DECO*27が語る、新会社設立で拡張したボカロPとしての未来「文化は人がいないと生まれない」
音楽
ニュース
2008年にインターネット上での動画公開を開始して以降、これまで5枚のアルバムをリリースしてきたボカロP/プロデューサーのDECO*27。彼が通算6作目となる最新アルバム『アンドロイドガール』を完成させた。
この作品は、彼が自身の作品にかかわるクリエイターを集めて設立した新会社「OTOIRO」を立ち上げて以降初のフルアルバム。一度は動画投稿をやめようと考えた2013年を経てリリースされた2014年の『Conti New』や2016年の『GHOST』といった近作の流れを汲みつつも、そこに新たな音楽要素を加え、これまでの集大成とも言える作品を完成させている。前作からの歩みや、新会社を設立したことで『アンドロイドガール』の制作に起こった変化、そして彼がつねに寄り添い続けてきたボカロシーンや初音ミクについての思いを語ってもらった。(杉山仁)
“OTOIRO”設立で大きく変わった制作環境
ーー新作の話に行く前に、まずは前作『GHOST』のことを振り返ってもらえますか? あのアルバムには新たにミクスチャーの要素が取り入れられていましたね。
DECO*27:そうですね。『GHOST』は僕が中学~高校時代に聴いていた、ミクスチャーロックのテイストを自分の曲に初めて取り入れた作品でした。「今の子たちにはどう映るのかな?」と思ったんです。そうしたら、「ゴーストルール」をみんなが気に入ってくれて。そういう意味でも「自分が影響を受けたものをしっかりDECO*27のフィルターを通して作品として発表することは、今後も積極的にやっていきたい」と思った作品でした。
ーー当時のボーカロイドシーンについては、どんなことを感じていましたか?
DECO*27:率直に言うと、「人がいないなぁ。寂しいなぁ」という気持ちでした。ただ、曲を上げる人の数は減っていましたけど、聴いてくれるファンの方たちや、歌ってみたでカバーしてくれる人たちは変わらずいてくれたし、楽しんでくれていたんですよね。そういう広がりは感じていましたし、僕としてはボーカロイドを取り巻く文化を寂しいものにはしたくない、という気持ちで曲を上げていたと思います。あと、『GHOST』ではMVを1枚絵のものにしたんですよ。
ーー初期のボカロ文化の雰囲気を再現していたということですよね。
DECO*27:そうです。僕も「モザイクロール」で原因を作ったひとりなのかもしれないですけど、この頃には動画MVでの投稿が一般化して、昔と比べて曲を投稿するハードルが高くなっていて。そのハードルをちょっと低くすることで、新しいクリエイターが気軽に入ってきてくれたらいいな、と思っていたんです。
ーー自分のことだけではなくて、ボーカロイドシーン全体のことを考えるようになっていた、と。
DECO*27:はい。「シーン全体を盛り上げたい」という気持ちが、徐々に強くなってきていたんだと思います。今もそうですけど、「どうやったら多くの人にこの文化の魅力が届くだろう?」ということを、より考えるようになったというか。現在はYouTubeやBiliBiliにも曲を上げているのもそのひとつです。中国のファンの方も熱くて、コメントもたくさんいただいているんですよ。
ーーアルバムを出して以降だと、印象的だったことはありますか? たとえば、様々なクリエイターが所属する会社「OTOIRO」を設立したことは大きかったんじゃないでしょうか。
DECO*27:去年U/M/A/Aとの契約が円満に終了して、自分がやりたいことを半年間ほど見つめなおしてみたんですけど、曲を上げること以外で「他にやりたいことはないかな?」と考えたとき、これまでかかわってくれたクリエイターの方たちに「ずっと動画を作っていてもらいたい」と思ったんです。ものですし、「いいものを作っている人たちにずっと作品を作ってもらうには、どうしたらいいのかな?」と考えて。そこで「自分が雇用すればいいんだ」という考えに至りました。実際に立ち上げてからは、音を作るスペースと動画を作るスペースがオフィスのドアを一枚隔てただけの環境なので、よりシームレスに作業できるようになりました。楽しむ部分は忘れずに、でもしっかりと緊張感を持って制作に臨むことは、チームになったからこそ徹底してやるようにしています。1月にOTOIROを発表してから、今では所属クリエイターが10人を超えてますね。また改めて紹介できればと思ってます。
ーーなるほど、それは大きな変化ですよね。
DECO*27:本当に大きな変化を感じます。これまでは「この曲に動画をつけてください」というやりとりをオンライン上でしていましたけど、その場で動画編集までできる体制が整うと、みんなで話し合って修正を進められるんですよ。たとえ仲がよくても、文面だと伝わりづらいこともありますし、顔が見えないと細かいニュアンスがわからない場合もあって、それは最終的な制作物にも影響すると思うんです。それに、今はアニメーターも3DCGを作る人もデザイナーの人も、みんなでやりとりしながらMVを作れるので、「こういう見せ方ができるかもね」と、どんどんアイデアが広がるんです。もちろん、これまでの動画もすべて納得して出してきたものばかりですけど、充実感がより上がっているような、思い入れがさらに強まっているような感覚です。あと、今はakkaの過去の作品に憧れてOTOIROに入ったろづ希という子がいまして。「アンドロイドガール」のMVは、その子も一緒に作ったものです。「微笑ましいな」と、父親のような気持ちになりました(笑)。
ーーでは、その環境でも制作されたアルバム『アンドロイドガール』について詳しく聞かせてください。全体として「こんな風にしたい」という最初のアイデアはありましたか?
