nonoc、初アルバム『A Photon Away』で見せた多彩な音楽性と原点を語る──「自分を照らしてくれるみんなと相思相愛でありたい」
音楽
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nonoc / Photo:松下茜
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Text:斉藤貴志 Photo:松下茜
『Re:ゼロから始める異世界生活』シリーズなど数々のアニメ主題歌を担当してきたnonoc(ノノック)が、初のアルバム『A Photon Away』をリリースした。北海道から上京して3年の間に発表してきた楽曲に、初収録となるタイトルチューン、デビューシングル「KODO」のリアレンジ・セルフカバーなど全9曲。エレクトロポップ、オルタナティブロック、ポップソングなど多彩な音楽性が打ち出され、「KODO」以外はすべて自ら作詞を手掛けている。11月3日(火・祝)には渋谷CLUB CRAWLでワンマンライブを開催。注目が高まる中、アーティストとしてのルーツから現在地まで紐解いてもらった。
── アルバムでは多彩な音楽性が見られますが、nonocさんのアーティストとしての原点はどの辺ですか?
nonoc 幼稚園の頃から、音楽好きの母が車の中でいろいろな曲を流していて。それを助手席で聴いて、自分でも歌っていました。小学校に上がって、母に言われてピアノを習い始めて、4年生からパソコンを使うようになると、ボカロにめちゃくちゃハマりました。それが人生で歌い手をやっていきたいと思った大きなきっかけです。
── どんなボカロPや歌い手を聴いていたんですか?
nonoc いろいろな方を聴きましたけど、VALSHEさんは母と一緒に好きになりました。仕事に繋がった方だとDECO*27さん。デビューしてから担当の方に、すごく好きだったと伝えたら、曲を書いてもらえました。
── 人前で歌ったりもしていたんですか?
nonoc カラオケには小学生の頃から、家族や友達とよく行ってました。あと、DSに『うごくメモ帳』という今のアプリみたいなソフトがあって。本来はパラパラ漫画用なんですけど、60秒だったか音も録れたんです。それで歌ってネットに上げたりもしていました。


── 歌っていたのもボカロ曲ですか?
nonoc わりと幅広く歌っていました。クラスの流行りとか。中学、高校になってからは洋楽や邦楽ロックも好きになりました。Galileo Galileiさんは同郷の北海道出身ということもありつつ、初めて聴いたときに体に稲妻が走って。あとは、クリープハイプさん、indigo la Endさん。洋楽だとパラモアが好きで、シンガーを目指すマインドにも近かったです。
── 聴く音楽も幅広くなっていったんですね。
nonoc ボカロも初音ミクちゃんとか合成音声が歌っているだけで、曲のジャンルは何でもあり。そういう文化が好きで、今も好みはジャンルレスです。ただ、振り返ると、好きというより当たり前に身近だったのが宇多田ヒカルさんでした。
──「真夏の通り雨」のカバーを動画で上げていますね。
nonoc 自分が歌に集中して、詞も書くようになってから、宇多田さんをもっと好きになりました。人間活動でお休みされていた頃が自分の多感な時期で、その前も復帰されてから今も、ずっと聴いていて。今思うと、自分のルーツに宇多田さんもいました。
── 歌うことに関しては、自分の才能も感じていました?
nonoc うまいとはまったく思っていませんでしたけど、変わった声をしているのかなと。それで当時のプロデューサーに声を掛けてもらったので、ありがたかったです。
── アルバムではかなりのハイトーンも披露していますが、ボカロ曲を歌っていて身に付いたんですか?
nonoc 音域は広いですけど、高い声が出るだけではダメだと思います。ただ、高いからイヤ、速いからダメと思ったことはまったくありません。曲にハードルを感じないのは、確かにボカロで鍛えられた面があります。
── 佐藤純一さんが設立した事務所に所属することになって、3年前に北海道から上京。人混みとか気候とか、生活に戸惑いはありませんでした?
nonoc ないですね。人生でいずれ上京しようと決めていましたし、北海道にいたときから仕事で東京に通っていたので。気候は北海道も暑いときは暑いので、雪が降らないだけで助かります。
── 東京で好きなスポットもできましたか?
nonoc ザギンです(笑)。あの広い道を歩くのが好き。銀座って多文化で、いろいろな企業がいろいろな見せ方を最初に試される場所だと思っていて。いつ行っても街の様相が変わっていて、食べ物のフェスや何かの展示会もやっていて楽しいです。
── アルバムに収録されている「ドアの向こう」は、上京した頃に作ったんですよね。
nonoc 引っ越し感がありますね。上京した1曲目で、そのときの気持ちを書きました。温度の違い、感覚の違いを大事にしたいと思って。
──《選んだ5月号“生活とレイアウト”》みたいな雑誌も買ったんですか?
nonoc 私は買ってないです。母が文化的な人で、部屋の本がよく家にあったので、ひとり暮らしを始めて、そういうものなのかなと。

