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吉沢悠が種子島のサーファーに 「東京オリンピックで初めて正式種目になるサーフィンをバックアップできれば」

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定年後にサーフィンを始めた中年男の第二の人生を大杉蓮主演で描き、多くの中年サーファーを生み出すという社会現象を巻き起こした「ライフ・オン・ザ・ロングボード』(05)。その世界観を受け継いだ映画『ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave』が公開となります。美しい海が広がる種子島を舞台に、夢から逃げ出した一人の男が、再びサーフィンを通して自分の人生と向き合い、人生の輝きを取り戻していく物語。主演の吉沢悠さんにお話をうかがいました。

人間はいくつになっても変われるんだと思います

─── 「ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave」、拝見いたしました。エンドロールの後、とても爽やかな気持ちになりました。

嬉しいです。ありがとうございます! 爽やかな気持ちは、種子島のおかげじゃないですかね。アハハハ。

─── 種子島って、キレイなところですね。

種子島、キレイですよ~。本当に海が青いんです。すごいいい場所ですよ!

─── 撮影中は、天候にも恵まれたと聞きました。

梅雨にかぶるんじゃないかっていう心配もあったんですが、たまたま時期がズレてくれて。撮影日和が続いて、本当に幸運でした。本編自体は2週間ほどで撮れました。

─── 吉沢さんは、クランクインの10日前から種子島入りをしたそうですね。

ケガが怖いので、サーフィンの撮影は最後になるはずが、天気が崩れるかもしれないということで前倒しになったんです。サーフィンチームだけでサーフィンパートを撮りに行くと聞いたので、監督たちより先に入りました。

─── 資料によれば、地元サーファーの方々とも交流があったとか。

まあ種子島に限らず海に入っていると、結構ローカルの方も多いですし、日に日にどんどん仲良くなっていくんです。それこそエキストラさんで出ていただくっていう流れもあったんで。日を追うごとに距離が縮まって、会ったら「おはようございます」って言い合うし、仲間が増えてる感じでした。

─── もともと、サーフィンは趣味でされていたそうですね。それでも、最後にはオリンピックを目指すようなサーファー・光太郎の役は、プレッシャーだったのではないでしょうか?

酷いプレッシャーでした(笑) サーフィンは高校生から始めたのですが、僕がやっていたのは長い板だったんです。でも光太郎はショートボード。勝手がぜんぜん違いました。
監督と去年の2月にお会いして、「吉沢にはショートボードをやってもらうから」と言われたときは、「サーフィン自体、しばらくやってないけど大丈夫かな」と思って、2月~4月は関東近郊で練習して、5月に全体のクランクインより早く種子島入りして練習。でも時間があまり取れなかったんで、慣れながら撮影していくという感じでした。

─── もうひとつのプレッシャーといえば、この映画がシリーズ2作目ということ。大杉蓮さん主演の1作目を考えて、気負ってしまうことはありませんでしたか?

正直、ありました。喜多一郎監督の全作品のテーマに、「人間再生」というものがあります。そして、大杉さんが主演された第1作の場合は、定年退職して第二の人生を見つけていくという物語で、とても温かい内容だし、大杉さんの人柄と俳優としての深みがあってこその作品だったんですね。今回、それを経てのパート2では、また違った年代の人が、自分なりに人生を見直していくという物語なんですけど、パート1のクオリティは下げられないし、なるべく2というのは1を超えることを目指していかなければとも思い、プレッシャーをすごく感じました。
実は大杉さんに、何らかの形でパート2に出演していただく可能性があったんですよ。

─── そうなんですね。でも残念ながら……。

はい、ああいうことになってしまって。監督には「僕が大杉さんの思いを背負う」などとは、考えなくていいとは言われていたんですが、いろんな作品でお世話になっていたので、頭の片隅には大杉さんの存在が常にありました。
パート2で泉谷しげるさんの役が、「ゲンさん」って名前なんですけど、ちょっとレンさんに聞こえて……。

─── ゲンさん、レンさん。確かに。

ちょっと僕の中でリンクしまして。もちろん泉谷さんのゲンさんとは、僕は光太郎として接しているんですけど、ちょっとだけ大杉さんを重ねてしまいました。

─── 泉谷さんとのシーンは、世代を超えた友情が見ていて素敵でした。

泉谷さんとのシーンは、台本を読んだときからいいなと思っていました。
もともとゲンさんは漁師で、「何十年目かで辞めた日にお前と出会って、サーフィンを教わって……」って話すシーンで、自分はまだロングボードに乗っているんだってセリフがあるんですよ。映画的にも大事なシーンですし、とにかく泉谷さんとのシーンはやっていてとても楽しかったです!

