つるの剛士がベストアルバムで振り返る歌手デビュー10周年「夢見たことが全部できてる。こんなに楽しいことはない」
音楽
ニュース
つるの剛士がアーティスト活動10周年を記念したベストアルバム『つるの剛士 ベスト』を発売した。これまでカバーしてきた日本の名曲たちに加え、オリジナルソングの代表曲も収録した2枚組アルバムについての思いと、アーティスト活動10周年を振り返って感じることを聞いた。
やりたいことは全部やれてる。幸せな人生なんです。
─── 歌手デビュー10周年を記念したベストアルバム『つるの剛士 ベスト』は、2枚組全32曲というかなりのボリュームになりましたね。
つるの剛士(以下、つるの) 本当は28曲の予定だったんですよ。14曲ずつ入れようと思っていたけど、あれも入れたい、これも入れたいってやっていたら、32曲になってしまって。だから曲間がすごく短いんですよね(笑)。
─── 本当にギリギリまで詰めこんだんですね(笑)。DISC1はカバー曲がメインですが、村下孝蔵さんの「初恋」と、プリンセス プリンセスの「M」を新録されていて。
つるの 「初恋」はライブで歌っていたので今回収録しようと。「M」は10年前に歌わせてもらってから、どこに行ってもこの曲のことを言われていたんですよ。ありがたいことに、岸谷(香)さんも、富田(京子)さんも、「つるちゃんにあげる!」って言ってくださったりして。作ったアーティストの方から太鼓判を押されているのもあって、自信を持って歌えていたところもあるんですよ。だから、10年経ったし、改めて歌い直してみようと思ったんですけど。
─── 歌ってみていかがでしたか?
つるの 歌ったものを聴いて気づいたことが多かったですね。成長と言うとおこがましいですけど、自分の10年間はこんな感じだったんだなって。今でもストレートに歌っているんですけど、歌い始めの頃って、本当に混ざりっ気なしのストレートだったんですよ。ただ歌いたいから歌うみたいな。それは良くも悪くですけど、今はあの頃みたいな感じでは歌えないし、今カバーをやろうって言われたら、絶対にやらないと思う(笑)。あの当時はいろんな意味で天然だったんでしょうね。
─── とにかく歌いたいという気持ちが先走って。
つるの そうそう。とにかくその気持ちだけでやっていたんだなって。なんか、魔法をかけてもらえたというかね。カバーの妖精が耳元にやってきて、「カバーやりなよ」って囁いてくれたから、勘違いしてやれたところはありますね。
─── オリジナル曲をまとめているDISC2にも、新録が3曲収録されています。まず「メダリスト2020」は、2010年に発表された「メダリスト」を基になっている曲で。
つるの 元々「メダリスト」は「世界柔道」のテーマソングを作ってほしいというお話があって、そこから作った曲だったんですよね。ライブでずっとやっていたのもあって、自分のオリジナルの代表曲みたいなところがあったし、来年は東京オリンピックもあるし、歌詞もぴったりだなと思って。でも、せっかくだから新しいことをしてみようと思って、Dメロをくっつけて、ちょっとゴージャスな感じにしてみました。
─── 10年前にこの歌詞を書いたときはどんなことを考えていましたか?
つるの この頃は一曲一曲にすべてを出し切っていたから、他の曲の歌詞を書こうとすると、(内容が)かぶちゃってたんですよね(苦笑)。そこには困っていたけど、改めて読み返してみると、10年経っても自分の言いたいことってあんまり変わってないんだなと思いました。あの頃はこういう感じだったというよりは、自分が言いたいことはこれなんだなって。
─── これがつるのさんの軸なんですね。「はやぶさ2」は、タイトルの通り、小惑星探査機のはやぶさ2をモチーフにされていて。今作にも収録されている「はやぶさ」と兄弟的な楽曲ですね。
つるの この曲を作ることは、はやぶさ2が飛び立つときにもう決めていたんですけど、この前タッチダウンがあったじゃないですか。その3日後にこの曲のレコーディングしていたんですよ。で、まだ完成していなかったけど、「勝手に応援ソングを作っちゃいました!」みたいな感じで、勝手にSNSで公開しちゃったんですよね(笑)。とにかく大好きなんですよ、はやぶさが。
─── どんなところが好きなんですか?
つるの やっぱり還ってくるときのあのドラマですよね。はやぶさが地球に還ってきたときの姿に超泣けて、気づいたら曲を作っていたんですよ。だから「はやぶさ」は、自分が本当に作りたかったから作った曲なんですよね。自分の溢れんばかりのはやぶさ愛が形になったという。でも、JAXAが全然食いついてくれないんですよ……。困ったもんですよ、ほんとに。
─── こんなに好きなのに!っていう。
つるの そうそう。こんなに熱く歌っているのに、なぜ振り向いてくれないんだ!っていう(笑)。もちろんはやぶさのことを知らなくても、その人にとっての応援歌になればいいなと思って作ってました。
─── もう一曲の「ヒカリノキズナ」は『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』の主題歌になっていて、作詞をつるのさん、作曲をDAIGOさんが担当されていますけども。
つるの この曲は大変でしたね。DAIGOが作曲するのかどうなのか、なかなか決まらなかったんですよ。だけど締切がどんどん近づいてきて、残り1週間でもうやばい!っていうときにDAIGOからようやく届いたんですけど、それが鼻歌だったんですよ(笑)。でも、書かないと間に合わないから、曲の構成とか何も決まっていない中で、きっとこういう感じになるんじゃないかなって、その鼻歌を聴きながら、自分で勝手にイメージして書いていたんですけど。
─── DAIGOさんとこういう曲をしようみたいな話し合いとかはなかったんですか?