──「Weightless」はポラリス(北極星)がモチーフになっていますが、東京ではあまり星が見えません。
nonoc これは山梨に行って、キャンピングカーで曲を作るロケをしたとき、広がる星空を見て書きました。私の故郷の歌志内では灯が少ない分、星はよく見えます。ポラリスはいつでも変わらない存在として書きたかったんです。
── この曲の《むくんだ心》も絶妙なフレーズですね。
nonoc 何か重たい、スッキリしないということですけど、私の歌詞の書き方として、断定的な感情になることはあまりないと思っていて。こういうあいまいな表現にしているところがあります。
── 実際に心がむくむことはありますか?
nonoc 全然あります。だからこそ、スッキリしたら気分は余計に良くなる。そういう振り幅があるから、今むくんでいるなというのもわかります。
──「A Photon Away」は最初からリード曲用に作ったんですか?
nonoc 私はいつもライブタイトルを先に決めて、同じタイトルの曲を作っていくんです。今回はアルバムも出すということで、リード曲として然るべきメッセージもあるものにしたいなと決めました。
── それで、このタイトルが閃いたんですか?
nonoc 「A Photon Away」は直訳すると“光ひとつ分の距離”で、宇宙がテーマの海外のポエムでよく使われる言葉だと、調べたら出てきました。私は星が好きで「Weightless」でも書いていますし、自分にとってのみんな、みんなにとっての自分がどれくらいの距離なのか、考えたり感じたりするライブにしたかったんです。


── nonocさんの他の曲でもありますが、《切れかけのライト 替え忘れていた》という日常の光景から始まり、世界が広がっていく感じになっていて。
nonoc そういうのが好きかもしれません。日常で手に取れるありふれたものと、全然関係ない大きな規模の何かの対比。自分はちっぽけだと思いつつ、ちっぽけな中の気持ちを大事にしたい、という。
── 切れかけのライトを替え忘れることも、実際あるんですか?
nonoc 私は普段から暗い部屋で生活しているんです。100のうち15の明かりで、今日は紫の服を着てきましたけど、家では紫か紺かグレーかわからなくて(笑)。だから、ライトが切れかけていても困らないんですけど、人が来るとなったら替えようとします。自分のためにはあまり頑張れない。みんなもきっと、推し活とかテンションを上げるものを生活のところどころに置いていて、私もそうだよ……というところから入りました。
── ライブのためには頑張れると。
nonoc 誰かがいないと成立しないし、やる意味も見えない。そんな自分を動かしてくれる存在がみんななんだよと伝えたくて、ライブやアルバムで形にするイメージです。ドアの向こうに出ていくから、自分を照らしてくれるみんなと相思相愛でありたいなと思います。
── 詞はどんな状況で書いているんですか?
nonoc 部屋に籠ってベッドで考えているか、最近はお風呂場の淵に座って書くことが多いです。
── お風呂場だと言葉が出やすいんですか?
nonoc ベッドから降りたという、タスクをこなした感があります。小さいタスクですけど(笑)、私は歌詞はずーっと考えていれば出てくると思っていて。考えまくっていると、考えてないときに、いわゆる降ってくるというか。だから、まずベッドでずーっと考える時間を設けて、ちょっとだけ家のことをする。トイレに行くでも水を飲むでもいい。そのままベッドに戻ったら、またグルグルしちゃうので、いったんお風呂場の淵に座るんです。考えてなかった間に脳がまとめた情報や、全然違うところから出てくるものがあるのかもしれません。自転車をこいでいるときに、詞が出てきたりもします。