DECO*27:今回は、『Conti New』(2014年)と『GHOST』(2016年)でやってきたことの集大成のような作品にしたいと思っていました。僕はファンのみんなが楽しんでくれることが一番嬉しい評価だと思っているので、その部分を引き続き考えつつ、そこに前作で言うと「妄想感傷代償連盟」のような、これまでにはなかったタイプの曲も加えたいと思っていましたね。そういう意味でも、この5~6年の集大成的な作品になっていると思います。
ーーまず、1曲目の「Reunion」はアルバムの幕を開けるインスト曲になっていますね。
DECO*27:アルバムの導入曲ですね。そこに「再会」という意味を込めて「Reunion」というタイトルにしました。次の2曲目「アンドロイドガール」は「二息歩行」(2009年初出。2010年作『相愛性理論』に収録)の10年後を描いた曲で、MVでも「二息歩行」のMVに登場した男の子と女の子の10年後の姿を描いています。無気力な主人公を、女の子が目を覚まさせるという物語になっています。この曲名がアルバムのタイトルになったのは、僕が一番聴いてほしい、映像も見てほしいものになったからですね。「アンドロイドガール」は、アルバムの中でも本当に最後の方にできた曲で、そのときに「これがタイトル曲かな」と思えたんですよ。
盟友・wowakaとの別れ
ーーそこには今話してもらったボーカロイドシーンへの気持ちも関係しているんですか? ボーカロイドプロデューサーの方々の数は少なくなったとしても、このシーンから出てきた人たちの曲は、今や日本のポップミュージックに欠かせないものですし、最近だとバーチャルYouTuberの方たちもそうですが、好きな曲としてボカロ曲を挙げる人たちは、相変わらず本当に多いです。
DECO*27:それは本当に嬉しいことで。VTuberの方たちがカバーを上げてくれるのもそうですし、TikTokで曲が使われているのも、すごく嬉しいんですよ。普段ボカロを積極的に聴かない子でも、色々なコンテンツを通してボカロ曲に出会ってくれて、そこから原曲を聴いてもらえたら最高だと思うので。ボーカロイドシーンにはいい曲を作る人はいっぱいいますから、その魅力が広がってくれたら嬉しいです。そもそも、「ボーカロイドシーンに人がいなくなった」というのは、その人たち自身はますます活躍していても、自分自身で歌うようになったり、プロデュースワークに回ったりして「表現方法が変わった」ということで。それは素晴らしいことですけど、同時に僕個人としては、ボーカロイドを通して楽曲を表現する人が少なくなっているのは寂しいな、とも感じるんです。それこそ2010年頃だと本当にたくさんのライバルがいて、みんなで切磋琢磨しあうような雰囲気があって、僕もあの環境があったからこそ「モザイクロール」のような曲を作れたと思うので。
ーー今は米津玄師名義で活動しているハチさんを筆頭に、様々な人がボカロシーンに集まっていたからこそ、DECO*27さんも自分の音楽を突き詰めていけた、と。
DECO*27:もちろん、(2017年の初音ミク10周年に寄せて制作された楽曲)「砂の惑星」も最高だな、と思いました。僕とは表現の仕方が違うだけで、あの曲も言いたいことは同じだと思うんですよね。
ーー同じくその頃ボカロPとして活躍していた方というと、つい先日訃報が報じられたヒトリエのwowakaさんの存在も大きかったんじゃないかと思います。DECO*27さんとwowakaさんは、まさに戦友と言えるような間柄だったと思いますが、訃報を受けて音楽に向き合う気持ちに変化があったように感じますか?
