金髪ヤンキー役への挑戦と、尽きない好奇心。奥平大兼が明かす瑞々しい役作りの舞台裏
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奥平大兼 (撮影/稲澤朝博)
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すべて見るこの夏、NHK夜ドラ「税金で買った本」で連続ドラマ初主演を飾る奥平大兼。税金で買った本=公共図書館の本で公共サービスや本の価値を描くライブラリーヒューマンコメディーだ。奥平が演じるのは、ふとしたことから10年ぶりに図書館を訪れたヤンキー高校生の石平紀一。「図書館でアルバイトを始めたことから、本や人との出会いを通じて成長していく姿を見届けて欲しい」と本作の意気込みをたっぷり語ってくれた。
ザ・ヤンキーな髪型に現代の若者感をプラス――共通する「旺盛な好奇心」を軸に作り上げた石平紀一像

知っているようで知らないことが満載の図書館お仕事漫画をドラマ化した「税金で買った本」で連続ドラマ初主演を務める奥平大兼。ヤングマガジンの人気連載が原作でアニメも決定。昨年9月放送の夜ドラ「いつか、無重力の宙で」出演に続き、この夏夜ドラに挑む。
「漫画が原作ということで、オファーをいただいてから作品を読ませていただきました。ビックリするぐらい個性豊かで魅力的なキャラクターたちの会話劇や人間模様が面白いですし、勉強になるような図書館の中のことが描かれていて、ものすごく興味深かったです。僕が演じる石平紀一という人物の成長を通して、本が持つ力や図書館という場所の奥深さを観ている人に届けられたらなと思います」
主人公は、ケンカが強いヤンキーということで、役作りでは二度目の金髪に。図書館でアルバイトすることになる高校生役で初めてのヤンキーキャラを演じる。
「3年前に映画『ヴィレッジ』で演じたのは、金髪にタトゥーが入っているようなアングラな役を演じたことはあったんです。原作だともう少し髪が短くて、キンキンな金髪なので迷ったんですけど。原作は今の若者感とかけ離れたザ・ヤンキーだったので、髪型にも全体にメッシュを入れて今っぽさをちょっと取り入れてみました。紀一というキャラクターはもちろんヤンキーではあるんですけど、意外と図書館の中では、好奇心が旺盛な自由な子というイメージの方が強くて。気になることがあればその答えを知りたいと追求するような純粋な子だと思いました。だからこそ、図書館の個性豊かなキャラクターの中に入れるのだろうなと思いましたね」

演じる石平紀一は、ヤンキー高校生でケンカに強いが、根は素直で好奇心旺盛なキャラクター。本と出会って知る喜びを味わえる図書館で働くうちに少しずつ変わっていく役どころだが、共通点はあるのだろうか。
「紀一とは年齢は近いのかなと思います。好奇心旺盛というところで言えば、紀一のほうは行き過ぎてるところもあると思うんですけど。僕も知りたいことがあったら、とことん調べます。だから知りたいという気持ちが強いというところは、共感できますね。あと、紀一は結構、肝が据わってるんですよ。すごく真剣にいろいろ考えた結果、いろんなことを気にして、結局やらないという人も多いじゃないですか。でも、紀一は気楽にやりたいことに挑める性格なので、見習うべき良いところだなと思いましたね」
監督やスタッフさんと相談して、現代のヤンキーに見えるように台本の台詞も今っぽさを出すなど、役を自分のものにして演じた。
「台詞はちょっと若者言葉にしていますね。今回、記録を担当する方が僕と同じ奥平さんなんです。僕より全然年上の方なんですが、初めて同じ苗字の方に会いましたね。何でも略すような若者言葉が分からないということで、奥平さんから『きーちゃん、これどういう意味?』って何回か聞かれて、『こういう意味だよ』と教えたこともありました(笑)」
不安を乗り越えた初の明るい役どころと、ささやき声が行き交う穏やかな撮影現場

