平井堅、『町田くんの世界』主題歌はラブソングのスタンダードに? 楽曲で描かれた“恋”と“優しさ”
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平井堅のライフワークとでもいうべきアコースティックライブ『Ken’s Bar』の20周年アニバーサリーライブ『Ken’s Bar 20th Anniversary Special !! vol.4』のセミファイナル、5月21日の東京・日本武道館公演を観た。オリジナル曲のほかに、「カムフラージュ」(竹内まりや)や「ガラスの十代」(光GENJI)をカバー。光と影のコントラストが鮮やかなその歌から薫り立つ、なんともいえない色気が切なさに変わる平井節で、全ての人を自分の世界に引き込む。その中でひと際瑞々しさを放っていたのが、ライブの後半で披露した最新曲「いてもたっても」だった。
この曲は、映画『町田くんの世界』(6月7日公開)の主題歌になっており、平井が脚本を読み「町田君の見ている世界に音をつけられたら」という思いで作り上げた、“初恋”がテーマの歌だ。すべての人をわけ隔てなく愛する物語の主人公・町田くんは、大きな“愛”は知っているが、“恋”を知らない。この日、平井は「曲とアレンジのかわいらしさに、ボーカルがついていけなくて苦労しました」と語り同曲を披露してくれたが、恋という世代関係なく誰もが通り経験する“特別な時間”の、得体のしれない“恋愛感情”という制御不能の想いを、見事に表現していた。町田くんが経験したことがない“わからない感情”に、大きな優しさを感じる歌で、町田くん、そして全ての人に寄り添うように歌っていた。
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平井の作品には、『Ken’s Bar 20th Anniversary Special !! vol.4』のオープニングナンバーでもあった「half of me」のような失恋ソングも多い。失恋特有の、鈍い痛みを表現した歌詞とメロディは優しく包み込まれるような安心感と共に、忘れたい、忘れられないという“切なさ”も感じさせてくれる。冒頭で、平井の歌を「薫り立つ色気が切なさに変わる」と表現したが、こと恋愛ソングにおいてはこの“切なさ”が大きな感動につながる。だからこそ、平井は映画やドラマ主題歌を求められ、手がける機会が多いのではないだろうか。「瞳をとじて」(『世界の中心で、愛をさけぶ』)、「哀歌(エレジー)」(『愛の流刑地』)、「僕は君に恋をする」(『僕の初恋をキミに捧ぐ』)をはじめ、ラブストーリーとの相性の良さは折り紙付きだが、もちろんラブストーリーだけではなく、「僕の心をつくってよ」(『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』)など幅広いテーマの作品で、平井の歌は“痛み”にもどうしようもないもどかしい思いにも寄り添ってくれる。平井の声、日常のその先を切り取ったストレートな歌詞、そして素晴らしい表現力が三位一体となり、瞬時に映像となって浮かんでくる。
“恋をすると人はどうなるのか”というテーマのもと、「いてもたっても」のミュージックビデオでは、恋が始まった時のまるで魔法にかけられたような、あの、いてもたってもいられない気持ちを表現するため平井は魔法使いに変身している。そう来たか! と思わせてくれる平井のポップでカラフル、そして毒っ気も忘れないクリエイティブには、いつも感心させられる。
人生も恋愛も一筋縄ではいかない。そんなことはわかっていると思いながらも、その瞬間瞬間、人は様々な想いを巡らせ、時には自分を見失い、感情は制御不能となり、予想もしていない方向へ進んだりもする。そんな時に平井堅の歌は、常に心に寄り添い、背中を抱きしめ、そして優しく押してくれる。「いてもたっても」は、最も純粋な恋の気持ちを描いた名曲として、平井の代表曲のひとつとしてだけではなく、恋愛ソングのスタンダードになりそうな気がする。
(文=田中久勝)
■リリース情報
「いてもたっても」
5月29日(水)
平井堅 楽曲ストリーミング配信開始
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