─── ゲンさんとのお風呂のシーンも、良かったです。

台本で読んだときから、大事なシーンだと思っていたんですけど、その通りでしたね。
あそこは一気に撮っているんですが、泉谷さん独特の味と雰囲気に、僕も現場で「ああ、なるほど」って思うような、ジーンとくるシーンになりました。裸の付き合いも、よかったでしょ(笑)

─── 泉谷さん、ちょっと怖い印象が世間ではあるかもしれないですね。

キャラがね、「おい馬鹿野郎!」みたいな感じなんですけど、普段はとても優しい方なんです。一緒にサーフィンするシーンがあったんですけど、70歳になって初めてサーフィンされたそうです!
サーフィンシーンは、ちょっとドキュメンタリーに近いと思います。良い波が来てほしくても、それは自然相手だし。僕はサーフィンシーンに何日間かかけられたので余裕があったんですが、皆さんは現地入りしてすぐサーフィンやってまたすぐ芝居を撮影するタイトなスケジュール。しかも荒れたら海に入れないし……安全第一ですからね。
今回は、天気にも恵まれて波のコンディションも上々だったんですが、泉谷さんとの日だけは、あまり波がたってなかったんですよ。で、僕が後ろから押しているシーンは、唯一行けそうな波が来たときで、案の定、後にも先にもそんな波はもう、来なかったです。あの波にはすごい助けられました。
その泉谷さんのサーフィンシーンを撮影した場所っていうのが、たまたまですが、大杉さんがパート1で、唯一ボードに乗れた場所だったんです。だから撮影が始まる前に、監督が「黙とうしましょう」って言って始まったんですが、守られている気がしましたね。

─── 大杉さん、実際に空から見ていて、波をくれたのかも?

そう思っちゃいますよね。
しかもその日、天候が崩れるかもしれないと言われていて、実際にギリギリ保っているような空だったんですが、「終わりです」となって撤収したらすぐ、すごい雨が降ってきて! 「いやあ、これは流れあるね~」と、そんな話になりました。

─── この映画、見ていてサーフィンやりたくなりますよね。特にお年寄りが挑戦している姿が、心温まるというか。

本当ですか? ありがとうございます。自然相手なので危険は絶対に伴うんですけど、条件などを無理しなければ、サーフィンって自然と触れ合えるすごく素敵なスポーツです。監督も僕もそうなんですけど、やっぱりサーフィンに気持ち的に助けられたり、教えられたりすることがたくさんあって。もちろん、「ライフ・オン・ザ・ロングボード」っていう映画を見て欲しいっていうのはあるんですけど、サーフィンも好きになってもらいたいです。
そして今回、オリンピックという要素が入ったのは、2020年に初めてオリンピックでサーフィンが公式種目になるってことで、そこを応援したいという強い気持ちもあるんです。映画を通じて、サーフィンがやりたいとか、サーファーの人が「やっぱサーフィンっていいよな」って再確認するとか、そんな風に感じていただいたら嬉しいです。

美しい種子島で得たもの

─── 光太郎は最初はダメ男で、どうなっちゃうんだろうって思ったところから成長してくのが、見応えありました。人間っていくつになっても変われるんだと、励まされました。