主人公が成長していくヒューマンドラマで今まで演じたことがない明るい役に挑むということで、最初はどう演じようか不安もあったという奥平。
「紀一と一緒に図書館で働く早瀬丸小夜香さんと白井里雪さんというキャラクターがいるんですけど。その3人が揃うと、僕以外のふたりが落ち着いたトーンで喋ることが多いんです。その中で僕も落ち着いちゃうと、見ていて抑揚がないかなと思って。だから最初は僕が行き過ぎてもいいから、ちょっと明るくお芝居の中でふたりと接しようとしたんです。そういうお芝居をやったことがなかったから、すごく不安だったんですよ。監督と相談をして、いざやってみたら、だんだんテンション感が掴めてきたので、良かったですね。3人で居る時の掛け合いも気楽に演じられました」
明るいキャラクターとしてのアドリブも最初は戸惑ったというが、すぐにテンションを掴むことができたと話す。
「最初はアドリブを入れる勇気がなかったですし、怖かったんです。青木マッチョさんとのシーンでは、まだあまりお芝居を一緒にしてないのに僕が変なことをしたら、困っちゃうのかなと思って。でも、本番で急にアドリブを入れることあったんですが、マッチョさんの胸を借りて、やらせていただきましたね」
今回が初めての主演作。座長として意識したことを尋ねられると「僕は全然ムードメーカータイプじゃないので。キャストの皆さんと一緒に作り上げました」と肩肘張らずに現場にいることを明かしていた。
「撮影現場は、穏やかで明るい雰囲気なので、すごく居心地いいんですよね。ゆったりと話すような方が集まったので、現場ではささやくように皆ちっちゃい声で話しています(笑)。そんな空間もいいなと思いましたし、座長としてムードメーカーをやらなきゃとプレッシャーになることもなく、現場にいることができました」
撮影現場の図書館では気になる美術の本を手にとってみたり、共演者の皆さんと談笑したり、穏やかな時間を過ごしていたという。
「西野七瀬さんは年が離れているので、どんなお話をしたらいいのかなと思っていたんですけど。西野さんは映画『90メートル』で監督の中川駿さんと一緒だったんですよね。僕も中川さんとご一緒させていただいたことがあるので、監督の話をしたり。マッチョさんとは筋トレの話で盛り上がりました。あと、現場で塗り絵が流行っていたんですよ。ヘアメイクさんが持ってきてくれた塗り絵を空き時間に皆でやるっていう時間がありました。やってみたら、塗り絵って面白くてハマりましたね」
知るほどに面白い図書館のルールと、タブレットが飛び交った学生時代の試験勉強の記憶

図書館のお仕事にはさまざまな決まりがあり、職員たちが利用者のために日々奮闘している。図書館にある様々なルールを、今作を通して知ったという奥平。
「いちばん便利だなと思ったのは、いろんな種類の本がある中、振り分けられた番号です。 例えば、総記、哲学、歴史、芸術、産業、文学とか、分類されていてそれぞれ番号が振られている日本十進分類法というのがあって。それはドラマの劇中にも出て来るんですけど、そんなの今まで気にしたことがなかったので、ビックリしましたね。その分類記号は全国共通のものなんです。大体どこにどんな本があるか、配置を図書館で働く人はだいたい把握していることが、すごいですよね。あと、撮影が終わった後に共演者のみんなと話してたんですけど、図書館で本を取り出す時の正しい持ち方もあるんですよ。本の形が崩れないようにやってはいけない持ち方もあって。一回そういうことを覚えちゃったら、今度から本を取り出す時に間違った持ち方が出来ないですね。知っていくといろんなルールがあって、面白いなと思いました」
ちなみに原作で好きなのは、主人公が働く図書館の若手女性職員の茉莉野美波が描かれる場面だという。新しくやってきた正規職員で、自分勝手な言動で問題を起こすキャラクターなのだとか。
「職員の人たちからヤバい奴みたいに扱われている茉莉野ですけど、僕は結構好きなんですよね。非正規職員とぶつかる横暴なところが描かれるエピソードがあるんですけど、それが個人的にはすごく好きです。 紀一と他の職員さんって仲は良いですけど、白井里雪に関してはちょっとバチバチなところがあるんです。でも、茉莉野に関しては、皆で結託してどうにかしてやろうってなるところが、いつもと違った雰囲気があって、面白いんですよね」
紀一は10年ぶりに図書館を訪れる役だが、奥平自身も図書館に行く機会はなかなかなかったという。図書館の思い出を尋ねると、読書を楽しんだ場所ではなく、勉強する場所だったそうだ。
「学生時代は試験勉強をする場所でしたね。高校生の時に全員にタブレットが支給されて持っていたんですよ。授業中のプリントもタブレットで配布されるんです。試験前は、図書館で友達からタブレットのプリントをメッセージアプリに送ってもらったりしていましたね。目の前にいるのに『これ、送ってくれる?』みたいなやりとりをしていたので、イマドキだなと自分でも思います(笑)」
ロケ撮影でいろんな図書館に足を運ぶようになって、「その図書館ならではの色があって面白い」と発見があったと目を輝かせる。
「例えば、美術系の本がものすごく充実している図書館があったり、扱っている本が図書館によって違うのが面白いですよね。例えば、渋谷の図書館なら渋谷に関する歴史的な資料や地形的な郷土資料もあるらしいんです。自分が住んでいる場所について知ることができるのも面白いなと思いました。学生時代に試験勉強をしていた図書館や自分の家の近くには一体どんな本かが置いてあるところなのかという目線で行ってみたいです。読んでみたいのは、図鑑や美術系の本。自分の家にも服の本や絵画の本を持っていて好きなので、気になりますね」
アートへの愛着、中学生時代の洋服屋での原体験――SNSだけに頼らない、人との会話で深める知識

