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『なつぞら』板橋駿谷、『まんぷく』安藤サクラ……朝ドラ俳優たちが見せる“若返り演技”の魅力

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 主人公のライフストーリーを描く朝ドラや大河ドラマでは、個性豊かな俳優陣が実年齢よりひとまわり以上若い役を演じる「若返り演技」が見どころのひとつになっている。

参考:『まんぷく』“老いの演技”が説得力を生む 安藤サクラと長谷川博己、夫婦の距離感の絶妙さ

 放送中の連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合)では、主人公・奥原なつ(広瀬すず)が通う十勝農業高校の番長・門倉努(板橋駿谷)が話題になった。現在34歳の板橋駿谷はこれまで舞台や映画を中心に活動。実年齢と16歳差の門倉を演じるにあたり「本当の高校生は高校生を演じようとはしないと思うので(中略)キャラクターを大事に演じました」と語っている。あえて年齢差を隠さずにキャラクターを前面に出した板橋の演技によって、強い印象を視聴者に与えた。

 大河ドラマ『西郷どん』(2018年・NHK総合)で主役を務めた鈴木亮平の出世作も朝ドラだ。『花子とアン』(2014年・NHK総合)で主人公・村岡花子(吉高由里子)を支える夫・英治を好演した。

 劇的な体重変化と徹底した役作りが話題に上ることも多い鈴木亮平だが、映画『俺物語!!』(2015年)では30キロの増量に加えて、実年齢(当時)より16時歳若い高校生の主人公を熱演。必要とあれば体を張り、年齢差のある演技をいとわない姿からはストイックな役者魂が見え隠れする。

 若返り演技といえば、安藤サクラを抜きに語ることはできない。『まんぷく』(NHK総合)で朝ドラ史上初のママさん女優としてヒロインの福子を演じた安藤サクラは、放送開始時に32歳だったが、18歳から50歳までをテンポよく演じきった。終わってみれば、笑顔で夫を支えた福子のイメージは安藤サクラ以外に考えられないほどで、子役を起用しない決断が奏功し、若返り演技の代表例となった。

 板橋駿谷や鈴木亮平、安藤サクラが年齢差のある役を演じることができるのは、卓越した演技力があってこそ。『なつぞら』の番長や『俺物語!!』の正義感の強い純情な男子、『まんぷく』でのカップヌードルの開発者夫妻など、“昭和感”が求められる場面で、3人の若返り演技は絶妙なハマり具合を見せていた。舞台や映画を中心に活動しパブリックイメージが固まっていなかったことが、若返りのフレッシュな印象につながっていると考えられる。

 一方で、フレッシュさとは逆にパブリックイメージを生かした事例もある。

 『ちりとてちん』(NHK総合)で主人公の叔父・小次郎を演じた京本政樹。年齢不詳の貴公子的なイメージをうまく利用し、劇中の回想シーンで実年齢より30歳以上若い高校生を違和感なく演じていた。

 また、2月に公開されサプライズヒットを起こした映画『翔んで埼玉』でGACKTが演じたのは、埼玉解放戦線所属の転校生・麻実麗。その実年齢差はなんと27歳! オファー当初は「即答で断った」というが、ふたを開けてみれば、アメリカ帰りで長身・長髪のミステリアスな高校生というキャラクターがGACKT自身のアーティスト像と完璧にマッチ。ファンタジックな作品設定をいっそう強固にする神キャスティングとなった。ちなみに『翔んで埼玉』には、伝説の埼玉県民役で京本政樹も出演しており、GACKTとの異次元の共演にも注目だ。

 若返り演技とひとくちに言ってもその取り組み方は俳優によってさまざまだ。年齢のギャップや役者の個性を前面に押し出した演技が予想外の効果を生むこともしばしばである。ファンにとって若返り演技は、ふだんと違う俳優の姿を見ることができる貴重な機会でもある。

 『なつぞら』に続く朝ドラ『スカーレット』(NHK総合)では、戸田恵梨香が主人公の中学生時代を演じることが報じられている。新たに登場するキャラクターたちと、どんな若返り演技を見せてくれるのか、こちらも楽しみだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。