DECO*27:変に背負おうという気持ちはないですけど、曲を作っていると、どうしたって彼の顔は浮かんできます。なので、まったく影響がないと言えば嘘になりますね。僕らはお互いに切磋琢磨してきたし、彼はボーカロイドシーンだけでなく、日本の音楽シーンに影響を与えた人だと思いますし。でも、彼がやれなかったことは、僕にできることではないんです。だから、「僕は僕で自分がやれることをしっかりとやろう」と、改めて思いました。それが僕にできることだと思っています。
ーーでは、アルバムに話を戻して、3曲目の「スクランブル交際」はどうですか?
DECO*27:「スクランブル交際」は、「チャンバラジョニー」と「罪と罰」のような曲の雰囲気を合わせたらどうなるかな、と思って制作した曲でした。この曲のサビの最後の〈「じっとしてって言っといたじゃん」〉という歌詞は、僕が大好きなORANGE RANGEのような雰囲気を出したいと思った部分です。ORANGE RANGEの音楽って、曲も歌詞も楽しんでいることが伝わってくると思うんですよ。あの感じは、僕も絶対忘れちゃいけないな、と思っていて。
ーー確かに、ORANGE RANGEの楽曲は、言葉遣いも遊び心に溢れていますよね。
DECO*27:そうなんですよ。固い頭で考えてしまうと、日本語の細かい意味まで合ってるか、合ってないかと考えてしまいがちですけど、「音楽なんだから、別にいいんじゃないか」と思うんです。僕も歌詞を書くときは、「遊び心は忘れないようにしたい」と思っていますね。
ーー今回だと「乙女解剖」はまさにそのフレーズの妙を感じる曲のように思いました。一度聴いたら忘れられない、耳に残るフレーズと言いますか。
DECO*27:「乙女解剖」は、最初に〈乙女解剖であそぼうよ〉というフレーズができて、それが僕も頭から離れなくなってしまったんです(笑)。
ーーこういうフレーズは、どんなときに浮かぶことが多いんですか?
DECO*27:僕の場合、人と会っているときに浮かぶことが多いですね。人と喋っていて印象的な言葉を聞いたら、それがずっと頭に残ったりします。そこから音に変わっていく感じですね。たとえば、誰かと飲みに行くときも、僕は隣のテーブルの会話がずっと気になってしまうことがあるんですよ。「乙女解剖」の場合は、その言葉自体を聞いたわけではなくて、乙女っぽい、女の子っぽい言葉と、解剖に近しい言葉が印象に残って、その2つがくっついて「乙女解剖」になりました。今回のアルバムにはemonさんとRockwellが参加してくれていますけど、両者で新しさと懐かしさの融合を表現してもらいました。2人と一緒にやった初めての曲ですね。これが一番、アレンジも時間がかかったような気がします。
ーーもともとクリエイターとしても、違ったタイプの方たちですしね。
DECO*27:その2人の魅力を混ぜてみたい、と思ったんです。
ーーこの後、中盤の楽曲……たとえば「シンセカイ案内所」はアーバンな雰囲気になったりしていて、アルバム全体に魅力的な起伏が生まれていますね。
DECO*27:ありがとうございます。「シンセカイ案内所」は、歌詞だけだと「何回も死んで送り出す」という内容の曲ですけど、もうひとつの意味として、「新しいDECO*27の世界に案内したい」という気持ちを込めた曲です。この曲を聴いてもらえれば、「もしかしたら、次の作品はロックじゃないかもよ?」という風にも取れると思うんです。そういう意味でもアルバムに入れたいと思った曲でした。曲自体はできるのが早くて、僕が仮アレンジしたものをRockwellに送って、3日ぐらいで音源が返ってきて……そこでほぼ最終アレンジが出来上がった形です。『GHOST』における「妄想感傷代償連盟」のような立ち位置というか、「過去のどの曲にも当てはまらないものにしたい」と思っていましたね。「妄想感傷代償連盟」の曲のテイスト自体は、今回のアルバムだと「人質交換」に活きていますけど、「シンセカイ案内所」はサウンド的にも前作にはなかった新しい要素が出た曲になったと思います。
ーーなるほど。
DECO*27:次の「サイコグラム」は、重くて病んでいる方向に振り切った曲です。それだけだとただ暗いだけの曲になってしまうので、サビの前半のコード感をあえて明るくしています。今回のアルバムはどの曲も「生と死」をイメージしていて、その「生」は「性」でもあるんです。なので、「乙女解剖」も「生と死」だけではなく「性」の要素が含まれているし、「モスキート」でもエネルギーを吸うイメージが出てきていて。僕はもともと、そういうテーマが好きなんですよ。たとえばマンガでも、人間が欲でドロドロとしていったり、性によって人間関係がこじれていったりしてしまう作品が好きで、そういう人間の汚いところも好きなんです。でもそれって、日常生活ではなかなか見えないものじゃないですか。だから、それを曲で綺麗にパッケージングして届けたいな、と思っていました。
ーー音楽のようなアートだからこそ、それが表現できるということですね。
DECO*27:そうですね。それに今回、「これってミクだからこそできることだな!」とも思いました。というのも、ミクの声じゃなかったら、もっと生々しいものになりすぎてしまっていたと思うんですよ。実際、制作段階で僕が仮歌を入れた曲がいくつかあるんですけど、自分で歌っていて「きついなぁ」と思ったりして(笑)。
DECO*27の10年間を詰め込んだ一枚に
ーーDECO*27さんはよく「ミクの声自体が好き」と言っていますが、あの声だからこそ表現できる感情がある、ということですね。今回の制作でもそれを改めて実感した、と。
DECO*27:今回のアルバムも「彼女の声じゃないとできなかっただろうな」と思います。たとえば、「乙女解剖」の〈涎をバケットの上に塗って〉も、結構きわどい表現ですしーー。
ーー「夜行性ハイズ」はどうですか?
