劇場版「タガタメ」制作会社へ潜入、河森正治がゲームのアニメ化に臨んだ理由とは
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左から河森正治、高橋正典。
「劇場版 誰ガ為のアルケミスト」を手がけたアニメ制作会社・サテライトに映画ナタリーが取材を実施。同作の制作の様子を写真とともにレポートする。
スマートフォン向けゲーム「誰ガ為のアルケミスト」をもとにした本作。女子高生・永坂カスミが光と闇の均衡を失ったバベル大陸で繰り広げる冒険が描かれる。水瀬いのりがカスミに声を当て、逢坂良太、降幡愛、花江夏樹、石川界人、堀江由衣、生天目仁美、内田雄馬、今井麻美、早見沙織、江口拓也、Lynn、福山潤が出演した。
制作現場の取材が行われたのは4月12日。サテライトのオフィスへ入ると、本作にて総監督を務める河森正治の部屋の扉が目に飛び込んでくる。ドアにはテレビアニメ「重神機パンドーラ」でタッグを組んだBUMP OF CHICKENのメンバーのサインや、「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」でキャラクター原案を担当した実田千聖によるキャラクター色紙が飾られていた。オフィスの先へ足を進めるとずらりと並んだパソコンが見え、スタッフがそれぞれの作業に打ち込む。
河森や監督である高橋正典の姿はオフィスの奥にあった。大きなモニターでバトルシーンを確認し、細かい調整を入れていく。河森の「影が薄いから立体感が足りていないね」という指摘や、キャラクターが錬金術を行う際の魔法陣の位置に関する意見に、ほかのスタッフが深くうなずく場面も見られた。また編集用の部屋は別に用意されており、スタッフが3台のモニターを駆使して映像のつながりなどが不自然でないかを確認する。
プロデビューを果たしてから40年という長いキャリアを持つ河森。自身はオリジナル作品を制作するのが好きだと明かす一方、「もともとこのゲームの世界で使われている錬金術に興味があったんです。この世界をお借りすることで自分のやりたいこともできるのではないかと考えました」とゲームの劇場アニメ化に取り組んだ理由を伝える。高橋が「現実世界から異世界に召喚されるカスミという主人公が河森さんの立ち位置と似ているなと」と述べると、河森は「新たな視点が入ることで、ゲームの世界観を知らなくても映画を楽しめるようになっています。もちろんゲームをやっている人にも『このキャラクターたちが出るのか!』と楽しんでもらえます」とアピールした。
制作現場では映画に登場するメカの話題も。「マクロス」シリーズのほか、樋口真嗣が監督を務めた「ひそねとまそたん」などでもメカのデザインを担当した河森は「ミリタリー系のロボットだと空気抵抗の問題や、どうやって弾を避けるのか、レーダーはあるのかなど現実に近い戦いをベースに考えるんですけど、ファンタジーでは感情を表に出していくようなアクションが描けるんです」と、「劇場版 誰ガ為のアルケミスト」制作における楽しさを述懐。今作にも「マクロス」シリーズのスタッフが数多く参加していると言い、「リアリティを踏まえたうえで、ファンタジーであればデフォルメして見せられるという思いがベースにありますね」と考えを語った。
映画の舞台設定は、ゲームのエピソードが完結したのちの世界であることを明かした河森。「登場人物の性格がゲームとは少し変わっているかもしれません」と見どころに言及し、「キャラクターのみんなが活躍するシーンは燃えますよね。ゲームを手がけているgumiのスタッフさんたちも、そのシーンを観て盛り上がっていたので」と自信をのぞかせた。
「劇場版 誰ガ為のアルケミスト」は6月14日より全国ロードショー。
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