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『町田くんの世界』細田佳央太×関水渚が明かす、大役抜擢の裏側と豪華共演者から学んだこと

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 映画『町田くんの世界』が6月7日に公開された。『舟を編む』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井裕也監督最新作となる本作は、運動も勉強もできないが、すべての人を分け隔てなく愛することができる才能を持つ“人が大好き”な町田くんが、“人が大嫌い”な猪原さんに出会ったことで、初めて“わからない感情”に向き合う模様を描いた青春映画だ。

参考:池松壮亮が新人・細田佳央太を称賛 石井裕也監督最新作『町田くんの世界』メイキング映像公開

 岩田剛典、高畑充希、前田敦子、太賀、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子ら豪華キャストが集結した本作のメインキャストに抜擢されたのは、1000人のオーディションから選ばれた演技経験ほぼゼロの新人だ。今回そんなメインキャストの2人、町田くんを演じた細田佳央太と猪原さんを演じた関水渚にインタビューを行い、オーディションを勝ち抜いた心境や撮影時のエピソード、今後の目標などについて話を聞いた。

ーーメインキャストとしてこれだけ大きな作品に出るのはお2人とも今回の『町田くんの世界』が初めてですよね。やっぱりプレッシャーは大きかったですか?

細田佳央太(以下、細田):そうですね。この取材でも結構緊張しているぐらいなので……(笑)。今回、最初にプロデューサーの方から他のキャストの方々の名前を知らされた時に、本当に不安になったんです。岩田剛典さん、高畑充希さん、前田敦子さん、太賀さん、池松壮亮さん、戸田恵梨香さん、佐藤浩市さん、北村有起哉さん、松嶋菜々子さん……ですから。でも、この作品で主演をやらせていただくのが決まった時に、石井監督から、「手を抜くなよ」とは言われていたので、「そのプレッシャーに負けてる場合じゃないな」「どんどん食らいついていくくらいじゃないと」と、スイッチが切り替わった感じもありました。

関水渚(以下、関水):私も最初はとにかく不安でした。共演者の方々の名前が発表された時は驚きとプレッシャーで涙が出ましたが、共演者の先輩たちが本当に優しかったので、ご一緒できてよかったなと心から思っています。

ーー関水さんはオーディションの時にも号泣されていたそうですね。

関水:私、すぐ泣いてしまうんです(笑)。オーディションの時は、もともと石井監督のファンで、『町田くんの世界』は原作も読んでいて好きな作品だったので、どうしてもやりたいという気持ちがあったんです。それで前のめりになってしまって、心臓の鼓動が変な感じになり、自己紹介を始めたら涙が出てきてしまいました。お話にならないレベルで、オーディションも大失敗だと思っていたんですけど、なぜか受かることができました(笑)。

細田:なに、その笑い。嬉しくなっちゃった?(笑)

関水:うん(笑)。オーディションの最後で、私たち2人が呼ばれて、その場でお芝居をしたんです。その時にその場で合格と言われたんです。合否をあんな形で発表されるとは思っていなかったので、本当にビックリしました。

細田:僕もすぐには飲み込めなかったです。状況が状況だったので……。しかも、石井監督が僕らの芝居を見て、「いいんじゃない?」とおっしゃったんですよ。その「いいんじゃない?」が、「OK」の意味の「いいんじゃない?」ではなくて、「この2人はない」の意味の「いいんじゃない?」とも取れたので、「ん!?」という感じで本当に意味がわからなくて……。でも、徐々に状況が理解できて、「あぁ、受かったんだ」と、役を勝ち取れたことの嬉しさが込み上げてきました。それと同時に、主演という役どころだったり、1000人の中から選んでいただけたというプレッシャーもすぐに襲ってきました。ずっとは喜んでいられなかったですね。

ーープレッシャーは撮影に入るまでずっとあったんですか?