DECO*27:これは『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』と、『第70回さっぽろ雪まつり』に関連したコラボ曲で、僕も実際に札幌でコラボを見て感動しました。曲としては、ネガティブなことをダメだと言わずに、「それでもいいよ」と許容して前に進んでいこうという曲ですね。ミクと、愛美さんが演じる(戸山)香澄が一緒に歌っているところも、不思議なくらい自然に感じました。次の「ヒバナ」は、もともとは「ゴーストルールⅡ」として作った曲ですね。仮タイトルもそのまま「ゴーストルールⅡ」で、「あの曲を聴いてくれてありがとう」という気持ちを込めた曲でした。でも、それだけでは面白くないので、英語のフレーズを入れたりして。今では再生数が「ゴーストルール」を超えていて、自分でもビックリしているんです。歌い手の方も、VTuberの方も、色んな方が歌ってくれていてすごく嬉しいですね。
ーーそして最終曲は「愛言葉Ⅲ」です。この曲はとにかく感動的な曲ですね。
DECO*27:「Ⅰ」と「Ⅱ」があって、いよいよ3部作の完結編です。これまでの10年分の感謝を込めて、「みんなありがとう」という気持ちを曲にしたら、みんなもすごく喜んでくれた曲で。でも、早くも「Ⅳはいつかな?」というコメントもあったりしたので、今はそれがめちゃくちゃプレッシャーです(笑)。まだ全然作ってはいないですけど、「Ⅳ」にするのか、「0」にするのか、それとも「THE ORIGIN」にするのか「RETURNS」にするのか……。どうしようか考えているところですね(笑)。歌詞の話で言うと、〈僕ら”II”を嫌って ”I”に戻って〉という部分は、たとえばお付き合いしている人がいて、一度は離れてしまったけれど、よりを戻して、この「Ⅲ」で家族になって未来に繋いでいこう、という内容になっていて。これは、ただ恋愛の話だけではなくて、ボーカロイドシーン自体もだいたい3つの時期に分けられるんじゃないかと思って発想した部分でした。それを数字にたとえて、「それぞれの時代に思い入れを持ってる人がいて、それは人それぞれ違うかもしれないけど、一旦それは置いてみんなで次に行こうぜ」というメッセージも込めているんです。「今も超楽しいよ」って。
ーーボーカロイドシーン全体へのラブソングでもある、と。
DECO*27:そうです。ただ、「Ⅰ」とも「Ⅱ」とも基本的にはコード進行が変わっていないので、その中で新しい曲を作るのは大変でした。これまでとは違う曲にしつつ、同じ雰囲気が感じられる曲にもしたかったので。そのバランスがすごく難しかったですね。今回のアルバムは、この「愛言葉Ⅲ」を筆頭にした最後の過去曲ラッシュの部分の楽曲が制作の最初の頃にできて、そのあと他の部分ができていった感じでした。なので、たとえば「妄想感傷代償連盟」にあった〈行き場のない愚者のメロディー〉という歌詞が、「愛言葉Ⅲ」では〈行き場のある愛のメロディー〉に変わっているように、この最後のセクションの曲で、まずは自分がそれまでやってきたことに決着をつけて、そこから新しい要素を加えた曲に挑戦していった形でした。
ーーそしてやはり、「愛言葉Ⅲ」は初音ミクへのラブソングでもあるわけですよね。
DECO*27:それはもちろんです。もう一緒に10年やってきた仲で、「不思議なパワーを持った子だな」と、今でも思います。
ーー出会った当時と今とで、ミクとの向き合い方に変化を感じる部分はありますか?
