『コンフィデンスマンJP』初登場1位 連戦連勝、フジテレビはどうして映画に強い?
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先週末の映画動員ランキングは『コンフィデンスマンJP』が土日2日間で動員28万4000人、興収3億8600万円をあげて初登場1位に。初日からの3日間累計では動員35万7000人、興収4億8000万円。テレビドラマ映画化作品に多い初動型興行の気配はあるものの、これは十分に大ヒット・スタートと言っていい数字だろう。
参考:目に見えるものが真実とは限らないーー『コンフィデンスマンJP』真のターゲットは誰だ?
今年に入ってからでも、東宝配給の『マスカレード・ホテル』、東映配給の『翔んで埼玉』と、大ヒットを連発しているフジテレビの映画部門。昨年も、実写日本映画の1位は東宝配給の『コード・ブルー』、2位はギャガ配給の『万引き家族』とフジテレビが出資した映画がトップ2を独占。かつてのフジテレビ映画といえば東宝配給によるテレビドラマの映画化作品というイメージが強かったが(まさに『コンフィデンスマンJP』はその座組の作品だ)、他の大手配給会社や独立系配給会社と組んでも、あるいはテレビドラマの映画化作品でも映画オリジナルの企画でも、このところ連戦連勝であるところは注目に値する。
『コンフィデンスマンJP』の脚本家である古沢良太とフジテレビのタッグでも、2015年に『エイプリルフールズ』(興収9.2億円)、2017年に『ミックス。』(興収14.9億円)と右肩上がり。企画においても、キャスティングにおいても、作品を追うごとに焦点がピシッと定まってきたことになる。
そもそも、今回の『コンフィデンスマンJP』は「テレビドラマの大人気を受けて映画化決定」という通常のテレビドラマの映画化コースではなく、2018年春の放送時には既に映画化が発表されていて、キャストやスタッフのスケジュールもそれを前提として押さえられていた企画。他局のテレビドラマも含め、過去にそうした例がなかったわけではないが、大失敗に終わったり(『スシ王子!』『神の舌を持つ男』など)、ドラマ放送時あまりの不人気のため映画化自体が頓挫してしまったり(『HEAT』)と、かなりリスクの高い方法でもある。『コンフィデンスマンJP』自体もドラマ全10回の平均視聴率は8.9%と、昨今全体的にテレビドラマの視聴率が低下傾向にあることを踏まえても厳しい結果に終わった作品だった。
それでもこうして映画化を断行し、それで結果を出してしまうところに、現在のフジテレビ映画の好調さがうかがえる。ヒットの規模こそ違えど、思い出すのは最初の2作がケタ外れのヒットを飛ばして、90年代後半からゼロ年代前半にかけて日本映画全体の構造自体の変化を促した『踊る大捜査線』シリーズのこと。『踊る大捜査線』もテレビドラマの初回放送時の平均視聴率は18.2%と、今の基準でいえば大ヒットと言える数字だが、テレビドラマ視聴率の水準が高かった90年代においては特に際立った視聴率を記録した作品というわけではなかった。
『踊る大捜査線』と『コンフィデンスマンJP』に共通しているのは、作中に過去の映画作品やポップカルチャーの(パクリではなく)パロディが散りばめられていて、作品全体が陽性な空気感に包まれていること。それは、かつてフジテレビとのタッグでヒットを連発していた三谷幸喜の映画作品の特徴でもある(今年は三谷幸喜の4年ぶりの新作映画『記憶にございません!』の公開も秋に控えている)。もし「フジテレビらしい映画」というイメージがあるとしたらきっとそのあたりになるのだろうが、今回の『コンフィデンスマンJP』では、久々にそんな「フジテレビらしい映画」できっちりとヒットを飛ばしたことになる。(宇野維正)