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『月極オトコトモダチ』徳永えり×穐山茉由監督に聞く、“男女の友情”はあり得るのか?

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リアルサウンド

 音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB 2018」で長編部門グランプリを含む4冠に輝いた映画『月極オトコトモダチ』が、6月8日に公開された。本作は、アラサー女性編集者の望月那沙、那沙がレンタルした“オトコトモダチ”の柳瀬草太、そして那沙のリアル“オンナトモダチ”珠希の関係性を描いたラブコメディだ。

参考:等身大のアラサー編集者役を熱演! 『月極オトコトモダチ』徳永えりの新場面写真公開

 本作の監督を務めたのは、現在もファッション業界で会社員として働く、本作が長編デビュー作となった穐山茉由。リアルサウンド映画部では今回、那沙役で主演を務めた徳永えりと穐山監督にインタビューを行い、作品が生まれた背景から、それぞれの恋愛観についてまで、話を聞いた。

ーー第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門での上映、MOOSIC LAB 2018での長編部門グランプリを含む4冠受賞を経ての劇場公開となります。

徳永えり(以下、徳永):本当にありがたいことです。MOOSIC LABではまさかグランプリをいただけるとは思っていなかったんですけど、上映してからお客さんの反応を見て、「あれ、これはもしかしたら……」と教えていただいたような感じがあって。お客さんが楽しんでくださったからこそ、今回の劇場公開にも繋がった気がしているので、すごく感謝しています。

ーー徳永さんの出演はどのような経緯で決まったんですか?

穐山茉由(以下、穐山):自主映画なので、最初は「出てくれないだろうな……」とは思ったんですけど、図々しくダメ元で聞いてみることにしたんです。そしたら、マネージャーさんも含めてこの企画に乗ってくださって。第一希望が叶って、本当にありがたいなと思いました。

徳永:こちらこそお話をいただけてありがたかったです。私がお話をいただいたときはまだ脚本ができていなくてプロットだけだったんですけど、この答えのない“オトコトモダチ”という関係をどういうふうに描いていくんだろうというところに興味を惹かれました。あと、監督自身にもすごく興味があって……(笑)。

ーーファッション業界で会社員として働きながら映画学校に通って映画を学び、今回の作品で長編デビューと。

徳永:「会社員なの!?」って(笑)。私と年齢が近くて、今回が長編監督初めてで、脚本もご自身が書かれる……「これは一体どういうことだろう?」と思いました。穐山さんが映画監督になった経緯を聞いた時に、「そういう方がこの題材で映画を撮るのは面白くならないわけがない」と思ったんです。私も“その答えのないもの”にチャレンジしたいなと思い、ありがたく引き受けさせていただきました。

ーー確かに“レンタル友達”を題材にした映画は珍しいですよね。

穐山:「SNSで友達がたくさんいるように見せるために友達を雇う人がいる」という記事を読んで、ものすごく面白いなと単純に興味を持ったのがきっかけでした。「何でそこまでして友達がほしいんだろう?」「友達ってなんだろう?」と、レンタル友達そのものと、それを雇う人の気持ちが気になって、人と人が“知り合い”から“友達”になる過程、何が行われて、どういう共通認識で友達になるのかを描きたいと思いました。私自身、友達を作るのが本当に苦手なタイプなので……。

ーーそういう記事を読んだのがきっかけだったんですね。

穐山:記事を読んでものすごく興味を持って、人が隠しながら持っている根本的な欲望みたいなものが描けるかもしれないと。そこにドラマがある気がして、レンタル友達という題材にしたんです。

徳永:実際にレンタルなさったんですよね。

ーーそうなんですか?

穐山:30歳くらいの男性、柳瀬とほぼ一緒の設定でレンタルしてみました。一応、容姿もリクエストすることができたんですけど、あまりイケメンだと私が緊張しちゃうので、「イケメン過ぎず話しやすい方」でリクエストしました(笑)。友達になる過程をスキップできるのはラクですけど、お金を払うことによってそれを得るのは虚しいなと正直思いました。ただ、安心して話せてしまった部分もあるんですよね。私の言うことを全部受け入れてくれるので。それによって、普段人と接している時に、「この人にこう思われちゃったな」とか「こんなこと言ったら嫌われちゃうかな」とか「私はこう見られたいな」ということを考えながら生きているんだということを逆に実感しました。そうやって普段は少なからず何かしら忖度しながら人と接しているはずなんですけど、それがないのは不思議な感覚でした。

ーーレンタル友達はわりといいものだったと。

穐山:レンタル友達自体は楽しいですけど、実際にレンタルし終わった後はすごく虚しくなりましたね(笑)。

徳永:「じゃあ」って言ってお金払う感じが(笑)。急に現実に引き戻されますよね。

穐山:そうなんですよ。お金というものの存在が……(笑)。

ーー実際に友達をレンタルしてみた経験は徳永さんにも共有されたんですか?

