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なつは“赤の他人”から“泰樹の一番弟子”へ 『なつぞら』柴田家に雪解けの日が訪れる

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 「それでこそ、赤の他人じゃ」

 第2話にて生きるため、「ここで働かせてください」と言う幼少期のなつ(粟野咲莉)に対して泰樹(草刈正雄)がかけた言葉だ。「ちゃんと働けばいつか報われる日が来る」と小さいながらも懸命に生きようとするなつに教え、なつを一番近くで見守ってきた。そして泰樹の元で酪農を学び、農業高校まで進み、“泰樹の一番弟子”と言われるまでに成長したのだ。

 そんな2人の愛ゆえのすれ違いが続いたここ1週間はとても苦しかった。なつ(広瀬すず)に結婚の話を持ちかけ、本当の家族になろうとした泰樹。酪農と泰樹を裏切って東京に行こうしている自分を許せないとするなつ。お互い自分の起こした裏切りの後ろめたさに苛まれている。

 前回の最後にて、「東京でもなんでも行ってくりゃいい。いつでも帰って来りゃええ」と泰樹は東京行きを許可する。だが、気持ちが晴れないなつはとよ(高畑淳子)にそんな気持ちを打ち明ける。「わがままで選んで何が悪いの」「言いたいこと全部言えばいい。我慢して言い合えなければ、ここでは心までしばれてしまうんだわ」と激励するとよ。なつと泰樹2人とも知り尽くした存在だからこそ、2人へ雪解けの言葉をかけることができたのだろう。

 そして、遂になつは東京に行きたい本当の理由を泰樹に打ち明けた。「私、じいちゃんみたいになりたかったんだって。酪農を、じいちゃんを裏切ってでも私はやりたい」と語るなつに対し、泰樹は「それでこそ、わしの孫じゃ」と激励する。9年前の”赤の他人”は、開拓者精神を受け継いだ“孫”へと変化していた。

 なつはこれから東京へ、生まれたばかりのアニメーションの世界へと旅立っていく。酪農でいのちを学んだなつ。泰樹の元で学んだことが今後の彼女の活躍に繋がっていくのだろう。

 最後には、なつがことの顛末を嬉々として天陽(吉沢亮)に語る。朝焼けを浴び、慈愛と悲しさが入り混じったような表情を見せる天陽がどこか神々しさすら感じさせた。別れの時が確実に近づいている。

(文=安田周平)