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『あなたの番です』原田知世のために田中圭が動く 複雑化する“交換殺人ゲーム”の新たな要素とは

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 マンションという限られた空間の中からその周囲の人間へと飛び火し、ついにはフィクションであるとはいえ現実に存在する人物までもが“交換殺人ゲーム”のターゲットとなる。日本テレビ系列日曜ドラマ『あなたの番です』、5月19日に放送された第6話で全体の4分の1ほど物語が進んだことになるのだろうか。その範囲が広くなればなるほど、張りめぐらされた謎はあまりにも複雑化していく。久住(袴田吉彦)が名前を書いた「俳優の袴田吉彦」が殺され、久住が引いた紙に書かれていたのは菜奈(原田知世)が書いた元夫・細川(野間口徹)の名前。すべてを打ち明けられた翔太(田中圭)は、菜奈のためにゲームの真相を突き止めようと動きはじめる。

参考:田中圭が野間口徹と激突

 今回の難解な流れを汲み取るために、ここはあえてクライマックスから遡って考えてみるのも1つの手段かもしれない。102号室の児嶋俊明(坪倉由幸)のもとに、ゴルフバッグに入った死体が届けられた今回のクライマックス。おそらくその中には俊明の妻・佳世(片岡礼子)が入っているのだろう。彼女の名前を書いたことを北川(真飛聖)が菜奈たちの前で告白をしている。しかしこの段階で、“順番”が狂いはじめているとわかる。本来であれば久住が細川を殺す順番でなくてはならないからだ。

 例によって久住に届けられた「あなたの番です」という脅迫文。しかし気になるのは、同時にそれが浮田(田中要次)のもとにも届けられたということ。赤池美里(峯村リエ)の名前を書き、それを誰かに殺してもらったであろう浮田が子分たちと一緒に袴田吉彦を殺したのだと、冒頭のシーンからは推察できるが、それはあくまで推察に過ぎず、ミスリードだということなのかもしれない。そもそも浮田は前々回、菜奈たちに「赤池幸子」と書かれた紙を引いたと語っていた。そして赤池美里が夫とともに殺された前回、浮田の元に脅迫文が届く描写はなかったはずだ。だとすれば、シンイー(金澤美穂)たちが引いたのが袴田吉彦だったという可能性も考えられ、いつの間にか交換殺人ゲームは2つに分岐しているということになる。いずれにしても、すべてを把握している脅迫文の差出人と、佐野(安藤政信)や幹葉(奈緒)といった不穏な住人たちの素性、浮田たちがどこへ出かけているのかなど、まだまだ未解決な点は山積みだ。

 そんな中、劇中にはとても興味深いものが登場した。今回の終盤で菜奈と早苗(木村多江)を部屋に招き入れた沙和(西野七瀬)が作っていた、「誰の名前を書き、誰の名前を引いたか」という一覧表だ。次回そのおかしな点におそらく言及することになるだろうが、フライングしてしまうと、まず最初の住民会に参加したのは13人。必然的に13人の名前が書かれた紙が存在しているべきなのだが、今回までで誰の名前を書いたか告白している人物は9人。田宮と幹葉、そして最初に死んだ管理人の床島(竹中直人)が誰を書いたかはわからず、また赤池美里が赤池幸子を書いたかどうかは、それを引いたという浮田の発言からしか判断できない。

 ところが、すでに“引いた”名前として13人以上の名前が出てしまっている。最初の「管理人さん」、早苗が引いた「電車の席を譲らない人」、沙和が引いた「織田信長」、菜奈が引いた「こうのたかふみ」、北川が引いた誰の名前も書いていない紙に、石崎(三倉佳奈)が引いたと言っていた「吉村」。そして前回ゴミ捨て場から木下(山田真歩)が見つけたと言っていた「302の人」と書かれた紙。言うまでもなく、誰かが嘘を付いていることは間違いなさそうだ。

 これまで「誰が誰を殺したいのか」と「誰が殺したのか」という点で成り立ってきた本作に、新たに「誰が嘘をついているのか」という新たなミステリーが生まれるのだろう。もっとも「嘘」というものは、その先に「裏切り」や「許し」があって初めて物語の要素として成立しうるもので、それは今回の手塚夫婦と細川の関係性が明らかになるくだりからも見て取れる。この「嘘」が、さらに謎を深めていくことになるのか。いずれにしても、今後の推理において極めて重要なキーワードとして頭の隅に置いておく必要がありそうだ。 (文=久保田和馬)