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『なつぞら』の3枚目役で花開く!? 岡田将生とコメディとの相性

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 記念すべき100作目を迎えた朝ドラ最新作『なつぞら』(NHK総合)が絶好調だ。視聴率は初週より20%超えをキープ。2000年以降に放映された37作品中でもトップ10上位に食い込むほどで、特にここ5作品の中では最も高い数字だという。本作は戦災孤児となり、引き取られた先の北海道の酪農家の元でのびのびと育った少女が、アニメーターを目指して奮闘する物語。今や“クールジャパン”の代名詞となっている日本のアニメがどのように育まれてきたか、知られざる制作の裏側を描くと同時に、未知の世界に飛び込んだ女性が夢を叶えていく姿を活写していく。

参考:『なつぞら』岡田将生が生み出す波乱! 頼りない「お兄ちゃん」はなつとの絆を取り戻せるか?

 本作の好調を裏で支える要因のひとつがキャスティングだ。主人公の奥原なつを演じる広瀬すずをはじめ、朝ドラ定番の、“主人公の心のよりどころとなる祖父”役に草刈正雄、また、なつの幼なじみに扮した吉沢亮に山田裕貴、なつが少女時代を過ごした柴田家の長男に注目株の清原翔。東京編ではなつと同じ戦災孤児の青年に工藤阿須加、なつが働くことになる東洋動画の社員には井浦新、中川大志、染谷将太も顔をそろえる。これほど惜しげもなく人気俳優を出演させた朝ドラがかつてあっただろうか。そんな100作目の気概を感じる中、一際印象的なのが、なつの兄、奥原咲太郎を演じる岡田将生だ。

 なつとともに空襲で焼け出され、戦災孤児となりながらも、持ち前の陽気さで米兵とも渡り合う肝の据わった少年だった咲太郎。長らく行方不明だったが、第29話でなつと再会。ストリップの場つなぎにタップダンスを披露する登場シーンには思わず見惚れた視聴者も多かったのではないだろうか。詐欺にあってできた借金を背負い隠れるように暮らしていたが、なつとの再会を機に真面目に生きることを決意。粗野で調子のいい面もあるが、妹想いの良き兄という役柄だ。

 今回朝ドラ初参加となる岡田だが、キャリアはゆうに10年を超える。日本人離れした顔立ちに長身細身のスタイルは今も変わらないが、デビュー間もない頃に出演した『天然コケッコー』や『ハルフウェイ』で見せた繊細な少年役の美しさは際立っていた。と、思えば『悪人』の性格の悪い金持ち学生役や『告白』での熱血教師役では癖のある芝居にも挑戦。近年ではドラマ『昭和元禄落語心中』(NHK総合)で落語の特訓を積み、堂々の主演を果たした。もともと人気のある原作だっただけに大きなプレッシャーもあったと思われるが、難役を見事演じきり、株を上げた。昨今は舞台にも積極的で、30歳を目前に控え、役者として飛躍のときを迎えていると言っていいだろう。

 そんな中で抜擢された今回の咲太郎役はいわば3枚目なキャラクター。やんちゃで喧嘩っ早くて、その実、女性には弱いところなど典型的だが、これまで岡田にこういった役が回ってくることは少なかったように思う。高すぎる顔面偏差値ゆえか、クリーンで品行方正なインテリ青年、もしくは気の弱い弟タイプ、そんな役柄の印象が強い。しかし本作ではそのイメージを一新。大振りで表情豊かな演技で咲太郎というキャラクターに命を与えている。何より戦後のエンターテインメントが花開いた劇場界隈で生きる青年というバッググラウンドに、彼の持つバタ臭さがいい意味でハマっている。思えば彼とコメディとの親和性の萌芽は『リーガルハイ(シーズン2)』(フジテレビ系)の頃からあったもの。のちに『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)や『銀魂』などでもたびたび発揮されてきたが、『なつぞら』の咲太郎役はその決定打にもなり得るのではと期待している。

 本作への出演にあたり、岡田は、出演者発表会見の場で「今回の役はヒロインのなつをトラブルに巻き込んでしまうような役で、しかし、憎まれないように愛されるキャラクターをやりたいと思っております」とコメント。夢に向かって進むなつに負けじと、ドタバタ劇の中心として作品にメリハリを付ける立ち位置を担うのが咲太郎になるのかもしれない。

 いよいよ始まった東京編。なつを取り巻く環境も大いに変わり、ドラマも一気に加速していくことになる。100作目にふさわしい有終の美を飾ることができるのか、その行く末を見届けたい。(渡部あきこ)