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MGFが世代やジャンルを超えて響かせたグルーヴ HUNGER、Shin Sakiuraら迎えた自主企画を見て

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 3MCで構成されるHIPHOPユニット・MGFが主催するイベント『Modern Groove Fashion』が、渋谷HARLEMにて5月11日に行われた。

参考:MGFが語る、“どこにも属さない音楽”を作る理由「自分たちのジャンルを限定したくない」

 彼らのインタビュー(MGFが語る、“どこにも属さない音楽”を作る理由「自分たちのジャンルを限定したくない」)でも、メンバーのKSKが「僕らが好きな、みんなに聞いてもらいたいアーティストを招いた、僕らの趣味嗜好が反映されたイべントですね」と語るとおり、このイベントのライブパートには、ベテランラッパーのHUNGER (GAGLE)と、SIRUPにもギターでサポートに入っている、プロデューサー/トラックメイカーとして活動し、MGF作品にも『Real Estate』収録の「忘れられなくて feat. Shin Sakiura」で共演したギタリスト・Shin Sakiuraが参加。そしてDJにはモデルとしても活躍するTiffany Cadillac、MGFともクルーとして活動を共にしている3DJユニット・LOCAS、そしてトラックメイカー/プロデューサーとしてダンスシーンを牽引するDORIANがDJとして登場するという、MGFとの関係性や影響など、様々な面で接点のある、豪華な布陣でのイベントとなった。

 オープニングDJとしてフロアを彩ったTiffany Cadillacは、Junior Byles「Curly Locks」や、Zap Pow「This Is Reggae Music」など、オールドファッションなレゲエで観客を出迎える。メロウな選曲でフロアを温めてからバトンを渡されたDORIANは、ディスコやハウス中心のダンサブルなセットで、さらにオーディエンスの熱気を高めていく。そのオーディエンスの環の中にはMGFのメンバーの姿もあり、承前のインタビューで「とにかく楽しもうって感じですね」と話してたJapssyの言葉に間違いは無いようだ。

 ギターとDTM用のコントローラーを携えて登場したShin Sakiuraは、自らトラックを流しながらギターを奏でるマルチなスタイルでのライブ。シティポップとも接続するようなメロウなインストや、ネオファンクな楽曲を中心にパフォーマンスし、スクリーンに映し出される莊子it(Dos Monos)のVJ映像と相まって、官能に訴えるようなライブを展開した。

 続いて登場したのはHUNGER。20年近い活動を経ても、常にオリジナルでフレッシュなラップを提示し続け、最前線で戦う彼だが、その圧倒的なスキルはこの日も健在。また、MGFの世代から考えても、若いリスナーが多い会場に向かって、日本語ラップの歴史を人名を散りばめることで表現した「JAPPCATS」を披露したことは、非常に意味を感じさせる展開だった。

 そしてHUNGERのライブにはゲストとしてサイプレス上野が登場し、サイプレス上野とロベルト吉野「RUN AND GUN pt2 feat.BASI,HUNGER」や、RHYMESTER「爆発的 feat. サイプレス上野 & HUNGER」などをタッグで披露。キャリアを経てきたラッパーの地力の強さを提示する。そしてこのイベントへの感謝と次世代を繋ぐ意思を織り込んだフリースタイルを経て、ラストはGAGLEのクラシック「雪ノ革命」。GAGLEが現在のMGFと同年代だった時期の楽曲を披露するという、メッセージ性の高い展開を経てライブはMGFへ。

 3MCというバラエティを生かして派手に登場するMGF。どうしてもパブリックイメージとして、いわゆる非ストリート系のラッパーのライブは何故か「ゆるい」と思われがちだが、例えばTOKYO HEALTH CLUBやDos Monosなどのように、タフでエンターテイメント性の高いパフォーマンスを魅せるグループは決して少なくない。それはMGFも同様で、低い温度でライブの低層部を支える1010、フリーキーなスタイルで華やかな空気を送り込むJapssy、確かなスキルと視野の広さでパフォーマンスを安定させるKSKと、MGFのライブは非常にパフォーマンスとして優れているし、とにかく心地が良い。そして、その空気感をこの日さらに高めたのは、序盤で披露された彼らの代表曲である「優しくしないで’94」だろう。キャッチーなフックでは会場で多くの手が上がり、彼らへの期待感を感じさせられる。

 そのまま「湿った夜の儚き嵐 feat. Kan Sano」や「Hey Dude」、Shin Sakiuraを迎えての「忘れられなくて feat. Shin Sakiura」など、ニューアルバム『Real Estate』の楽曲を中心に披露していく。MCではKSKの「自由ってなんだと思う?」という問いかけに対して、かなりグダグダなトークが繰り広げられたが、この「交わってるのか、交わっていないのか」というアンバランスさも、MGFの魅力の一つだろう。

 そして「Wonder Peace Creation」、「時の流れのせいで」に続いて、アンコールではアルバムのラスト曲でもあり、サザンオールスターズへのオマージュだという「Bling Bling Woman」を肩を組みながら歌い、会場の一体感は最高潮に。LOCASのクロージングDJもこの流れを受け、サザンオールスターズ「愛の言霊~Spiritual Message~」から始まるなど、楽曲の文脈を丁寧に受ける展開も印象的だった。

 デイタイムでありながらも、しっかりと「パーティ」としての機能性に加え、MGFのパーティを通してのメッセージ性も表現されたこのイベント。HIPHOPというジャンルにとらわれない、MGFならではなオルタナティブな空間を十二分に感じられる時間だった。(高木 “JET” 晋一郎)