【インタビュー】名作映画『髪結いの亭主』が安田章大主演で初の舞台化!
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インタビュー
安田章大 (撮影:石阪大輔)
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すべて見るパトリス・ルコント監督の代表作『髪結いの亭主』。理容室の女と結婚することを夢見ながら大人になった男と、運命的に出会った女との幸福で、官能的な日々を描いた傑作だ。日本でもファンの多いこの作品を、初めて舞台化。「劇団普通」の石黒麻衣が脚本・演出を担い、舞台を1950年代の茨城に変え、新たな物語として紡ぎ出す。そこで主人公の男を演じる安田章大に、初タッグとなる石黒との創作に対する期待を語ってもらった。
――フランス映画の名作『髪結いの亭主』を、劇団普通の石黒さんが脚本・演出を手がけ、その主演を安田さんが務められます。意外な組み合わせが実現しましたが、その経緯から教えてください。
安田 劇団普通さんの舞台は、ただ好きで観に行っていたんです。「人間ってこんなんよな」っていう、世の中に起きていることがそのまま投影されているのが、劇団普通さんの面白さ、演劇のギミックだと感じて。最初は『写真』(23年)という、お客様が50人も入ればいっぱいの公演だったんですけど、終演後に僕のほうから石黒さんに話しかけたんです。「どういう稽古をしているんですか?」とか、「どれくらい稽古されるんですか?」とか。ご本人は「なぜ来てくださったのですか!?」みたいな感じでしたけど(笑)。『髪結いの亭主』に関しては、舞台化の権利を持っている方が日本での上演を模索されていて、その中で「石黒さんにお願いしたい」ということになり、そこから石黒さんが僕の名前を挙げてくださった、という流れみたいです。
――上演までのルートも意外でした。お話をいただいた時の心境は?
安田 僕も意外だったんです。「僕でいいんだ?」みたいな。ただ好きで観に行っていただけですから。でも最終的には、「やるべきでしょう」というところに辿り着きました。

――今回は舞台の設定を1950年代の茨城に変更しています。まさに石黒さんらしい作品になっていると思いますが、と同時に、『髪結いの亭主』であるべきなのか? という疑問も残りました。
安田 『髪結いの亭主』という作品は、自分の感情が満たされていると気づいた時に消えてしまうかもしれない。そして愛されなくなってしまうかもしれない。だからこそ一番幸せな状態のままでありたい。それゆえに……というのが映画版ですよね。ただこの舞台版では、そのフォーカスの当て方がちょっとだけ違うのかなと感じていて。
――フォーカスの当て方が違う、とは?
安田 石黒さんがこの作品に、自分なりの人生観を投影している、ということでしょうか。どちらかというと石黒さんは、普段から大きな声で喋るわけでもないですし、主張もし過ぎない。だけど絶対に思っていることはあって、でも言わないんです。実際、打ち合わせをした時がそうでしたもん。僕が「言いたいことがあれば言ってくださいね」と言ったら、「いやいや」と。で、あとでスタッフさんに聞くと、やっぱり言いたいことがあったらしくて。ほんなら言おう!って(笑)。
――(笑)。そんな石黒さんが、この作品には自らの人生観を投影されている、ということですね。
安田 ええ。ただこの原作をいじること自体、すごく難しいと思うんです。自分の感情を入れ込み過ぎると私情になるし、私情を入れ込み過ぎると作品が大きく批判されることになる。「『髪結いの亭主』はこんなんじゃない!」と。そこで石黒さんは、ラストの女性の言葉をちょっと変えたり、映画版ではとても短い理容室の客たちの会話に、自分の言葉を書き足すことで感情も入れ込んでいる。つまり、より具体的な言葉を加えることで、日常会話が連ねられていく、というか。石黒さんがやる必然性は、そういったところにあるのだと思います。
――なるほど、腑に落ちました! そして安田さんが演じる男ですが、映画版では非常にユニークで愛情の強い人物ですが、今回の舞台版ではその点でも大きな違いがありますね。
安田 そこは僕も石黒さんに質問したいと思っていました。映画版では男性が女性に対する愛の表現についてフォーカスが当てられている一方、舞台版では男と彼の兄との間に生まれる関係性や、“生と死”みたいなもののほうが強く表現されている。それゆえの儚さとか、脆さとか、憎しみがあるけれども、だからこそ人を愛す、みたいな。つまりは“人間愛”のようなものに集結されている気がするんです。
――映画版の特徴のひとつである、エロス的な愛だけではない、ということですよね?
安田 ええ。ですから舞台版では、エロス的な要素がほぼほぼカットされていて。そこを表現しないことによって、余計に相手との関係がこじれて見えるというか、想像させられる。そしてそれは演劇の醍醐味でもあって。答えをすべて出さない、というのかな。まぁ石黒さん自身、もしかしたらそういう描写が好きじゃないのかもしれないですけどね。ただそれを表現しない、ある程度のところまでで止めることによって、自分の中でフォーカスしたいところがしっかりと定まっている、ということなんだと思います。

取材・文:野上瑠美子 撮影:石阪大輔
ヘアメイク:山﨑陽子
スタイリスト:DOREMI
<公演情報>
PARCO PRODUCE 2026
『髪結いの亭主』

原作:映画『髪結いの亭主』(監督=パトリス・ルコント 脚本=パトリス・ルコント、クロード・クロッツ)
脚本・演出:石黒麻衣(劇団普通)
出演:
安田章大 中村映里子 丸山智己 占部房子 村木仁
用松亮 浅井浩介 武谷公雄 中山求一郎 香月彩里
【東京公演】
2026年9月28日(月)~10月25日(日)
会場:新国立劇場 小劇場
【広島公演】
2026年11月5日(木)・6日(金)
会場:JMSアステールプラザ 大ホール
【大阪公演】
2026年11月12日(木)~20日(金)
会場:森ノ宮ピロティホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kamiyuinoteishu/
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