ウディ・アレン×KERA『キネマと恋人』を再び
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撮影:西村裕介
6月8日(土)よりケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の台本・演出による『キネマと恋人』が上演される。2016年の初演時には大きな話題を呼び、「悲劇喜劇」賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、読売文学賞 戯曲・シナリオ賞などを獲得した本作は、ウディ・アレンの映画『カイロの紫のバラ』にインスパイアを受け、舞台背景を1930年の日本に置き換えたもの。
小さな港町のレストランで働いて無職の夫を支え、映画を唯一の楽しみにしているハルコ(緒川たまき)は、ある日、映画の登場人物・寅蔵(妻夫木聡)と思いがけない形で出会うことに……というファンタジックなストーリーの流れは映画と同じだが、今作にはさまざまな立場の人間が加わり、より多くの関係性が舞台に立ち現れ、笑いも増幅されていく。
KERA作品では、登場人物が時折ふしぎな方言を話すことがあるが、今作では、作品全体に架空の方言が使われている。どこにも実在しない言葉のはずなのに、いつの間にか観客の耳に馴染んでしまう。
初演時からKERA自身が再演を熱望していた今作。会場をシアタートラムから世田谷パブリックシアターにスケールアップし、再集結した初演時のメンバーがそれぞれの3年分の経験を投入して、進化した『キネマと恋人』を見せてくれることだろう。妻夫木聡の一人二役、小野寺修二の振付、上田大樹の映像、趣向を凝らした演出……と、見どころをあげればきりがないが、何よりも演劇ならではの面白さが詰まった作品であることは間違いない。
6月23日(日)まで同劇場にて上演した後、北九州、兵庫、名古屋、盛岡、新潟を巡演する。
文:釣木文恵