山田三郎、神宮寺寂雷、有栖川帝統……ヒプノシスマイク、各キャラクターのラップスタイルに注目
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2017年にスタートした男性声優12人によるラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』。4月に発売された1stフルアルバム『Enter the Hypnosis Microphone』は初週14万枚以上を売り上げ、オリコン週間アルバムランキングで初登場2位を獲得。さらに2018年12月には『少年マガジンエッジ』『月刊少年シリウス』『月刊コミックZERO-SUM』の3誌でコミカライズがスタート。今年中にはアプリゲーム化も予定されており、音楽を原作としたメディアミックスも本格化してきている。
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このように爆発的な人気を集めているヒプノシスマイクだが、人気の理由として“声優とラップの組み合わせ”“個性豊かなキャラクター”“楽曲のクオリティー”などが挙げられる。特に声を扱うプロである声優と言葉を巧みに操るラップという音楽は、ありそうでなかった斬新な組み合わせで非常に相性がよかったと言える。実際に楽曲では声優たちが演じるキャラクターに合わせて、声の高いラップや低いラップ、早口なラップや喋りっぽいラップなど様々なラップスタイルを披露している。
そこで本稿ではヒプノシスマイクの各ディビジョンから1名ずつキャラクターをピックアップして、声優たちのラップスタイルの特徴を見ていきたい。
・あどけなさが残る声とフリーキーなフロウの山田三郎(Buster Bros!!!)
山田三郎はイケブクロ・ディビジョンの山田家三兄弟の末っ子で、不良だった兄たちとは違い何でもそつなくこなす天才肌。人当たりはいいがひん曲がった性格で、自分より下だと思った人間には小馬鹿にしたような態度をとるので、友達は少ないというキャラクター設定である。
ヒプノシスマイクのキャラクターの中では最年少(14歳)ということもあり、山田三郎役の天﨑滉平のラップスタイルはあどけない少年のような高い声と早口でフリーキーなフロウが特徴だ。あえてところどころリズムを外してグルーヴ感を生み出すフロウはラップのスキルを感じさせる。
またリリックもどこか世の中を冷めた目で見て人を小馬鹿にしたような内容なので、小悪魔的な山田三郎というキャラクターを見事に表現していると言えるだろう。
・ドスの効いた低音ラップの毒島メイソン理鶯(MAD TRIGGER CREW)
ヨコハマ・ディビジョンの毒島メイソン理鶯は、父がアメリカ人・母が日本人のハーフで元海軍の一等軍曹。元軍人らしく、隙を見せず敵に対しては容赦しないが、普段は穏やかで人に尽くすことが好きで、料理の腕は「一応」プロ級。
ハーフの元軍人で隙を見せないというキャラクターのため、191cmの長身から放たれるドスの効いた低音ボイスと固く韻を踏んでいくフロウが特徴的だ。毒島メイソン理鶯を演じる神尾晋一郎があえて抑揚をつけない低音ラップをすることで、毒島メイソン理鶯の独特なキャラクターが引き立っている。もしスタイルが似ているラッパーをあげるとしたら、先日約7年ぶりの再始動を発表したNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのXBSに近いだろう。
わりと高音でスムーズなラップをするキャラクターが多いヒプノシスマイクの中でも、低音でざらついたラップをする毒島メイソン理鶯は非常に特徴的なキャラクターのひとりである。
・ギャンブラーらしい力強くタイトなラップの有栖川帝統(Fling Posse)
シブヤ・ディビジョンの有栖川帝統はギャンブラーだ。有り金はもちろん、自分の命すら賭けのテーブルに載せるほどのギャンブル狂。地道や堅実といった言葉が大嫌いで、生まれ持った強運で生き残ってきた。また7月7日生まれ、177cm、77kgとラッキーセブンにこだわったキャラクター設定だ。
有栖川帝統を演じる野津山幸宏はヒプノシスマイクがデビュー作という新人声優ではあるが、それを感じさせないスキルと勢いのあるラップを披露している。少しハスキーで滑舌のいい声とタイトにビートを乗りこなすフロウで耳障りのいいバイブスを生み出している。
シブヤ・ディビジョンでは、ファッションデザイナーの飴村乱数と作家の夢野幻太郎が滑らかでフリーキーなラップをする中で、有栖川帝統の力強くタイトなラップはグループの中でいいインパクトを与えている。
・ポエトリーリーディングのようなラップスタイルの神宮寺寂雷(麻天狼)
シンジュク・ディビジョンの神宮寺寂雷は、長身痩躯でミステリアスな雰囲気を持っている天才医師。座禅と釣りが趣味で基本的には穏やかな性格だが、変人を好むという一面もある。
神宮寺寂雷役の速水奨はヒプノシスマイクの中では大ベテランの声優である。速水奨の深みのあるバリトンボイスから放たれるポエトリーリーディングのような独特なラップにより、ミステリアスな医師という神宮寺寂雷のキャラクターをうまく表現している。神宮寺寂雷のソロ曲「迷宮壁」では、ラッパーのGADOROが作詞を担当しているが、彼もまたポエトリーリーディングのようなフロウが特徴のラッパーだ。神宮寺寂雷のラップは、GADOROの「クズ」に通じるものがあると感じる。
ストーリー性のある壮大なリリックをビートにのせて喋るようにラップする神宮寺寂雷のスタイルは、ヒプノシスマイクのキャラクターの中でも唯一無二と言える。
このように様々なライムやフロウを駆使したラップスタイルで、ヒプノシスマイクのキャラクターを演じている声優たち。元々ヒップホップに精通していた山田一郎役の木村昴以外はヒプノシスマイクでラップに初挑戦ということだが、やはりみなプロの声優である。耳がよく、もちろん滑舌や声もいいので、非常にラップがうまい。声優としてリリックの内容を汲み取った上でキャラクターを演じるので、ラップに感情を乗せるのがうまいのだ。ぜひ今回紹介したキャラクター以外のラップスタイルもチェックしてみてほしい。(橋本洋平)