監督・河瀬直美×原作・辻村深月『朝が来る』2020年公開へ 「映画化できる喜びに打ち震えている」
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辻村深月の長編小説『朝が来る』が、河瀬直美監督によって映画化され、2020年に公開されることが決定した。
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故・樹木希林さんを主演に迎え、国内外でヒットを記録した『あん』、第70回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に選出され、エキュメニカル審査員賞を受賞した『光』、ジュリエット・ビノシュを迎えオール奈良ロケで挑んだ『Vision』に次ぐ新作として河瀬監督が題材に選んだのは、辻村による長編小説『朝が来る』。
長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。それぞれの人生を丹念に描いた原作小説は、第13回本屋大賞にて第5位に選出され、17万部を超えるベストセラーとなったミステリードラマだ。
既に4月16日に都内でクランクインをしており、東京の湾岸エリア、栃木、奈良、広島、似島(広島市)、横浜と、日本全国6か所で撮影を敢行中。クランクアップは6月上旬を予定している。
映画化発表に際し、監督と脚本を務める河瀬と原作の辻村からコメントが寄せられた。
【河瀬直美監督 コメント】
撮影中、涙する場面に遭遇する時がある。
それは、俳優達がその日常を生きて、脚本からもはみ出る感情を発露させた瞬間。
こういった現場は自分にとっても稀だと実感している。とにかく俳優が素晴らしい。生きているのだ。息づいているのだ。
日本全国6か所のロケ場所で撮影は決行されている。
海があり、森があり、都市があり、旧所名跡があり、それぞれの街の特長が四季を通して旅の記録を「記憶」するように映画を創っている。
生まれるはずのなかった命はやがて望んでも我が子を授からない夫婦の元にやって来る運命。
そこに差し込む光、眩いばかりのそれが、雨上がりの世界を浄化させてゆく光景と相まって、人々の運命を切り開く物語。
原作『朝が来る』をこの世界に誕生させた辻村深月の才能に嫉妬する。その物語を映画化できる喜びに打ち震えている。
小説の中で、二人の母をつなぐ子供「朝斗」のまなざしが表現されている部分を読んだとき、ああ、この世界を映像化できれば素晴らしいなと感じた。その「まなざし」が見る未来を美しく描くことができればと願っている。
誰しもが誰かの「子」であり、「母」から生まれてきた事実を思えば、この物語の根幹で心揺さぶられる感情があるだろう。
そこには、この世界を美しいと想える、無垢な魂が見た、世界の始まりがある。
【原作:辻村深月 コメント】
「この映画を撮るにあたって、朝斗のまなざしというものは必要不可欠だと思っています」
河瀬直美監督と初めてお会いしたホテルのラウンジで、正面に立った監督が開口一番、私をまっすぐに見つめて、そう言った。
まだ互いに自己紹介もしていない、目が合った瞬間のことだった。
原作『朝が来る』はよく、産みの母親と育ての母親、「二人の母の物語」だと言われてきた。しかし、河瀬監督はそこに、幼い「朝斗」のまなざしなくしては成立しない世界をはっきり見ておられた。
その瞬間、震えるような感謝とともに、この人に、朝斗と二人の母親を、『朝が来る』の世界を託したい、と強く思った。
脚本を読みながら、河瀬監督に何度も感謝を覚えた。
それは、彼らの物語を最初に生み出した私以上に、朝斗の、ひかりの、佐都子の、清和のことを考え、彼らの思いがより強く届くためにどうしたらよいのかを、心を砕いて考えてくれている人がいるということに対する途方もない感謝だ。作家として幸せを感じた。
ラスト、「原作でもこうすればよかった」と思える構成がある。けれど私が小説で書いてもきっとその光景には届かなかった。映画だからこそ監督が彼らをここに送り届けてくれたのだということが、はっきりわかる。
映画『朝が来る』。
私が見たもの、河瀬監督がその先に見たもの、幼い子ども「朝斗」が見た世界を、できることなら、あなたにもぜひ見てほしい。
※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記
(リアルサウンド編集部)