光太郎はクソ男です(笑) でも本当に今おっしゃったように、いくつになってもチャンスはあると思いますし、どういう形にせよ、人間はいつでも変われると思います。
今回も、種子島がロケ地に選ばれた理由なんですが、パート1で既にわかるように、海がとにかくキレイなんです。日本の中に、あれだけの世界に誇れる自然があるっていうことと、島の方たちの温かさが素晴らしいんだと、監督が最初に話していて。「光太郎の役作りは、自分自身でしてもらうのはもちろんなんだけど、島に行って感じたことを素直に出してほしい。今はまだ行ったことがないからわからないと思うけど、行ったらわかる」って言われました。そしたらまさに島のいろんな方に助けてもらいましたし、種子島自体の美しさにも魅了されましたし、こういう環境だからこそ、光太郎も心を開いたのかなと自然に思えました。人間再生という作品テーマに、あの場所がかなり大きく影響しているんじゃないかと、行って気付きました。

─── 「光太郎」だけではなく、吉沢さん自身も変わりました?

種子島で、かなり心開かされましたね。行って分かったんですけど、種子島って移住の人が多いんですよ。サーファーの9割くらいは移住組らしいです。本当に人が少なくて、波が良いですからね。で、移住してきた人たちは「受け入れてもらった」という思いが強いみたいで、ビジターの人たちにすごく優しい。移住に対する公共的なバックアップもあるし、そういう意味でも、受け入れてくれる場所なんだと感じました。

─── じゃあ本当に光太郎のように、都会から来て、仕事を種子島で探して定住する人もよくいるんですか?

いますね。短期の人も、長期の人もいますが。
ちょっとこう……立ち止まって人生を思い返せる場所なんじゃないでしょうか。この間も違う仕事で種子島を訪れたんですけど、なんだろう……気持ちがほぐれるというか。2回目だったからか、「帰ってきた」という感覚がありました。そういう場所でいてくれる種子島が、僕の中にあるっていうのは、宝です。

─── 喜多監督は、登場人物がその場所になじむような撮り方をされる方だと思うんですが、まさにそんな撮影だったんでしょうか?

あまり監督はアレコレ言わないんですけど、そうですね……あの、パート1のときもそうだったらしいんですが、ちょっとドキュメンタリーみたいでした。演技プランも考えましたけど、その瞬間のフラッシュアイデアを大事にした撮影でした。

─── 飽きたり、疲れたりするシーンがなくて。感覚的に、一気に見てしまう映画だったと思います。

ああ~、本当ですか? 嬉しいです!
空手家の角田信朗さんが出演してくださってますが、角田さん、サーフィンはやらないんですけど、「やあ、海上がって筋肉パンパンだよ」ってセリフ、アドリブでおっしゃったんですよ! そしてアドリブといえば竹中直人さんも、たくさん入れてます(笑)
とにかくそういう、その島でありそうなことをやりすぎず上手に言うと、監督が受け入れて映画に反映してくれるので、役者としてはすごくやりやすい環境でした。

─── 共演者さん同士は、和気あいあいな雰囲気だったんですか?

結構、飲みに行ったりしました。場所的に控室も特に用意できないんで、役者はだいたいその辺の流木で座ったり、海を見ていたり、近所の喫茶店にいたりとか自由にしていましたね。

─── 特に印象に残っているエピソードがあれば、教えてください。

先ほどの大杉さんに関する部分以外では、サーフィンのパートですね。本隊が来る前に、助監督さんとカメラマンさんとサーファー何人かという少数だったので、家族みたいな感じで動いていたんですよ。朝食食べて海入って、昼食食べて海入って……その数日間は本当に、映画を撮っているのか、サーフィンのトリップで来ているのかって感じでした(笑)純粋に笑顔になるし、撮影が終わった後は宿泊先の温泉に入りながら、サーフィンの話をして。この数日間は、かなり楽しかったです。

─── じゃあサーフィンは、撮影後に更にやりたくなりました?

