SixTONES 松村北斗、松坂桃李と対の存在に 『パーフェクトワールド』で見せた深みある演技
映画
ニュース
「いつかこのドラマがただのありふれたラブストーリーになりますように」。車いすで生活する建築士の鮎川樹(松坂桃李)とその同級生の川奈つぐみ(山本美月)の恋を描いた『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)は、障害によって日常生活にもたらされる困難を真摯に取り扱っている。障害があるのは樹だけではない。樹の後輩として同じ設計事務所で働く渡辺晴人(松村北斗)もまた、障害を抱え義足で生活しているのであった。
5月14日に放送された第4話は、晴人の恋や、障害との向き合い方が描かれた回となった。晴人を演じる松村北斗は、晴人の障害に対するコンプレックスや、やりきれない想いを熱い演技で好演した。
松村はジャニーズJr.内のグループ「SixTONES(ストーンズ)」で活動するアイドルだ。現在23歳であるが、既に入所10年目を迎えておりキャリアもしっかりと積んでいる。松村は入所した次の日にはTV出演を果たし、Jr.内のグループでCDデビューも経験。常に人気グループに属してきたいわゆるエリートである。しかし、現在Sexy Zoneとして活動する中島健人、菊池風磨らと組んでいたJr.内のグループB.I.Shadowは上記2人のデビューによって事実上の解散。松村にとって挫折を味わう時期が続く。だが松村はめげることなく前を向いて努力を続け映画やドラマで活躍するJr.となった。出演作には三木孝浩監督の『坂道のアポロン』(2018)や『映画 少年たち』(2019)、テレビドラマでは『私立バカレア高校』や『SHARK』(共に日本テレビ系)などがある。
松村のこの経歴は、どことなく晴人を彷彿とさせるものがあった。今でこそ、建築士の資格を諦めようとしている晴人だが、樹の「障害受容なんて無理」というリアルな共感の声に前を向き始めている。さらに晴人は、第2話では樹を車いすバスケに誘う。はじめに樹に前を向くための手を差し伸べたのは晴人であった。そんな前向きに努力を続ける晴人を繊細に演じられたのは、松村が自分の力でキャリアを切り開いてきたことが活きたのだろうと感じる。
明るく快活な性格で、ムードメーカーとして描かれていた晴人だが、第4話で、どれほど自分が苦労してきたかを吐露する。晴人が想いを寄せているしおり(岡崎紗絵)との恋愛に苦戦していることも、苦しみに加担しただろう。しおりが「障害者とは付き合えない」と晴人を突き放すシーンでは、悲しみをこらえ、その言葉を受け入れるかのような表情を浮かべ涙を誘った。
晴人のキャラクターは、明るさと、心の奥に眠った悲しみをどちらも表現しなければいけないシーンがある。さらに激昂する時もあり、表現の振れ幅が大きい。松村はこういった感情的なシーンを一つ一つ丁寧に演じ、決して怒りや悲しみだけの単調な芝居にはしなかった。そこには“晴人”が積み上げてきた経験が透けて見えるような深みがあるのだ。晴人の芝居が際立つシーンをこなすごとに、しっかりと次に繋げてきた松村の手腕もあり、晴人というキャタクターは明るさ、悲しみ、もどかしさなどの複雑な感情も視聴者に伝えてくれた。本作が描く“障害”ということを樹とは違ったアプローチで表現しているのだ。樹が車いすで生活していることに対して、晴人は義足で生活している。さらに晴人は義足が他の人にバレたくないという思いがあることがわかるシーンも散見された。こうした違いも2人の演じる役を引き立てており、障害といってもそれぞれのポリシーがあることを感じさせている。
この作品を観ていると「いつかこのドラマがただのありふれたラブストーリーになりますように」という言葉のように、いつかは車いすということや、障害があるということが特別視されない世界がくればいいと感じる。その世界に向けての1歩は、この作品が放送されることにあるのではないだろうか。樹はもちろん、晴人の気持ちにも注目することで、樹だけでは見えてこなかった部分が浮き彫りになるだろう。2人のキャラクターのコントラストに注目しながら、同作品を楽しんでもらえればと思う。
(Nana Numoto)