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「もし森山直太朗がZeppでスタンディングのライブをやるとしたら?」 森山が出した答えとは――。

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NAOTARO MORIYAMA Zepp TOURS 2026 『Zepp de Rolling DOSA ~すべからく愛々~』 Photo:鳥居洋介・野口美々

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Text:谷岡正浩 Photo:鳥居洋介・野口美々

【公演レポート/ネタバレあり】
本記事には、公演の演出やセットリストなど、ライブの内容に関する記述が含まれています。これからご参加予定の方は、ご了承のうえお読みください。

自身初となるZeppでのスタンディングライブツアーを廻っている最中の森山直太朗。昨年10月から今年7月まで続いた、ふたつのコンセプトのライブを、ひとつのツアーとして全国のホールを廻っていく『あの世でね』を終え、すぐに始まったこのZeppツアーは、そのきっかけとして大喜利的な遊び心もありつつ、実は今の森山直太朗というシンガーソングライターの生の衝動が息づいているものになっている。

そのショーは、おもむろに始まった。
いや、今思えば、そう感じるように巧妙に仕向けられていたのだ。おもむろ、というのはその言葉を検索窓にでも放り込んでみれば、すぐさま「落ち着いてゆっくりと行動を始める様」と意味が表示され、AIともなれば「漢字で書けば“徐”、英語では“slowly”」とご丁寧に教えてくれる。しかし、言葉は用法や文脈によって本来の意味以外の内容も含むようになる。だから「おもむろ」には、“不意に”という、そこにちょっとした断絶を感じさせる意味もあり、ここではその後付けの意味にやや重心をおいて“おもむろ”を使っている。
こうした、裏でも表でもない様々なものを含んだ物事のリアルなありようを舞台に映し取って、それを音楽ライブとして表現してみせよう――これが『Zepp de Rolling DOSA 〜すべからく愛々〜』と題された、全国のZepp6カ所を巡るスタンディング形式によるツアーの基本構造だった。

開演前の会場には、どこかダークでミステリアス、けれどファンタジックでファニーなオーケストラ音楽が流れていて、まるで某有名テーマパークのアトラクションを体感する前のようなワクワク感をくすぐられる。
そのうち、明らかに酒の回り過ぎた酔客と思しき男が、バーテン相手に愚痴を垂れ流している喋り声がオーバーラップする。泥酔した男が何に不平を漏らしているかと言えば、ライブ中の観客のマナーについてだ。曰く「場内でのお食事や喫煙をするヤツがいる。固く禁じられているにもかかわらずだ!」と息巻く。要は、公演前の注意事項を読み上げる影アナからもう、このツアーの世界観で演出しているわけだ。
だから、ここからどんな物語が展開されるのか、集まった観客は前のめりになったはずだ。

しかしショーは、森山直太朗(Vocal & Guitar)がひとりで地明かりのまま「レスター」を弾き語るという、おもむろとしか形容のしようのない始まり方で始まった。そのときの感覚を正直に記せば、会場を間違えて来てしまったかのような、ついさっきまでの自分と今の自分が別人のように思えてしまうほどのラグを感じた。

歌に合わせて照明は徐々に暗くなり、曲終わりに「どうも森山直太朗です」と挨拶をすると櫻井大介(Piano & Keyboard & Accordion)、齊藤ジョニー(Guitar & Mandolin)、朝倉真司(Drums & Percussion)が登場し、「どうしてそのシャツ選んだの」の演奏へ。さらにドラムの8ビートに導かれて、山田拓斗(Fiddle)と林はるか(Cello & Bass)を加え、オーディエンスとの軽妙なやり取りをしつつ「太陽」、次の「星屑のセレナーデ」へと続く。古参のファンにとっては懐かしい曲やレアな曲たちが続くここまでの流れは、そのライブの始まり方も含めて、それこそ時間が過去に巻き戻っていくような感覚になった。

賑やかさを増していく演奏につれ、もうすっかり最初に抱いていた不思議な感覚は遠ざかり、オーディエンスはすっかり目の前で繰り広げられるライブステージに夢中だ。

ところが――。
「みんな太陽は好きか?」

開場中にかかっていたダークファンタジーな音楽に合わせて、このツアーの物語の鍵を握る西海孝(Banjo)がステージに登場し、観客に語りかける。打楽器の合いの手が入ると、一気に語りは講談風の口上へ。気づけば、物語の世界がパックリと口を開け、観客を会場ごと飲み込んでいった。

舞台上にいるのはもはやそれまで楽しそうにリサイタルしていた彼らではない。傲慢の罪を背負った森山田直太朗の助を筆頭に、齋藤叙二男(色欲の罪)、桜井大ノ助(憤怒の罪)、朝倉真司(暴食の罪)、林田はるこ(強欲の罪)、山田拓郎(嫉妬の罪)という6人の囚人たちだ。彼らが罪を贖う日々の慰めに楽団を組んで、それに目をつけた監獄の所長(西ノ海孝・悪徳の罪)が彼らを引き連れてDOSA回りをしてしこたま稼ぐ。それからどうなったのか、事の顛末が所長より語られる。それによると、なかなか悲惨な結末を迎えたことになっており、要するに今、演奏をしているのは所長と囚人の亡霊たちで、この舞台は元監獄があった場所ということになるようだ。