撮影終わってから、ボードをロングからショートに変えました。楽しくなっちゃって(笑) サーフィンって、外からみているのもいいんですけど、中に入るとキレイだなとか怖いなとか、どちらの感情もプラスになると思うんです。自然の流れで沖に行くと、海流があったり、岸に戻されてぜんぜん出れなくなったりと、普段は絶対に体験できないことがあるので、何かしら得るものがあるんです。それはやっぱり、サーフィンをやった人にしかわからないから、興味があったら、安全の範囲内でやってほしいなと思います。

─── お年寄りのチャレンジャーもいるくらいだし……。

でもなかなか、種子島以外の場所ではできないかもしれないですね。やっぱり、人が多かったりするから……種子島は本当に恵まれています。

─── 環境のせいかな? 大人のはずの光太郎も、後半以降は可愛く見えてきました。

自分であまり意識してなかったんですが、今回の映画を見て、僕ちょっと若返った感がありましたね(笑)
ただ、光太郎は30歳前後という設定なんですけど、現実ではオリンピックの選手として選ばれる年齢は、だいたい10代後半から20代半ばくらい。光太郎がオリンピックに行くというのは、実はなかなかありえないんです。

─── 女性の登場人物でいえば、馬場ふみかさんがとても美しかったです。

もうみんな、僕と2人で並んだら、馬場さんしか見ていなかった。まあそうだろうなあ(笑) 馬場さんは結構サバサバした性格なので、とてもやりやすかったですね。

─── 光太郎がじょじょに成長していく様が、目が離せませんでした。

光太郎の最低さ加減を、どのラインにしようかなというのは、ある程度台本読んで決めました。また成長するにあたり、どこをきっかけにするかはちょっと考えました。
現場で「あ、そうか」と思ったのは、小さい子供が2人急にパッと出てくるシーンがあったのですが、そのリアクションに迷った時です。「何こいつら」って思うのか、「え、どうしたの?」って思うのか。ただ「何こいつら」だと酷すぎるし、更生できないと思ったので、止めました(笑) さすがに子供に対してのリアクションは、ねえ……。

─── どうしようもない男を演じるっていうのも、難しいんですね。

ただ、真っ直ぐすぎるくらい、真っ直ぐな人ではあります。社会的にはダメだと言われても、光太郎本人は一所懸命っていうところがあると思います。

─── 確かに、大人がすごく夢中になれることを、1つ見つけられるなら、それは素晴らしいです。

光太郎はわかりやすく、他人に対してダメですけどね……何か予定があっても、「海が良かったから、遅れちゃいました」とか言っちゃう。社会的にはダメですよね(笑)

─── 今回の撮影を通して、光太郎ではなく吉沢さん自身が成長したと感じたことは、ありますか?

好きなものを好きだと言える、少年のような思いを持つのは、やっぱり大事だと再確認しました。あとはサーフィンへの向き合い方が少し変わったかな。こんなにどっぷり、サーフィン漬けになったことは人生でなかったので、サーフィンをしていることで人生が豊かになっていくと感じられたことは、自分にとってプラスでした。都会にいたら心を開放する時間もなかなか少ないですし、そういう時間を持つことの大切さは、今回得た部分ですね。

─── では最後に。このインタビューを読んで、この作品に興味を持った読者に、一言お願いいたします。

人間模様が核となっている映画ですが、種子島の魅力と、種子島の人の良さがにじみ出ています。まず「キレイな島だな」っていう純粋な気持ちで見ていただいて、更に「サーフィンってすごい」と思っていただけたら嬉しいです。2020年オリンピックで初めて正式種目になるサーフィンを、この映画でバックアップできれば幸いです。

─── ありがとうございました。種子島、ぜひ行ってみたいです!

『Life on the Longboard 2ndWave』

出演:吉沢 悠 馬場ふみか 香里奈 立石ケン 森高愛・大方斐紗子 泉谷しげる 松原奈佑 南美沙 TEE 角田信朗 勝野洋/榎木孝明(特別出演)/竹中直人 ほか
監督:喜多一郎 脚本:喜多一郎 金杉弘子
プロデューサー:半田健 制作プロダクション:オフィスアッシュ
配給:NexTone 配給協力:ティ・ジョイ
公式サイト:http://lifeonthelongboard2.com
公開:2019年5月31日(金)より、新宿バルト9、鹿児島ミッテ10 ほか全国ロードショー!
©2019『Life on the Longboard 2ndWave』製作委員会

撮影/高橋那月、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴
スタイリスト/山田康史 ヘアメイク/佐々木愛

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