これまであまり本に触れてこなかったという奥平にとって思い出の一冊を尋ねると、絵画が好きだということでアートにまつわる本の名前が飛び出した。
「アートが好きなので、原田マハさんの本が好きなんですよね。初めて作者さんで本を読もうと思った作家さんなので、いろいろ読んでいますが、なかでも記憶に残っているのは、『たゆたえども沈まず』です。ゴッホと日本人の画商の林忠正さんとの出会いやゴッホの弟・テオの兄弟の話を綴った一冊で、アート好きな人におすすめしたい本です」
演じる紀一は、好奇心旺盛な役どころ。知りたいことは納得がいくまで人に聞いたり、調べたりしないとモヤモヤしてしまうタイプだ。奥平自身も知りたい欲が強いというが、どんな風に情報を収集するのだろうか。
「今は何でもSNSで調べたらすぐに分かるし、便利ですよね。それだとちょっと味気ないなと思うので、できるだけ専門的な知識を持っている人に聞いたり、詳しそうな人に教えてもらうようにしています。やっぱり人との会話の中で知識を深めていくのって楽しいじゃないですか。学生時代、僕の友人がバンドをやっていたので、音楽のことは、友達にいろいろ教わりました。その友人は、小さい頃から音楽に触れている子で。当時、僕らの間で昔のUKロックが流行っていたので、ロックの話で盛り上がりましたね。僕は完全に聴く側ですけど、友達は音楽を作っていたので曲作りの構造とか、マニアックな話もたくさん聞けて興味深かったです」
音楽を聴くことや絵、洋服が好きだという奥平。洋服のトレンドが知りたい時は、SNSでチェックするだけでなく、中学生時代から洋服屋で直接、見て、話を聞いて学んでいたのだとか。
「中学生の時は、原宿のお洋服屋さん行って、店員さんに『何が流行っているんですか?』って質問していましたね。高い洋服ばかりで、なかなか買えないのに店員さんと仲良くなって、いろんな話を聞くのが面白かったんですよね。当時の僕はガキンチョでしたけど、怖いもの知らずで。おしゃれな店員さんに対しても臆せず、いい意味で生意気にコミュニケーションをとっていたので、いろいろ親身になって教えてもらいました」
本作は、高校生が図書館でアルバイトを体験する話。学生時代にアルバイト経験がないという奥平が人生で一度はやってみたいアルバイトとは?
「おしゃれなカフェで働くのはちょっと恥ずかしいですし、飲食の接客業はハードルが高いような気がするので。コンビニかスーパーのレジ打ちをやってみたいです。いろんな商品があると思うので、商品棚に品物を定位置に並べるのは大変だと思うんですけど、幅広い年齢のいろんなお客さんがいると思うので、面白そうだなと思いますね」
最後にこの夏やりたいことを尋ねると、「同級生が就職して、社会人になったんですよ。去年や一昨年の夏は、友達が就職する前の最後の夏ということで、最後の夏休みを一緒に満喫していたんです。でも、皆働くようになって一緒に夏の休暇を過ごすこともできないと思うので、美味しい素麺でも食べたいですね(笑)。ネギ、生姜、大葉を薬味にして、冷たい素麺を食べて夏気分を味わいたいと思います」と、ニッコリ爽やかに微笑んだ。

撮影/稲澤朝博、取材・文/福田恵子
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<番組情報>
夜ドラ「税金で買った本」
8月24日(月)放送スタート
NHK総合 毎週月~木曜 よる10時45分~11時
※NHK ONEで同時・見逃し配信
番組公式サイト:
https://www.nhk.jp/g/ts/M6QR2KGJ11/
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