子供が、そのまま、どうしようもない悪党になることはない。悪党とは何なんだろう? この作品の間は常々考えていました。答えは出ないし、答えが出なかったから、薬丸さんもこういう小説を書いたと思うんです。答えは出ないけど、考え続ける。このドラマもそういう作品になっているんじゃないかと思っています。
取材・文:相田冬二 撮影:稲澤朝博
『連続ドラマW 悪党 ~加害者追跡調査~』(全6話)
WOWOWプライムにて毎週日曜夜10時より放送中
第1話は公式サイトにて無料配信中
https://www.wowow.co.jp/dramaw/akutou/
『連続ドラマW 悪党 ~加害者追跡調査~』特集
https://lp.p.pia.jp/feature/wowow_akutou/
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