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小田和正のアンコールはいつまでも続いていく 『ENCORE!! ENCORE!!』横浜アリーナ公演レポ

音楽

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リアルサウンド

 5月14日と15日、神奈川・横浜アリーナにて小田和正のコンサートツアー『Kazumasa Oda Tour 2019 “ENCORE!! ENCORE!!”』がスタートした。昨年5月から約半年に渡って開催されたツアー『明治安田生命 Presents Kazumasa Oda Tour 2018「ENCORE!!」』の追加公演となる今回。「追加公演ですから、やることはほとんど一緒です。それでも微妙に、“あ、ここは変えたんだな”というところもありますから、こだわる人は、そういうところに注目しながら、最後までお付き合い願えればと思います」と、ユーモアたっぷりなトークを交えながら、約3時間で全29曲を文字通り熱唱。ここには、2日目の15日公演の模様をレポートする。

(関連:小田和正が母校で歌う一夜限りの奇跡 『風のようにうたが流れていた』公開収録レポ

■ウィットに富んだトークがスパイス
「また元気で会いましょう。いつかまた、こうしてみんなと会えるようにと心から楽しみにしています。きっと帰ってきます!」

 昨年のツアーの最後を、こう締めくくった小田。それから約半年、前回のツアーでファイナルを迎えたのと同じ、小田の地元の会場であるここ横浜アリーナの地で、あの日の約束が果たされた。まるで前回のライブで止まっていた時計の針が、また動き始めたようだ。アンコールのまたアンコールが、始まった。

 横浜アリーナをめいっぱい使った作りの会場は、コンパクトなステージ上のバンドのすぐ後ろにまで客席が設けられ、小田がナビゲートした番組『クリスマスの約束』(TBS系)での客席の配置を彷彿とさせる。アリーナ全体をぐるっと取り囲むように花道とミニステージが敷かれ、小田は曲ごとにステージを周りながら歌っていた。ステージと客席の距離は驚くほど近く、どこからでもなるべく等しく楽しんでもらおうという心配りが嬉しい。小田と観客の距離の近さは、物理的なものだけではない。観客との何気ない会話を楽しむようなトークは、小田のライブを楽しむ上での大事なスパイスだ。

 オフコース時代の「夏の終り」を歌う前のMCでは、「一見ラブソングですけど、僕としては夏への思いを書いたつもりでした。キザですみません(笑)」と笑いながら、楽曲にまつわるエピソードを披露した。

「昔、ラブソングの神様と書かれたことがありました。そうです、あの頃のことです(笑)。それがとっても嫌でした。さらに遡ること何十年も前、ふたりでオフコースをやっていた頃には、マンネリと書かれました。その時は、ひどく傷ついたものです。それから何年も経って、今度は普遍的と褒められて、とっても嬉しくなったことを覚えています。マンネリも重ねれば、普遍と言われるわけです(笑)」

 何十年と共に歩んできたお客さんであればこそ、思わずクスッとしてしまうウィットに富んだトーク。客席からは「ああ~あの時ね」という声も漏れ聞こえてきた。

「昔はなんだか秋が好きで、(オフコースの曲で)『秋ゆく街で』という曲もあるけど、ライブではほとんど歌ったことがなかったな~」とつぶやきながら、ふと思い立ったように〈まるで秋を迎えた少女のように〉と、「秋ゆく街で」の冒頭を弾き語りでワンフレーズ披露。この思いがけないサービスに、客席からは大きな歓声と拍手が沸いた。

■古希とは思えない、エネルギッシュさとハイトーン
「知っている曲があったら積極的に、でも隣の人に迷惑がかかるほど大声では歌わないようにしながら、楽しんでほしいと思います」

 そう観客に投げかけた小田。全29曲のセットリストには、「言葉にできない」を始め、「Yes-No」や「YES-YES-YES」など、オフコース時代の楽曲も多数含まれていて、オフコースをリアルタイムで体験している40~50代のファンを中心に、会場からは大合唱が響き渡る。

 ソロになって以降の楽曲は、「ラブ・ストーリーは突然に」を始め、「こころ」や「キラキラ」「今日もどこかで」、最新シングル収録の「会いに行く」など、90年代以降の代表曲がピックアップされていた。令和という新しい時代になって始まったこのツアーで、昭和と平成を懐かしみながら、そしてまた令和を共に歩もうという、小田の思いが込められていたように思う。

 曲によってアコースティックギターとエレキギターを持ち替えて、ときにはピアノを弾きながら歌う小田。ひとたびハンドマイクを持てば、とにかく走り回る。右へ左へと、360度を埋め尽くす観客の元に走って駆けつけ、まったく息切れすることなく透明感のある美しいハイトーンを響かせた。古希とは思えないエネルギッシュさには、とにかく驚かされる。

 「ダイジョウブ」を歌った際には、観客一人ひとりの笑顔を確かめるように、ゆっくりと歩きながらファンの歌声に聴き入った小田。〈きっと ダイジョウブ〉という小田からの優しいエールは、横浜アリーナを抱きしめるような大きさで観客を包み込んだ。

「追加公演をやると聞くと、昔は、そんなのは最初からやることが決まっていたんだろうと散々悪口を言ってきました。でもこうして実際に追加公演をやることになって、“そういうこともあるんだな”と、反省しております(笑)」

 そうユーモアたっぷりに、このツアーについて語った小田。同ツアーは、福岡、三重……と続き、7月に愛媛でファイナルを迎える。ファイナルを迎えたそのとき、小田は、今度は何を思うのか? 小田のことだから、さらに追加公演をやるということはきっとないだろう。でも、求められればどこへでも飛んで行き、歌で聴く人の肩を優しく抱きしめるはずだ。求められ続ける限り、小田和正のアンコールはいつまでも続いていく。(取材・文=榑林史章)