wacci「別の人の彼女になったよ」、なぜロングヒット? リアルな歌詞が生まれた背景に迫る
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昨年8月22日に配信リリースされた、wacciの「別の人の彼女になったよ」をご存知だろうか。印象的なタイトルとリアルな歌詞がSNSを中心に大きな話題となり、カバー動画が次々にアップされ、配信リリース以後ストリーミング再生回数は徐々に増加。LINE MUSICのリアルタイムランキングで1位を獲得し、MVの再生回数は350万回を突破した(参考:M-ON! MUSIC)。また、YouTubeのコメント欄には連日リスナーが自分の恋愛エピソードを書き込むなど、リリースから9カ月経た今なお大きな支持を得ている。そこで本稿では同楽曲の魅力、そしてヒットの理由について、作詞作曲を手掛けた橋口洋平(Vo/Gt)へのメールインタビューを交えながら考察したい。
リアリティある歌詞が生まれた背景
この曲のそもそもの始まりは、iPhoneにメモしていた「別の人の彼女になったよ」という言葉。ここから膨らませて作った曲で、タイトルは当初から何となく決まっていたのだという。
「歌詞を書く時に意識していることの一つに、『違う視点から見てみる』というのがあって。自分にとっては単に『新しい彼氏が出来たよ』なんですけど、仮に前の彼氏に伝えるなら『(あなたとは)別の人の彼女になったよ』になる。それが、より登場人物やストーリーに幅が広がった感じがして気に入ったので、この言葉を使いました」
一見簡潔だが、主人公と“前の彼”、“今の彼”と3人の存在を感じさせる、ストーリー性のあるタイトルだ。タイトルに惹かれ、「どういうこと?」とじっくり歌詞に耳を傾けるリスナーも多いだろう。
また、「恋愛では“好き”と“幸せ”が必ずしもイコールではないことがある」と語る橋口。歌詞のストーリーについては、“今の彼”に対して不満もなく幸せだが、一緒にいて楽で、素を存分に出せていた“前の彼”が心の中に残っている、という友人が周囲に何人かいたのだという。そんな「少しズルくてせつない気持ち」を女性視点で表現したのがこの曲だ。歌詞に共感しているリスナーが多いことからも、こうした思いを抱く人は少なくないことがわかる。
〈一緒にフェスで大はしゃぎとかはしないタイプだけど〉〈映画見てても私より泣いてることなんてないし〉といった歌詞に登場する具体的なエピソードもリアリティを感じさせ、共感を得る理由の1つ。橋口自身のエピソードではないそうだが、歌詞に出てくる“前の彼”“今の彼”“自分”の登場人物3人を掘り下げようと、こうした描写を盛り込んだという。やはりこれも橋口の友人からインスピレーションを受けたそうで、「色んな人の恋愛話を聞いてきたので、それを受けてこのシチュエーションの時に僕がイメージする“元の彼”のキャラと“今の彼”のキャラがしっかり伝わるエピソードを書いたつもりです」と教えてくれた。
そんな中でも橋口が特に気に入っているのは 〈キスや態度だけで終わらせたりせずにちゃんと好きだという言葉でくれるの〉〈大きな声で愚痴を言うような私ではなくて それをすると少しだけ叱られてしまうから〉という“前の彼”と“今の彼”を比較して描写した歌詞。「それぞれのキャラクターもしっかり伝わる”あるある”を書けた気がします」と語る。
ヒットの要因は歌詞×メロディ×キー
ヒットの実感は未だにないという橋口だが、1つのきっかけとなったのは2019年1月20日にオンエアされた『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)。いしわたり淳治が「2018年のベストソング10」の1つとして紹介し、一気にこの曲が広まった。橋口はこのほかにも、カバー動画が次々とアップされたり、今年3月に公開されたMVに書き込まれたコメントがTwitterでも話題になるなど、様々な要因が重なったのでは、と予想した。
「別の人の彼女になったよ」は、サビに向けだんだんと盛り上がっていく王道のJ-POPらしい構成。特にサビ直前〜サビは感情を込めて声を張り上げたくなる切ないメロディと歌詞になっている。〈だからもう会えないな ごめんね〉と歌い上げる箇所は聴いていても気持ちが良い。キーが高くないので男性にも歌いやすく、かつ女性目線の歌詞なので、もちろん女性が歌っても違和感がない。『関ジャム』で取り上げられたことが大きなきっかけであるのは間違いないが、先に述べたような歌詞への“共感”、そして切ないメロディや歌いやすい(=カバーしやすい)キーという楽曲そのものの魅力が支持され、広まっていったと言えるだろう。
「別の人の彼女になったよ」を初めてスタッフに聴かせた時には賛否両論がはっきり分かれたそう。橋口はリリース後の様々な反響を受け、「押し切ってリリースして良かったなと思います。誰かに教えたくなる歌、また自分のエピソードを重ねたくなる歌ってことだと思うので、素直に嬉しいです」とコメントを寄せた。この曲を通じ、たくさんの出会いやきっかけがあったというwacci。これからもその歌声とメロディはより多くの人に届いていくはずだ。
(文=村上夏菜)
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