Why Don’t Weの魅力は広がり続ける 初のジャパンツアーZepp Tokyo公演レポ
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Why Don’t Weがやって来る、ヤア! ヤア! ヤア! 本国・アメリカのiTunes総合アルバムチャート1位に輝いた1stアルバム『8 Letters』に伴うワールドツアー、待望の日本上陸だ。あちらではすでにアリーナ級アーティストゆえ、ライブハウスでそのパフォーマンスを体感できる日本のファンは、ラッキーと言うしかない。昨年夏の『SUMMER SONIC2018』での初来日での知名度は、まだまだだったと記憶するが、今日はフロアも2階も客入りは上々。高まる人気を肌で感じつつ、東名阪4公演の3本目、Zepp Tokyo公演の幕が開く。
まずは、オープニングアクトを務めるEBEN FRANCKEWITZが会場をウォームアップ。ラップ、ボーカル、ラガっぽいフロウなどを駆使して、たった一人でぐいぐい盛り上げるパーティースタイル。すでに彼を知るファンも多く、一緒に歌ったり声援を飛ばしたり、想像以上の熱烈歓迎ぶりに感激したEBENも「Oh My Goodness!」を連発して大張り切り。たっぷり30分間、ウォームアップ以上の仕事をして、さあいよいよWhy Don’t Weへバトンタッチだ。
暗転と共に、おそらく95%以上を占めるだろう女子ファンの嬌声が沸き上がる。ステージに置かれたのは、5つのお立ち台のみ。SEと共に一人ずつメンバーが現れてスポットを浴びる、シンプルだが効果的な演出に、フロアはすでに大興奮だ。エド・シーランからの提供曲「Trust Fund Baby」を皮切りに、「M.I.A」ではコミカルなロボット風振付を見せたり、「Choose」では息の合ったフォーメーションでステップを踏んだり。ちょっとしたアクションに大歓声が飛ぶ、アイドル風の盛り上がりだが、やってることは実にクールな本格派ベースミュージックや、ヒップホップ、ダンスミュージック。しっかり重低音を聴かせた音響もばっちりだ。
「トキオー、コンニチワ、アリガト!」
スタイリッシュな黒の衣装とシルバーのチェーン、見た目は男らしい5人だがしゃべりだすとやはり少年だなと思う、そのギャップがいい感じ。ミドルバラードの「Hard」からラテングルーヴィーな「Friends」へ、セットはシンプルだが背後に映るアニメやカラフルな映像のおかげで視覚的に飽きさせない。
スクリーンでは、都会の空を魚が優雅に泳いでいる。わずかの間に白い衣装に早着替えを済ませると、スロー&メロウな「In Too Deep」からエレクトロなダンスチューン「Nobody Gotta Know」へ、さらに「I Depend On You」「Runner」と、アップテンポの曲を短く繋げるスピーディーな展開が心地よい。「Nobody Gotta Know」の、スタンドマイクを使ったトリッキーなパフォーマンスもばっちり決まった。「Why Don’t We Just」の爽やかな曲調と、美しい青い海と空の映像もぴったり寄り添う。そして、なんたって凄いのは、英語のリリックをほとんどの観客が唱和すること。みんな英語が話せる? それとも今日のために覚えた? 素晴らしい一体感だ。
Why Don’t Weといえば、Instagramのフォロワー390万人(各メンバーを合計すると約1400万人)をはじめ、SNSでのファンとの繋がりを重視してきたグループ。その歴史を動画で振り返る、スクリーンに映る3年前、2年前のメンバーの表情のあまりの幼さに驚いているうちに、鮮やかな赤い服に着替えた今の5人が再登場。このセクションはダニエルが大活躍で、DTM機材を器用に操りながら次々とビートを繰り出して盛り上げ、5人で美しいハーモニーを乗せるなど、クリエイターとしての底力を見せてくれた。この5人、やはり只者じゃない。
「トゥナイト、ベリー・スペシャル・ナイト!」
ここでなんと、予期せぬハプニング。ジョナの一声をきっかけに、登場したのはイチゴとクリームの巨大なケーキ。そう、今日、5月27日はメンバー最年少、ザックの18歳のバースデー。みんなで「ハッピーバースデー」を大合唱して盛大に祝う、こんなスペシャルなシーンを見られたのは、世界中で今ここにいるファンだけ。やっぱり、日本のファンはラッキーだ。
さあここからいよいよライブ後半、2016年のデビューシングル「Talking You」から「These Girls」「Hooked」へ、ヒットチューンを連ねて一気に走る。「Talking You」の5人のアカペラは痺れるほどかっこよかったし、重厚なグルーヴの「Hooked」の、大人びた表情もいい。ジョナとダニエルは見るからに落ち着いた安定感があり、フードをかぶったコービンはストリート風、ジャックとザックはカジュアル風。遠目からでもはっきり判る、キャラ立ちの良さもWhy Don’t Weの大きな特徴だ。思い切りアッパーなダンスチューン「Talk」を歌い踊る、キレのいいステップに合わせて盛大なクラップを送るオーディエンス。楽しい時間が過ぎるのは早い。
「みんな、夢は持ってる? その夢をあきらめないでほしい。僕らはあきらめなかったから、今このステージに立ててるんだ」
コービンの感動的なMCは、あとで公式レポートで確認したもの。だが英語を解しない筆者でも、“Chasing Dreams”“Dreams Come True!”と力強く語ったこの夜のメッセージは、しっかりと伝わった。そこからの「Big Plans」の熱い盛り上がりと、ロサンゼルスの名所の風景をバックに歌った「Cold in LA」のせつなく美しいメロディが胸に沁みる。Why Don’t Weが掲げるメッセージは常に前向きだ。
鳴りやまない“Why Don’t We!”コールに応えて、アンコールでもうひと盛り上がり。今年の1月から続く毎月連続リリースの第3弾、グラミー受賞ラッパー、マックルモアとのコラボ曲「I Don’t Belong In This Club」を歌う5人はすっかりノリノリで、スクリーンに映るMVに合わせ、おもちゃのメガネをかけておどけたり、トランペットの吹き真似をしたり。最後まで明るく楽しく、ナチュラルな魅力を振りまいて「アリガトー!」とステージを去る5人の笑顔と、手を振るファンの笑顔が重なり合う。
それぞれソロ活動をしていた5人が、グループを結成する時に、ザックが言ったと伝えられる「Why don’t we form a boy band?」という言葉。Why Don’t Weの元々の意味、「一緒にしてみない?」という言葉はきっと、メンバーだけじゃない、全てのファンを巻き込む合言葉だ。SNSやYouTube、ストリーミングやライブを通じて、Why Don’t Weの魅力が広がり続けることを確信させる、ファンタスティックな夜だった。
(文=宮本英夫)