細田:最初はありました。でも、撮影に入る前に1~2カ月ほど、監督と僕と関水さんとプロデューサーさんとでの特訓期間があったので、「あれだけやったから大丈夫」という気持ちもありました。とはいってもやはり、どこか無意識のうちに緊張感はずっとあった気がします。

関水:私は撮影が始まる初日までずっと不安でした。いくらリハーサルを重ねても、「本当に自分にできるのかな」という気持ちがずっとあったんです。いざ撮影が始まってしまうと、そういうことを考える余裕もなくなってしまいましたが、始まる前は夜も眠れないくらい不安とプレッシャーがありました。

ーー“特訓期間”ではどういうことを?

細田:まず、振り切ったお芝居ができるかどうかを監督に見ていただきました。最初は役に関係なく、お腹がよじれるくらい笑ったり、今の自分の気持ちを大きな声で言いながら舞ってみたり……そういうことをすぐその場でやってみることから始まって、徐々に台本に入っていきました。リハーサルの最後の方では、ロケハンや美術打ち合わせにも参加させていただいたんです。映画の世界にそういうことがあることすら僕は知らなかったですし、役者がそこに参加することは稀だと後々知ったので、すごく貴重な機会だなと。スタッフの皆さんがそのくらい僕たちのことをチームの一員として見てくださっているのがすごく嬉しくて、より頑張ろうと思いました。

ーー今回の作品は何と言っても町田くんのキャラクターが特徴的ですよね。初の大役にして大きな挑戦だったのではないでしょうか。

細田:本当にそうですね。渡された台本を最初に読んだ時に、町田くんのことが全然わからなくて、「どうしよう……」って。その後すぐに1回目のリハーサルがあったんですけど、その時に監督から「町田くんみたいに、こんなに全人類を家族と思うくらい愛してる子は他にいない。だから、彼は神様みたいな存在なんだ」と言われたんです。それが大きな助けになりました。最初は大変だったんですけど、“神様”というワードを監督からいただけて、町田くんの存在を別のものに置き換えることができたので、そこからはあまり悩まず、考えすぎずに演じられるようになりました。

ーー自分と重なる部分はなかったですか?

細田:町田くんくらい優しかったらいいですけど、自分はまだまだ足りていないかなと(笑)。町田くんは本当に、自分の前にある課題とか関係なく、正面からぶつかっていく真っ直ぐさがあるんです。一つあるとしたら、僕は悩みを持った時とかに、「なんでなんだろう?」と考えてしまうタイプなので、その真っ直ぐさに近い部分はあるのかなとは思います。それ以外は、何一つ町田くんには及ばないです(笑)。

ーー関水さんが演じる猪原さんは、そんな特異な存在である町田くんを追いかけるような、観客目線のキャラクターとも言えます。

関水:私はお芝居の経験がこれまで全くなく、今回が初めてだったので、役を演じる以前に、“お芝居をどうしたらいいか”がわからなかったんです。なので、とにかく手探りでやっていたんですが、すごく中途半端になってしまって……。そんな時に、監督から「とにかく思いっきりやりなさい」と言っていただいたんです。猪原さん自体がすごく起伏のあるキャラクターだったので、本当に思いっきりやらなきゃいけないなと気づいて、とにかく思いっきり、一生懸命やるということを常に念頭に置いて、お芝居をしていました。

ーーご自身の高校時代を思い出したりも?

関水:私も自分が高校生の頃は、感情の起伏など心の不安定さが表に出ていたと思います。猪原さんまで表には出ないと思いますが……(笑)。そういった意味では、人見知りだった高校生の頃の自分と猪原さんは、少し似ているところがあるなと思いました。今は高校生の頃とは変わってきて、あまり人見知りしなくなりました。

ーー2人でお芝居について話し合うこともあったんですか?

細田:いや、それがリハーサル期間中も撮影期間中も、僕らほとんど話をしていなくて……。それぞれ自分の役のことでいっぱいいっぱいになっていたんです。なので、お互いに気を遣って話をすることができなかったんですよね。でも、撮影に入ってからは、逆に共演者の方に助けていただくことが多かったです。僕らは撮影に入っても緊張していたので、自分たちから話しかけたりはできなかったんですけど、皆さんが「学校楽しい?」とかプライベートな話をすごくしてくれて。関水さんは、前田(敦子)さんと親しくしていたよね?