DECO*27:芯の部分は全然変わっていないですけど、ミクに対する自分の目線が変わってきたような感覚はあります。たとえば、出会った頃は自分と歳の近い女の子だったものが、途中から娘のような見え方になってきたりして。あとは、ミク自身も成長しているんですよ。僕はミクの調声をアルバムごとにちょっとずつ変えてきましたけど、それは「ミクもちゃんと上手くなってるね」ということを表現したかったからでもあって。だから、「愛言葉Ⅲ」や「ヒバナ」のようにすでに動画で出している曲も、今回のアルバム用に少し声を変えているんです。
ーーなるほど、これまでの作品をすべて聴くと、ボーカリスト・初音ミクの成長も分かるようになっているんですね。現在のボーカロイドシーンにはどんな楽しさを感じていますか?
DECO*27:めちゃくちゃ楽しいですよ。初期のボカロシーンはニコニコ動画内で盛り上がっていて、それはそれでとても楽しかったですけど、今はニコニコ動画だけではなくて、YouTubeやBiliBili動画、Twitter、微博(weibo)、nanaのように、色んな場所に広げられる可能性があって。プラットフォームごとに反応も違いますし、たとえば「ここで受け入れられそうな曲だな」と想像できた場合には、歌詞にもそのプラットフォームに寄り添った要素を入れていたりするんです。たとえば、「乙女解剖」の〈半目開きで娘娘する〉の〈娘娘〉って、実は中国語なんですよ。この曲は実際に、BiliBili動画ではダントツで人気の曲になっています。あとは、向こうでも意味が分かるように漢字タイトルにすることもあったりします。
ーー公開する場所が色んなプラットフォームに広がっているからこそ、色んな要素やカルチャーを混ぜることができるようになっている、と。
DECO*27:そうですね。それこそ、〈娘娘〉の部分は中国語圏の人にも楽しんでもらおうと思って入れた歌詞ですけど、それを日本のファンの人たちも「すごく印象に残る」と言ってくれていたりして。そんな風に、色んなところが繋がっているのかな、と感じることはあって、それが楽しいです。そういう意味でも、今は曲を作る感覚というか、思考が全然違ってきていると思いますね。最初の頃は「この曲を聴いてくれ!」という気持ちが100%で、本当にそれしかなかったんですけど(笑)、そこから自分を取り巻く環境が変化して、ミクも成長していって。今はより考えて曲を作るようになったと思います。そう考えると、今回の『アンドロイドガール』は、「僕の10年間を詰められた作品」ですね。そのうえで「まだ終わらないぞ」という気持ちでいるので、これからも楽しみにしていてもらえたらすごく嬉しいです。
(取材・文=杉山仁)
■リリース情報
6thアルバム『アンドロイドガール』
5月22日(水)リリース
初回限定盤(CD2枚組)¥3,000+税
通常盤(CDのみ)¥2,500+税
<収録内容>
01 Reunion
作曲編曲: DECO*27 & Rockwell
02 アンドロイドガール
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
03 スクランブル交際
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
04 モスキート
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
05 乙女解剖
作詞作曲:DECO*27 編曲:emon(Tes.) & Rockwell
06 人質交換
作詞作曲:DECO*27 編曲:emon(Tes.)
07 シンセカイ案内所
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
08 サイコグラム
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
09 夜行性ハイズ
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
10 ヒバナ -Reloaded-
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
11 愛言葉III
作詞作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
<初回限定盤 特典CD>
ボイスドラマ「妄想感傷代償連盟」
出演:浅沼晋太郎、雨宮天
脚本:内田裕基
■リリースイベント
5月22日(水)19:00開場/19:30開演
会場:タワーレコード池袋店6 Fイベントスペース
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&八三)
5月26日(日)13:30開場/14:00開演
会場:アニメイト渋谷
内容:サイン&握手会(DECO*27&akka) ※トークなし
6月1日(土)11:30開場/12:00開演
会場:第3太閤ビル(名古屋)
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&Yuma Saito)
6月1日(土)15:30開場/16:00開演
会場:animate O.N.SQUARE HALL(大阪)
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&Yuma Saito)
6月2日(日)13:30開場/14:00開演
会場:タワーレコード福岡パルコ店
内容:トーク&サイン&握手会(DECO*27&DMYM)
DECO*27 Twitter
『アンドロイドガール』特設サイト