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主役は福山雅治じゃない!? 群集劇としての面白味を加速させる『集団左遷!!』へのエール

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リアルサウンド

 福山雅治主演の『集団左遷!!』(TBS系)が、折り返しとなる第5話を迎えようとしている。

 本部から突きつけられた廃店の運命を覆すべく、必死に走り回る片岡支店長を熱演する福山。大げさに驚いてみたり、全力で走ってみたりと、スタート当初から福山の「顔芸」を揶揄する向きもある。しかし、このドラマの場合、主人公のなりふり構わない必死な姿こそが物語のメッセージを伝える大事なメソッドであり、必要不可欠な要素。くしくも片岡と同年代である50歳を迎えた福山は、俳優として確実に新しい扉を開いた印象だ。いっそのこと蒲田支店総出で顔芸をすればいいとすら思う。

 ストーリー的には、それまで謎だった副支店長の真山(香川照之)が定時で帰る理由が第3話で判明。ようやくツートップの足並みがそろい、これから下克上が本格化していく、といったところ。第4話では横山常務(三上博史)のスパイだった花沢(高橋和也)が、彼の電話を無視したことで報復人事にあい、志半ばで蒲田支店を去ってしまう。夜の多摩川の土手で花沢を見送るシーンで、目に涙を浮かべながら励ましの言葉を贈った福山は、紛れもなく三友銀行蒲田支店の片岡支店長だった。

 また、かつてWOWOWで放送された『下町ロケット』(2011年)で、小さな町工場の経営者を演じた三上博史が組織側の人間として片岡たちの前に立ちふさがるのも、改めて絶妙なキャスティングである。片岡と横山が対峙するシーンは特別な緊張感が常に漂い、本作の見せ場の一つとなっている。

 『半沢直樹』(2013年)、『下町ロケット』(2015年、2018年)などの例を挙げるまでもなく、「日曜劇場」はこれまでにもさまざまな“群集劇”を私たちの前に提示してきた。『集団左遷!!』においても、旗振り役は片岡に相違ないが、部下である営業部員たちも負けないくらいの熱量で頑張っている。その意味で、もはや主役は福山雅治ではなく、すべての出演者である、と言っても良いのではないか。

 片岡たちに課せられた「100億円」というあまりにも大きなノルマ。達成できなければ問答無用で廃店。だが、もし達成できたとしても本部の決定を覆すことになり、決して無傷では済まされない。最後の最後まで予断を許さない展開を手に汗握りながら追いかける、これこそドラマの醍醐味だ。

 ドラマのなかのさまざまな出来事を「絵空事」と切って捨てることは至極簡単である。しかし、それならば人は何のためにドラマを見るのか。福山の演技にばかり気を取られていては、いつまで経ってもこのドラマの本質に到達することはできないだろう。

 視聴率が2桁から1桁のアップダウンを繰り返し、同枠の7月クールには原作・池井戸潤、主演・大泉洋の『ノーサイド・ゲーム』が控えていることが早々に発表されるなど、まるで蒲田支店のように厳しい戦いを強いられている『集団左遷!!』。そんな状況を重ねれば重ねるほど、今後の「頑張り」を応援せずにはいられない。(文=中村裕一)