『ラブライブ!』シリーズに新風吹き込む 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の魅力
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2017年に『ラブライブ!』シリーズの新スクールアイドルとして誕生した、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。結成から約2年を経て、この夏開催の世界最大のアニソンライブイベント『Animelo Summer Live 2019 -STORY-』(通称:アニサマ)への出演も発表された。しかし、彼女たちをメインとしたTVアニメの放送があったわけではなく、本格登場する予定のアプリ(※後述)も配信前のため、まだ彼女たちについてよく知らない方もいるはず。そこで今回は9人のこれまでの歩みと、彼女たちならではの魅力について考察。新たな試みでシリーズに新しい動きを巻き起こす姿を、ぜひ知っていただければ幸いだ。
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虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は、2019年配信予定のリズムアクションRPGアプリ『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバルALL STARS』で新登場が予定されている(※先行して、すでに『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』にも登場)新スクールアイドル。メンバーそれぞれがNo.1スクールアイドルを目指して活動しているため、実は“虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会”という呼称は、メンバー9人の全員曲を歌う際の便宜的な名義にすぎず、正式なユニット名ではない。この成り立ちが、まずμ’s、Aqoursといったグループを軸にしていたこれまでの『ラブライブ!』シリーズとの、大きな違いである。
また、毎月「マンスリーランキング」なる人気投票が実施されている点も、センターポジションなどの決定事の際に総選挙を行ってきた2グループと異なる点だろう。もちろんただ上位を決めるだけではなく、2019年は月間No.1のメンバーのスペシャルボイスが配信されているほか、『電撃G’s magazine』6月号からは本ランキングと連動した描き下ろし企画が開始されたりといった「ごほうび」も存在し、毎月盛り上がりを見せている。
ちなみに投票といえば、先日開催されたラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 ユニットマッチング投票 「2じが3いたら4ろしくね♪」で、初めて同好会内のユニットが正式結成。こちらも2人、3人、4人が各一組ずつと、「『ラブライブ!』のユニットといえば3人×3組」という先入観を取り払うものとなっており、今後の展開にも期待したい。
さて、そんなソロの9人が切磋琢磨するという背景もあってか、メンバーそれぞれの個性もこれまで2グループ以上に強いメンバー揃い。スクールアイドルへの想いが強すぎるがゆえに実はちょっぴり腹黒く、そのうえドジですぐいたずらがバレてしまう中須かすみ(CV:相良茉優)や、見た目や口調はギャル系だが人情にアツくておばあちゃんっ子な宮下愛(CV:村上奈津実)、感情を顔に出すことが苦手すぎて“璃奈ちゃんボード”への手描き(※ライブ時は電光ボードに変化)で表情でのコミュニケーションを取る天王寺璃奈(CV:田中ちえ美)など、いずれ劣らぬ強烈な個性を持っている。
その個性の強さは、もちろん性格だけにとどまらない。虹ヶ咲にとって初のリリースとなったアルバム『TOKIMEKI Runners』に収録されているメンバーそれぞれのソロ曲も、またエッジ立ちまくりの楽曲揃いなのである。たとえば朝香果林(CV:久保田未夢)のソロ曲「Starlight」は、セクシーで小悪魔な果林の姿を最大限反映したナンバー。スタイリッシュなサウンドはもちろん、シャープな歌声も含めて“朝香果林”像をくっきり浮かび上がらせている。また、ロッキンなナンバー優木せつ菜(CV:楠木ともり)の「CHASE!」にも、力強い歌声も含めて彼女のまっすぐなアツい想いが投影されていたりと、楽曲でも各アイドルの個性が存分に発揮されているのだ。その一方で、上原歩夢(CV:大西亜玖璃)のソロ曲「夢への一歩」はスクールアイドルらしいポップさを持った王道アイドルナンバーに。だが、歌詞で濃厚に描写された歩夢らしさに加えて、曲タイトルに名前を織り込むという二重の接近がなされていたりと、前述の2曲とは違う形で、心憎いほどメンバーに寄り添った楽曲となっている。
ちなみにソロ曲の歌詞は、これまで『ラブライブ!』シリーズの作詞を担当してきた畑亜貴の作ではない。この点にはシリーズのファンからは驚きの声も上がっていたが、あらたな作家陣によるアプローチもまた、シリーズに新風を吹き込むひとつの要素となっている。
その一方で、9人全員が歌うアルバムのタイトルチューンでもある「TOKIMEKI Runners」は、従来どおり作詞を畑亜貴が担当。サウンドにはイントロから煌めきと希望にあふれ、直接的に言葉にされているように歌詞でもワクワクが前面に描かれた、彼女たちの“はじまり”に贈られるのにはあまりにもピッタリすぎる1曲で、『ラブライブ!』シリーズの王道をバッチリ押さえた楽曲となっている。この点から、虹ヶ咲がシリーズの要素をただいたずらに刷新しているわけではなく、踏まえるべき伝統はしっかり踏まえていることも感じられるだろう。また、この曲の1番はメンバー数人の組み合わせによるユニゾンパートで占められているのだが、2番のA・Bメロは逆に各メンバーのソロで構成。9人の輝きと個人個人の輝きを1曲の中でそれぞれ感じることができるというのも、また魅力だ。
前述の通り、アニサマへ“虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会”として出場が決定している9人。筆者は昨年11月の、9人での初ライブの機会となったダイバーシティ東京プラザでのパフォーマンスを観ていたのだが、その際すでに瑞々しさとダンスパフォーマンスの質の高さを両立していたことを記憶している。その後、単独イベント『校内マッチングフェスティバル』や6月開催の『ランティス祭り2019』などでのライブ経験を経て、どれだけブラッシュアップされた姿でさいたまスーパーアリーナのステージに立つのだろうか。今夏その成長を感じられることを、そしてそれを通過点にさらに大きくなっていく姿を観続けられることを、期待してやまない。(須永兼次)