「Banquet!」で幕を開けた彼らのショーはブルーグラスを主体とした人力ダンスミュージック。バンジョーとマンドリンが足を踏み鳴らし、フィドルが踊り、チェロが駆け回る。ドラムが一声発すると、「Yeeeehaaaaw!」の文字を模った電飾が現れる。オーディエンスを巻き込んだ熱狂は「愛々」という風になってどこか遠くの場所へと運んでいく。物語と演出と進行と楽曲が一体となってひとつの舞台を作っている。亡霊たちを慰めるように「生きとし生ける物へ」のメロディが会場を駆け巡り、それに応える亡霊たちのざわめきなのか「boku」でバンドがドゥーワップしながらステップを踏む。その行進は、口上を経て「さりとて商店街」へと雪崩こみ、けれど一転、不穏な報せを告げる運命的なチェロの旋律に〈永年の時を超えて隔離されしエレジー〉と詩の朗読が重なる。

「Nonstop Rollin’ DOSA」から大団円へと向かうと、観客は囚人たちの行く末を幻視し、悪徳所長の最後の高笑いが耳の奥で鳴り響く。
札束の舞い散る「どこもかしこも駐車場」に至り、この空間がもはや森山直太朗が率いるバンドなのか、森山田直太朗の助がリーダーのバンドなのか、いよいよその区別が消失する。本当にどこもかしこも駐車場になっていくかのように、ただ音楽だけがそこにはあった。現実と虚構を入れ子状にしてひとつのショーに組み込み、現実は虚構に、虚構は現実に忙しなく入れ替わっていく。

「みんな歌ってくれ! 歌うことをやめないでくれ! 踊ることをやめないでくれ! 生きることをやめないでくれ! ライトを点けてくれ! 計画は変更だ! もう少しだけこうしていたいんだ! 新しい景色を見たいんだ! 君の物語をもう少しだけ聞かせてくれないか?」

曲の後半、森山(直太朗の助)は絶叫した。そこで発した言葉の向かう先は自分自身だった。まるで「表現の罪」とでもいうようなものを背負ったその言葉は彼のなかにあるいくつもの自分自身に向かって放たれ、いつまでも反響していた。我々は森山直太朗という表現者の抱えるいささか複雑な内面と、それをあくまで舞台表現という形で曝け出してしまう手腕と勇気、そして何より彼が生み出してきた音楽の確かな手触りを感じながら会場の外に出てそれぞれの方角へ散っていった。6人の囚人たちと悪徳所長のドサ回りが延々と続いていくその物語をなぞるように。

今回のツアーに合わせてまとめられたパンフレットのなかで直太朗はこんな心情を吐露している。
意訳すると、昨年10月から行われた『Yeeeehaaaaw!』と『弓弦葉』の2種類のツアー『あの世でね』を廻るなかで、『Yeeeehaaaaw!』のスタイルであるブルーグラスを主体としたバンドに、『弓弦葉』で得られた舞台構成を取り入れた形で続きをやってみたいという思いが芽生え、そのことをスタッフに打ち明けると、だったらZeppツアーにするのはどうか?という提案があった。

「これはひとえに、『もし森山直太朗がZeppでスタンディングのライブをやったなら?』という大喜利のお題を与えられたようなもの」 そこで彼が辿り着いたのが、ライブを劇化しつつ、よりシンプルに音楽を届けることだった。『Yeeeehaaaaw!』と『弓弦葉』のふたつのツアーが始まった段階では本来予定されているはずのなかったZeppツアー、というそもそもの話に立ち戻ると、何やらすべてが幻のようで、けれどそれはもちろん現実として行われ、だからこそライブという意味がこれ以上ないほど詰まっているライブ――それがこの『Zepp de Rolling DOSA 〜すべからく愛々〜』だった。

<公演概要>
NAOTARO MORIYAMA Zepp TOURS 2026
『Zepp de Rolling DOSA ~すべからく愛々~』

10月29日 神奈川・KT Zepp Yokohama

<公演情報>
NAOTARO MORIYAMA Zepp TOURS 2026
『Zepp de Rolling DOSA ~すべからく愛々~』

※終了公演は割愛
11月12日(木) 福岡・Zepp Fukuoka
12月4日(金) 大阪・Zepp Namba (OSAKA)
12月10日(木) 東京・Zepp Haneda (TOKYO)

▼Zeppツアー特設サイト
https://naotaro-tour.com/zeppderollingdosa/

▼チケットはこちら
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=28240037

▼森山直太朗が語る新曲「愛々」誕生秘話インタビュー
https://lp.p.pia.jp/article/news/462745/index.html

Official HP

https://naotaro.com/

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