関水:そうなんです。前田さんとはすごくお話をさせていただきました。友達役ということもあって、前田さんが気さくに話しかけてくださいました。撮影が夏で、「私、日焼けしやすいんですよ」って言ったら、前田さんが「日焼け止めあげるよ」って言って、翌日に持って来てくださって。その時の袋まで大切に取ってあります(笑)。

細田:(笑)。撮影期間がすごく短くて、皆さん3日とか5日とかしかないなか、いろいろ話しかけてくださって、すごく皆さんの優しさや温かさを実感しました。

ーー共演者の方々との撮影で印象に残っているシーンはありますか?

細田:僕は池松(壮亮)さんとのシーンです。バスを降りて、お互いが本音をぶつけるシーンがあるんですけど、そこは生まれて初めて「お芝居が楽しい」と思えた瞬間でした。あのシーンは、もともと監督からも「俺はこのシーンがすごく好き」って言われていて、僕も「負けないくらい頑張ろう」と意気込んでそのシーンの撮影に挑んだんですけど、池松さんも熱量がどんどん上がってきて、僕のことを引っ張ってくださいました。そのおかげでどんどん気持ちが高まって、本当に楽しいなと思えたので、すごく印象に残っています。

関水:私も池松さんと町田くんを見つけるシーンはすごく楽しかったです。どこがとか具体的に言葉では言えないんですけど、本当に皆さんのお芝居をしている姿がカッコよかったんです。学生役で共演させていただいた、前田さん、岩田(剛典)さん、高畑(充希)さんも、本当に皆さんカッコよかったです。

ーー学生役の皆さんは役者としても先輩で、年齢も上ですよね。その点で同級生役を演じる難しさはありませんでしたか?

細田:それは全くなかったです。

関水:私もなかったです。皆さん本当にすごいです。実年齢より下の高校生という役でしたけど、違和感を覚えたことが一切なかったんです。気持ちが高校生になっているので、本当に高校生に見えました。

細田:やっぱり役づくりのすごさはあったと思います。だから見ていて違和感がなかったんでしょうね。

ーー共演者の方々から学ぶこともたくさんあったと思います。今後、お2人はどのような役者になっていきたいですか?

細田:僕は、とにかくこの『町田くんの世界』で得たものがすごく多くて、濃いものだったので、改めて役者を続けていきたいと強く思いました。役者としての基盤となったこの作品で学んだことを活かしつつ、また新しいことも学んでいきたいです。明確には決まっていないですが、とにかくいろいろな役、いろいろな作品、いろいろなジャンルに触れて、経験を積んでいきたいです。

関水:私もとにかくいろいろな役に挑戦してみたいと思っています。私が大好きな作品のひとつがNHKの朝ドラ『まんぷく』なんですが、自分が体験したことのないことを別の人の人生をとおして体験できるのが、面白そうだなと思うので、まだ経験したことのない30代や40代を含め、誰か1人の人間の一生を演じることができたら楽しいだろうなと思っています。

ーー改めて、この作品はお2人にとって、どのような作品になりましたか?

細田:僕はこの作品から、“一生懸命の大切さ”を教えてもらいました。映画を観たときに、町田くんも一生懸命だし、それにつられて周りの人たちも一生懸命になっていくそのエネルギーの強さに感動して、「一生懸命な姿勢って素敵だな」と思ったんです。僕もそうなんですけど、みんな斜に構えがちな部分があって、「一生懸命はダサい」と見てしまう部分もあるじゃないですか。でも、そうじゃなくて、一生懸命だから楽しいし、苦しいし、カッコよくも見えるんだなって。この作品をとおして、改めてそういうことを教えられた気がします。

関水:「一生懸命ってカッコいい」って改めて感じさせていただきました。この作品は、私にとって宝物になりましたが、誰かの宝物にもなっていただけたらいいなと願っています。これから就活をする友達がジャパンプレミアを観に来てくれたんですが、「この映画を観たおかげで、私も一生懸命頑張ろうと思えた」って言ってくれて、すごく嬉しかったんです。多くの方にそういうふうに「一生懸命になろう」と思っていただけたら嬉しいです。(取材・文・写真=宮川翔)