── 電車で移動中に浮かぶという人もいますね。
nonoc 私はガヤガヤしていたり音楽が鳴っているとダメで、インスタの1~2行のコメントを書くときも、ながら見していたテレビを消したりします。
── この曲のオチサビのハイトーンは難なく出ましたか?
nonoc さすがにキーが高いなと思いました(笑)。でも、スタジオで佐藤さんが作曲しているそばで、ああだこうだ言いながら一緒に作っていて、そんなに上がらないパターンもやってみたんです。そうすると何か違う。乗せる詞も思い浮かばなかったから、高くて良かったんだと思います。歌は練習しないといけないですけど。
── ライブでも颯爽と歌えるように?
nonoc 私の音域は上は結構広くて、下も出るようになってきましたけど、辛く聞こえるのは違うので。
──「float time」にはラップもあります。
nonoc ラップは初めてで、詞の文字数制限があまりないから、たくさん書けてうれしかったです。レコーディングも苦戦せず、逆にラッパーっぽくなりすぎて、それはやめようとなりました。
── デビューシングル「KODO」のセルフカバーは、自分でやりたかったんですか?
nonoc そうですね。ライブでも人気がある曲で、もともとデジタルロックサウンドでしたけど、今の自分の声でラウドロックもできるよと、示したかったというのがあります。


── 7年前と曲の捉え方が変わったりはしましたか?
nonoc リアレンジしたことでノリ感が変わって、おっかなくなりました(笑)。情念みたいなものは乗ったかなと思います。何より昔とは自分の声が違うので。デビュー曲を今の声で残したかったんです。
── 声は変わったというより、意図的に変えたんですか?
nonoc 変えないといけなかったから変えました。私はもともと声で引っ張ってもらいましたけど、ノドは弱くて長い時間歌うともたなかったんです。ライブが好きだったので、そこは壁になって、今の声になるまで長い期間をかけて、特訓をしました。
──「KODO」のボーカルもシャープになった感じがします。
nonoc 昔の私の声を好きでいてくれた方もたくさんいますけど、ボカロを歌っていた自分がやっぱりルーツにあって、いろいろな曲を歌えたら困らないので。昔ならできなかった表現も含め、全部できたうえで何を選ぶか。まだそこまで行けてませんけど、今の声のほうが自由度は断然あります。
──「float time」のラップには《音楽は伸び代 ライブはきっとぼくののりしろ》というライムがあります。11月3日(火・祝)のライブではのりしろに何が乗りそうですか?
nonoc ライブは自分とファンの気持ちが一番近くなる場所で、一緒になって楽しむことが生きがいだと、その詞に書きました。前回の2月のライブで出し切った感がすごくあって。自分を解放して、ただただ楽しくて気持ちが良くて、やっとここまで来られたと感じました。そこから次のステップとなると、詰めていけるのは歌かなと。
── 基本を磨くわけですか?
nonoc ライブって始まったらあっという間に終わって、覚えてないことが多いんです。みんなの顔や反応は覚えていても、自分を俯瞰して、どの曲をどう歌ったかは思い出せません。今回もどうせ忘れてしまうので、その前に詰めておくことで、完成度の高い自分が自然に出てくると思うんです。
── 意識が飛んでも体が動いているような状態に持っていくわけですか?
nonoc そうですね。前回はそこまで気を回せませんでした。リハから歌とパフォーマンスの完成度をより意識して、いつも気合いだけでやっていたかもしれなかったのを、細かいところまで仕上げておきたい。自分で気をつかわなくてもクオリティが上がっているようにして、臨みたいと思います。

<リリース情報>
配信アルバム
『A Photon Away』
配信中

【収録曲】
1.A Photon Away
2.float time
※ラジオ大阪『佐藤純一・nonocの音楽世界線』オープニングテーマ
3.Primer
※ことのは文庫『そのネイルは内緒のときめき』イメージソング
4.ひとすくいのしあわせで
※ことのは文庫『アヒルと犬とそらいろ食堂』イメージソング
5.たまご
※ことのは文庫『極彩色の食卓』イメージソング
6.モノローグ
7.KODO (New Arrange Ver.)
※原曲はTVアニメ『魔法少女特殊戦あすか』オープニングテーマ
8.Weightless
9.ドアの向こう
各配信URL
https://lnk.to/vbxydQ
『A Photon Away』SPECIAL WEBSITE
https://newworldline.jp/nonoc/aphotonaway/
<ライブ情報>
『nonoc one-man live “A photon away”』
11月3日(火・祝) 東京・渋谷CLUB CRAWL
開場 18:30 / 開演 19:00

チケット一般発売中
受付URL:https://w.pia.jp/t/nonoc-t/
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