つるの まったくなかったです。映画の監督とはいろいろ話しましたけど、この曲を作っているときにDAIGOと会ったのは歌入れのときだったので。そのときに出来上がったね!って2人で握手して、(DAIGOのモノマネで)「いやあ、よかったっすよねえ、つるさ~ん。マジでよくないっすかあ〜?」って。でも、“結果良ければ”ですよ。監督の言いたかったことも入れられたし、あとは自分がウルトラマンなので、未来に対しての思いとか、後輩への思いとか、すべてをいいバランスで入れられたので。いい曲にできてよかったです。
10年前、勘違いから始まった歌手活動。これからも歌い続けたい。
─── 歌手デビューからこれまでを振り返ったときに印象的だった出来事はどんなものがありますか?
つるの 気づいたらいろんなところでライブをやらせてもらうようになったんですけど、僕は音楽一本でやっている人ではないので、他のアーティストのみなさんとはちょっと違うんですよね。そこは自分でもよくわかっているところなんですけど。
─── といいますと?
つるの 去年ツアーで47カ所まわったんですけど、会場のお客さん9割が僕のことを初めて観た人だったんですよ。だからすごく新鮮な気持ちでできたし、単線しか走っていない街の市民会館とかも回っていたから、テレビに出ている人が自分の地元に来るっていうので、近所の人がネギを持ってくるような感覚で来てくれて。それが僕もめちゃくちゃ楽しかったし、みんなも喜んでくれてよかったなって。これが普通のアーティストだったらそうもいかないと思うんですよ。でも、僕は他の方々とは違う姿勢で行きたいなって思っていたところもあったし、そこは僕の特権でもあるなと思ってますね。そうやって全国を回ったときに来てくれたお客さん達が、また今度のツアーに遊びに来てくれると嬉しいです。
─── そうですよね。7月には「つるの剛士 25周年記念ライブツアー ~25th☆10th~」が控えていて。それも踏まえて、これからどんな活動をしたいですか?
つるの 僕は芸能界でいろんなことをやらせてもらっていますけど、歌というのは、自分の表現ツールのひとつになっていて。10年前に勘違いして始まったものかもしれないけど、これからも歌っていきたいですね。これまで誰かに歌を教わったことはないんですけど、逆に歌の勉強をしていない強みもあると思いますし。そういう自分にしかない強みを自分の中で持ちながら、そのとき自分がやれることをやって、みんなに喜んでもらえればいいなと思ってます。
─── そして、今年は芸能生活25周年でもあるわけですけども。
つるの 気づいたら四半世紀ですよ(笑)。本当にありがたいなあ。夢見た芸能界に入れて、ウルトラマンにもなれて。こんなに楽しいことないもんね、ほんとに(笑)。別に“これを頑張りました!”みたいなこともないし。
─── いや、頑張ってらっしゃると思いますけど。
つるの いや、そう言ってくれるけど、全然頑張ってないのよ、本当に(笑)。もちろん“今日は頑張ったなあ”って思うときはあるけど、お酒飲んだら忘れちゃうし。感謝しかないですよ。今のところやりたかったことは全部できているし、子供も5人いて、可愛い奥さんもいて、最高だなと思って。なんかごめんね?(笑)
─── いえいえ(笑)。素敵だと思います。まだ叶えていない夢はあるんですか?
つるの いっぱいあるけど、究極は笑って死ねたらいいなって。生まれてくるときって、自分は泣いてみんなは笑っているけど、自分が死ぬときは、自分は笑ってみんなが泣いているような人生が送れたらいいやって思ってるから。もちろんやりたいことはまだまだいっぱいあるんだけど。
─── 一番遠くにある夢というか、叶えるのが難しそうな夢ってなんですか?
つるの 言わないよ、それは(笑)。でも、近い夢だと、子供達を早く社会に送り出して、奥さんと2人になりたいね。前に子供達を親に預けて2人で電車旅をしたんだけど、それがすごい楽しかったの。子供達がいなくなったらこれができるのか!って。
─── 早く育ってくれと(笑)。
つるの うん。だって、旅番組のレポートとかやってるのはそのためだから。あれはロケハンだからね?
─── いつか2人で一緒に行くときのための?
つるの そう、全部ロケハン。ここに行ったら楽しいだろうなとか。だから子供達にはチャッチャと出て行ってほしい(笑)。自分が好きなことを目指して社会に出たように、子供達も自分の好きなものを見つけてもらって、早く出て行ってもらうのが親としての夢だからね。
─── 素敵ですね。本日はありがとうございました!
(撮影/杉映貴子、取材・文/山口哲生)
フォトギャラリー(6件)
すべて見る