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マルコス浄瑠璃『金閣寺』制作発表会見レポート マルコスはじめクリエイターたちが語った創作への思い

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マルコス浄瑠璃『金閣寺』制作発表より 左から)マリア・アルナル、マルコス・モラウ、マックス・グレンツェル、シルヴィア・ドゥラニョー (C)渡邉肇

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2026年8月29日(土) に東京・東京芸術劇場 プレイハウスで開幕するBunkamura Produce 2026マルコス浄瑠璃『金閣寺』の制作発表が、8月17日(月)、東京・セルリアンタワー能楽堂にて実施された。演出・振付のマルコス・モラウ、音楽・歌を担うマリア・アルナル、衣裳のシルヴィア・ドゥラニョー、美術のマックス・グレンツェルが能舞台に登場、報道陣および抽選で招待された一般のオーディエンスを前に、創作にまつわるトークを展開、マリアによる一夜限りのライブ・パフォーマンスも行われた。

パリ・オペラ座をはじめ欧州の主要劇場で作品を上演し、世界的に評価を得ている演出・振付家、マルコス・モラウが、新たな“人形浄瑠璃”として表現する三島由紀夫の『金閣寺』。文楽の人形遣い・吉田玉助、歌舞伎俳優の中村壱太郎、尾上眞秀、アイドルの末永光が出演することでも話題を集めている舞台だ。

スペイン・バレンシアの出身で、2005年にラ・ヴェロナルを設立、振付家・芸術監督として数々の作品を手がけてきたマルコス。だが、多くの振付家がダンサー出身であるのに対し、マルコスは“元ダンサー”ではないという。「両親や祖父母がきっと私の中に種を蒔いてくれたのでしょう。18歳になり進路を選ぶことになったとき、最終的にダンス、芸術に辿り着きましたが、まさかこんな遠くまで来ることができるとは思ってもみませんでした。自分の中にダンサーとしてのコードがないことはハンディキャップでしたが、だからこそ、他人の身体を動かしていくことができる。それは一つのメリットでもあったのです。それが原動力となり、20年前にラ・ヴェロナルを設立、バルセロナに移り、いま、こうして東京まで自分のチームと一緒に来ているわけです」と自身のキャリアを振り返るとともに、ラ・ヴェロナルでともに創作を手がけてきたマリア、シルヴィア、マックスとの絆を滲ませた。

(C)渡邉肇

17歳から22歳の5年間が、自身にとって最も重要な時期だったとも。最初は映画、次に文学、写真、演劇、舞踊と様々なジャンルに興味を抱き、貪欲に吸収していった。22歳で大学へ進学した彼にとっても、それ以前に触れてきたものが大きな意味を持った。三島由紀夫もそうして出会った芸術家であり、マルコスに影響を与えてきた一人。2025年に生誕100年を迎え、再び熱い視線を集めている三島作品に、マルコスはどうアプローチしていったのだろう。

「このプロジェクトが始まる時、私たちは日本のいろいろなアーティストについて話し合いましたが、三島という提案があった時、自分の世界と相容れるものがあると思い、興味を抱いたんです。『金閣寺』はとくに重要な作品ですが、作品自体をそのまま舞台で再現するのではなく、作家にまつわる様々なことに触れ、舞台作品として新たなものを創り上げようとしました。
昨年、京都に連れて行っていただき、金閣寺を見ました。富士山の近くにある三島由紀夫文学館も訪問しました。また、翻訳された小説は、日本語の文章とはすでに違っているところがあると思いますが、スペイン語の『金閣寺』がインスピレーションを与えてくれました。主人公の溝口という人物をどう描き出すか、三島の言葉なしに、『金閣寺』の内容をそのまま再現することなしに、三島の『金閣寺』を表現する。そこに、創作のミステリー、魔法があるように思います」(マルコス)

(C)渡邉肇

『金閣寺』を表現する舞台美術、衣裳と身体表現

舞台美術を手がけるマックスが着目したのは、“灰”だった。「美は破壊され、死に、また美しさを求めて生まれ変わるという、一連の繋がりを表現したい」と語る。破壊され、灰となったその先に再び美が生まれる──。灰は、『金閣寺』の世界を舞台上に立ち上がらせる重要な要素となりそうだ。

衣裳については、「大きなスカートが身体の動きによって広がり、ダンサーの身体を拡張させていきます。ラ・ヴェロナルでは性別を区別しないので、男女で同じ衣裳にしているのですが、今回は男性と女性とである程度分けたほうがよいと思いました。歌手であるマリアの衣裳は硬質で、ダンサーたちの衣裳とは対照的になっています」と説明するシルヴィア。ラ・ヴェロナル作品において大きなスカートを用いるようになったのは、代表作『SONOMA』(2020)の頃からだというが、フラメンコで用いられる長いスカート、バタ・デ・コーラにも通じるものがあるそうだ。

(C)渡邉肇

さらに話題は、日本の伝統芸能およびアイドルの世界から集結したアーティストたちとのコラボレーション、その手応えにまで及んだ。マルコスは「西洋的な現代の舞踊と、伝統的かつ神聖な日本ならではのもの、まったく違うものとの出会いの洗礼を受けたわけです」と話す一方で、関節を意識した無機質な身体表現など、自身の振付と文楽人形の共通点にも触れた。「今回の舞台では文楽の要素はあえて40%ほどにとどめていますが、マリアの歌やダンサーたちとのバランスを考えたからです。そうしなければ、いわゆる日本のイメージのステレオタイプに陥ってしまうと思ったのです」とも。

また、アイドルである末永の抜擢について質問が寄せられると、「ここで彼の中に蒔かれた種は、後にきっと実ることになるでしょう。作品の中で彼は、「眠り」や「夢」といった精神状態の一つを体現します。心地の良い動きばかりではなかったかと思いますが、相応しい動きを見出せるよう、向き合ってきました」と若い末永への期待感を覗かせた。

最後にマイクを渡されたのは、この後ライブ・パフォーマンスを控えたマリア。バルセロナを拠点に活動、いくつものラ・ヴェロナル作品でマルコスとコラボレーションを重ねてきた音楽家だ。本作でも作曲と歌を担うが、竹本の作曲を手がける三味線奏者、鶴澤慎治とのコラボレーションに大きな手応えを感じている様子で、「彼のチームの歌唱や音楽のテクニックを学ぶことは素晴らしい経験。多くのインスピレーションを得ています」と振り返る。

(C)渡邉肇

結びに「『金閣寺』の楽曲は、マックスの美術、シルヴィアのスカート、マルコスの存在、ダンサーたちが揃ってこそ輝くと考えているんです」と語ったマリアは、続くライブ・パフォーマンスで自身のレパートリーから数曲を披露。木の温もりに包まれた能楽堂の空間は彼女の表情豊かな美しい歌声に満たされ、皆を至福のひとときへといざなった。

(C)渡邉肇

取材・文:加藤智子

<公演情報>
Bunkamura Produce 2026
マルコス浄瑠璃『金閣寺』

原作:三島由紀夫『金閣寺』
演出・振付:マルコス・モラウ

出演:吉田玉助 中村壱太郎 末永光 尾上眞秀
音楽・歌:マリア・アルナル
ダンサー:アキーレ・デ・フルーヴェ アダム・ラッセル=ジョーンズ エヴァン・ベスコン
イグナシオ・フィソナ シャケド・ヘラー チョ・ジョンイク ロレンツォ・チマレッリ
文楽人形遣い:吉田簑紫郎 吉田玉延
太夫:竹本拓太夫
三味線:鶴澤繁二

2026年8月29日(土)~9月6日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/marcos2026/

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