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本日から公開! 塩田明彦監督が語る映画『さよならくちびる』

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『さよならくちびる』を手がけた塩田明彦監督 (c)2019「さよならくちびる」製作委員会

『害虫』や『抱きしめたい』など数々の名作を手がけてきた塩田明彦監督が手がけるオリジナル作品『さよならくちびる』が本日から公開されている。本作は、解散寸前の女性ギター・デュオと付き人の男が織りなすロードムービーで、劇中は3人の感情や想いが複雑に絡み合う。自ら脚本も手がけた塩田監督はどのような経緯を経て、本作を完成させたのだろうか?

本作は、塩田監督のもとにプロデューサーから“小松奈菜と門脇麦を共演させるアイデアはありますか?”という提案が届いたところから始まったという。「このふたりを組み合わせて映画をつくるとは何と素晴らしい企画なんだ!と思いまして(笑)。ぜひとも参加したいと思いました。さらにプロデューサーから“このふたりに男性をひとり加えて話を作りたい”と提案があり、それが結果的には成田(凌)くんになったわけですけど、そこから話を考え出して“人気デュオの女性ふたりと付き人の男”が解散ツアーをする話になりました」

監督が語る通り、本作ではギター・デュオ“ハルレオ”と付き人のシマが全国ツアーの物語だ。ハルとレオの関係は悪く、ふたりはツアーが終わった段階でコンビを解散することを決めている。「だから、最初からこの映画がロードムービーになることはわかっていましたし、大阪、新潟、北海道あたりは実際にロケ撮影をしています。ただ気をつけたのは、その街を紹介するようなショットは撮らない。大阪でも通天閣だったり、ミナミの雑踏はあえて撮りませんでした。というのも、音楽でツアーをしている人に話を聞くと、移動して、ホテルに入って、ライブハウスに行って、また次の場所に行く……そのくり返しで、意外に土地の記憶が残らない。そんな、移動しているのに街の記憶があるような、ないような感じを再現したくて。だから贅沢して大阪まで行って撮影しているんですけど、どこの街だかわからない場所を選んで撮影していきました(笑)」

3人の乗り込んだ車は街から街へと移動し、その景色は移り変わっていくが、彼らの関係は修復することはない。塩田監督は3人の感情が行き場をなくしてしまった状況を描くために、映像ではあえて“時間の流れ”を意識したという。「3人の行き詰った関係性と裏腹に、絶えず時間が流れていて止まっていない感じがほしいと。だから、この映画で物語の次元とは別に狙っていたのは“風”のイメージでした。この映画はロードムービーなので大型扇風機を持って移動することは難しいですけど、家庭用の扇風機でもいいので常備してくれとお願いして、この映画では常に風が吹いているんだってことは撮影前の段階でスタッフに言いました。ところが実際の撮影になったら行く先々でびっくりするほど見事に風が吹いてくれて。でも、それも作り手が望めばこそなんです。強く望むことで映画の神様に声を届ける(笑)」

映画は3人の解散ツアーと、彼らの過去が入り交ざった構成で描かれるが、塩田監督は過去の描写を極限まで切り詰め、観客に想像させる余地を残している。「もし“ハルレオ”が実在したとします。映像資料が残ってはいるけど、プライベートな部分の記録はバッサリない状態。それでも存在するものだけをつなぎ合わせて再現ドキュメンタリーを作っていくような構成にしたいと思いました。そうやって断片をつなぎ合わせることで見えてくるものをすくいとっていく。一応、ハルレオが結成されてから解散ツアーに出るまでのバックストーリーは作ってあって、俳優には説明してあるんですけど、流れをすべてつくった上でバッサリ切る(笑)。だから俳優には『流れを頭に置いた上で演じてくれたら、ちゃんと伝わるから大丈夫』と伝えました」

ハルとレオの間に何が起こったのだろう? ふたりとシマはどんな時間を過ごしてきたのだろう? 観客は断片的に提示されるシーンやセリフから想像を膨らませながら、3人の“最後の旅”を見守ることになるだろう。ちなみに、3人がツアーを終えた後に迎える結末は監督の中では当初、構想がなかったという。「僕は設定だったり、それぞれの背景を考えてシナリオを書き始めるんですけど、ラストがどうなるのかはその段階ではわかってないんです。結末に関しては“オープン”で、自分で書きながらもどうやって終わるのかわかっていないので、結末までくると自分で書いてるのに“ああ! そう来たか!”って(笑)。というか、今回の映画は“そうならざるを得ないな”という結末になりました。だから初稿の段階から現在のラストになっています」

それぞれの感情がすれ違う3人、それぞれが自分の想いや感情や過去に決着をつけられないでいる3人は、短い旅を終えて帰還した瞬間に、どんな答えを見つけるのだろうか?

『さよならくちびる』
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