藤本賞受賞した是枝裕和、「万引き家族」の内幕明かす「当たらなくてもいいかなと」
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是枝裕和
本日5月31日、東京・パレスホテル東京にて第38回藤本賞の授賞式が開催された。
映画演劇文化協会が主催する藤本賞は、日本で唯一映画製作者を中心に表彰するもの。今年度は、第71回カンヌ国際映画祭で最優秀賞にあたるパルムドールを受賞した「万引き家族」の是枝裕和が藤本賞に輝いた。
「チームを代表していただきます」と話した是枝は、「今回の映画については当たらなくてもいいかなという雰囲気がプロデュースチームにありました。内容的に万引きや貧困という題材なので、公開規模も広げず製作費も多くなくていいよねという感じで。興行収入のことはあまり考えずにやりたいことをやろうと思っていました」と内幕を明かす。「スタートとゴールがこんなに違っていて、プロデューサーとしてこれでよかったのか」と笑いつつ、「映画って本当に不思議な生まれ方と育ち方をするんだなと感じています」と感慨深げな表情を見せていた。
また「歩いても歩いても」の企画を担当した安田匡裕が特別賞を受賞した第28回藤本賞を回想し、「安田さんがその年の3月に亡くなられて、代わりに僕が出席させていただきました。作るたびに赤字だった時代、オリジナルにこだわっていた僕を励まして支えてくれ、オリジナルで作ることの面白さと尊さを教えてくれました」と安田へ感謝の念を表す。「生前、賞とは無縁のプロデューサーだったとは思いますが、亡くなって最初に評価していただいたのが藤本賞でした。そのときは本当にうれしかったです。安田さんにヒット作を撮る姿を見せられなかったのはとても残念なんですけれども、墓前に報告に行ければなと思っております」と挨拶を終えた。
特別賞を受賞した「翔んで埼玉」のプロデューサー・若松央樹は、まず「埼玉県民の皆様に嫌われたらおしまいだと思っていました。埼玉県民の懐の深さに感謝したいと思います」と言い、会場に笑いを起こす。「まさかまさかの幸運が続く作品でございました。企画が通ったこともまさか、GACKTさんが高校生役を引き受けてくれたのもまさか、埼玉と千葉の合戦のシーンなどで著名な方々に写真を貸していただけたのもまさか」と予想外にうれしい展開があったと述べる。続けて「まさかの大ヒットで、極めつけはこの藤本賞。本当にこんな映画でよかったんでしょうか」と謙遜し、再び会場は笑いに包まれた。
奨励賞は「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」のプロデューサー・増本淳が手にした。増本は「是枝監督の『最悪コケてもいいから』というような話が先ほどありましたが、“コード・ブルーは絶対当たるよな”っていう雰囲気が社内にありまして」と当時を振り返る。同じくフジテレビに勤める若松の名を出し、「横を見ると若松さんはのびのび楽しそうに『翔んで埼玉』をやっていて(笑)。これはなんなんだろう、いつになったら解放されるんだろう」と大ヒットの裏で重圧と闘っていたエピソードを披露。ドラマ版での取材には丸1年を費やし、番組として放送するかも決まっていなかったという経緯を説明つつ、「売れてるマンガを探してくる必要もないし、特別な仕掛けをする必要もない。自分が興味を持ったものをじっくり調べていったら、ドラマになって映画になって。そういう可能性があることをフジテレビと東宝が示してくれたことに感謝しています」と締めた。
「カメラを止めるな!」で新人賞を獲得した上田慎一郎は、新作のクランクアップと重なり欠席。代わりに同作品のプロデューサーである市橋浩治が登壇し「第2の『カメ止め』と言われている作品が多数あるようでして、それが注目されて広がっていくのは僕も上田監督も喜んでますし、インディーズの中で活動していたメンバーはそういう広がりをうれしく思っている」とインディーズ作品に懸けてきた思いを垣間見せた。また、行列ができる映画としてマスコミに取り上げられたことについては、「初めに上映した2館がWeb予約でチケットが取れないところだったので……」と笑顔でからくりを明かした。