[ALEXANDROS]、なぜ多くの映画主題歌を担当? 『ゴジラ』×新曲「Pray」を機に考察
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[ALEXANDROS]が5月17日、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演し、新曲「Pray」を披露する。同曲は5月31日公開予定の映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の主題歌である。
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川上洋平(Vo/Gt)は、主題歌決定について「本当にゴジラが好き過ぎて頼まれてもないのに主題歌を作って東宝さんに送るという暴挙をはたらいたこともありました(“kaiju”という曲です)」と、長年のゴジラ愛を明かしている。新曲「Pray」は依頼を受けてから書き下ろされたもので、「到着まもないラッシュを鑑賞させていただいた直後ぐらいにはもうすでに曲全体のフラッシュアイデアが閃き、早速着手し始めました。あとはもう映画のムードに誘き寄せられるようにアレンジも出来上がって行きました」と、語っている(参考)。
川上といえば無類の映画好きで知られている。ラジオ『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)では、昨年2018年に見た映画本数は111本にのぼると語り、これでも例年より少ない方だという。オフィシャルブログ「あれきさんどろす日記」では、“カワカミー賞”という本人曰く「世界で1番小さな映画の祭典」を開催し、「ベスト悪役賞」まで紹介するほど熱が入っている。
川上の映画好きに応えるかのように、[ALEXANDROS]はこれまでも数々の映画の主題歌を担当してきた。最近では、昨年7月に公開された実写映画『BLEACH』に、主題歌「Mosquito Bite」と挿入歌「MILK」の2曲を提供した。「MILK」は、楽曲制作のため渡米する直前、完成前の映画をメンバーが観た際に、あるシーンのイメージに合う楽曲があると、その場で川上の携帯に入っていたデモ音源を佐藤信介監督と一緒に聴き、急遽挿入歌の起用も決定したという。主題歌の「Mosquito Bite」は、「お前の攻撃なんて蚊に刺されたくらいだぜ」という意味も込められており、映画を最初に見た時の“へこたれねえぞ”という感情とマッチさせたという。佐藤監督は、「作品が完成する前にアーティストさんと一緒に完成前の映画を観て、楽曲の話をしたのは初めてでした」と語り、口ずさみながら映画制作を進めたそう。監督は「一発のリフがこの映画を変えた気がしています」ともコメントしており、楽曲が映像に大きな影響を与えた瞬間が『BLEACH』にあったというのは興味深い(参考)。
2016年夏には、ジャングルの王の活躍を新たな視点で描く『ターザン:REBORN』の日本版主題歌として、「Nawe, Nawe」を書き下ろした。「Nawe, Nawe」とは、アフリカの言葉で“With You=あなたと共に”という意味で、歌というよりサントラの気持ちで仕上げ、川上の映画愛を、ここぞとばかりに詰め込んだという。デイビッド・イェーツ監督も「この映画のターザンが持つ二面性を表現し、音楽を通してこの映画の世界観が壮大に美しく描写されている」と絶賛していた(参考)。
[ALEXANDROS]というと、英語歌詞を絡めたクールなロックバンドのイメージだが、元々彼らは路上ライブをするなど、良い意味で“泥臭い”経験も持つ。川上自身は9歳から14歳までをシリアで過ごし、大学卒業後は会社員として働くなど、色濃い人生経験を持つ人物だ。
映画というのは、人間の人格や生き様を浮き彫りにするものでもある。そして、その主題歌は、多くの場合、映画の根幹の世界観を支え、彩るものであることが求められる。映画の主題歌制作とは、映画の物語と自分(バンド)自身の物語を繋げる作業であり、そこには本人の経験や、思慮、読解力などが強く影響してくるだろう。すぐにデモ音源を提案したというエピソードからもわかるように、彼らは映画のテーマを素早く咀嚼し、自分自身の音楽と繋げる作業が得意なのだろう。そのような点からも[ALEXANDROS]は、非常に映画主題歌に向いているバンドであると言えると思う。映画に寄り添いながらも、[ALEXANDROS]らしさを忘れない。そんな映画主題歌を、これからも期待したい。(深海アオミ)