穐山:細かく話して共有するというよりは、シナリオに込めました。逆に徳永さんが私の実体験を意識しすぎちゃうのも違う気がして、徳永さんには本当に感じるままにやってもらいたいなという気持ちがありました。

徳永:確かにあまりなかったですね。私からしたら、演じているうちに“那沙=監督”ということがだんだん分かってきたので、監督を見ていれば答えが出てくるような気がしました。

ーー最初は答えがわからなかった部分も?

徳永:シナリオを読んだ時に、まず那沙というキャラクターが私の中でちょっと掴めなかったんです。どこに重きを置いたらいいのかが全然わからなくて……。でも実際やってみて気がついたのは、那沙は基本的に素直だということ。感情のうねりも素直だからこそ生まれることで、それによっていろんな面が出てくるんだと気がつきました。今回は9日間ぐらいの短い撮影期間だったんですけど、柳瀬役の橋本(淳)さんとの相性がすごくよくて、役として深いところでお芝居ができたと思いました。クライマックスでは、橋本さんともお話ししながら、もうちょっといけるかもしれないなと思って、「このままでもいいけどもうちょっと……」と、監督にセリフを変える提案をさせていただいたりもしました。

ーーこれは映画のラストにも関わってくる問題ですが、実際にお2人は“男女の友情”はあり得ると思いますか?

徳永:私はあり得ると思っています。“あり寄りのあり”です。逆に「男女の友情なんてありえない!」という人が結構いることが、私には意外でした。本当にどちらかが恋愛感情を抱かない限りは、全然あり得ると思うんですよね。恋愛を飛び越えて愛情になることも全然ありますし、たとえそういう関係になってしまったとしても、全然もとに戻れるというか。愛情はそのまま友情に変換できると私は思っています。

穐山:私もあるかもしれないロマンみたいなものを追いかけるつもりで、ありと思いながら映画を作っていましたが、手放しにある派ではないですかね……。私も実際に男友達とはっきり言える人がいるんですけど、そういう人って、ちょっとタイミングがズレて何かあったりしたら、もしかしたら付き合っていたかもしれないような人なんですよね。結局タイミングを逃して、彼氏・彼女の関係性にはなりませんでしたが……。それを“友達”とくくってしまうのは簡単ですけど、そういう単純なものではないじゃないですか。それぞれの関係性があっていいと思ったので、映画のラストも何か新しいものに向かう感じにしました。なので、はっきり「ある」とは言えないけど、「あってほしい」という感じですかね。

徳永:希望を込めて?

穐山:うん。ちょっと色気のある感じの……男女だからそういうこともあるかもしれないけど……っていうニュアンスが私はしっくりくるというか。そういうロマンもありつつ、でもその2人だけの関係もあるというのが、私はすごく魅力だと思います。

ーー今回の『月極オトコトモダチ』もそうですが、ドラマ『恋のツキ』や『フルーツ宅配便』(共にテレビ東京)、映画『疑惑とダンス』など、ここ最近の徳永さんはより出演する作品の幅を広げられている印象です。

徳永:私自身はあまり意識していないんですけど、ありがたいことにマネージャーさんが挑戦的な作品を選んでたくさん持ってきてくださるので、私はどんどん挑戦してみようというスタンスなんです。自分の中では、まだまだチャレンジしなければいけない時期だなと思っています。朝ドラの『梅ちゃん先生』『わろてんか』もそうでしたが、これまでは主人公を脇で支える役柄だったり、受けの芝居だったりが多く、それはそれで楽しかったんです。ただ、今回の『月極オトコトモダチ』もそうですし、『恋のツキ』もそうでしたが、作品の規模を問わず主演を経験をさせていただいたことによって見えたこともたくさんあって。なので、とにかく信じてやってみようという気持ちが今は強いですね。なかなか女性を描く作品に巡り合わなかったところに、『月極オトコトモダチ』や『恋のツキ』など女性を描く作品が増えてきたのも、「期待してもらっているのかもしれないな」というプラスの解釈で、チャレンジ精神を持って頑張りたいと思っています。

ーー5月1日にはご結婚もされました。おめでとうございます。女性を描く作品に出演することが増えてきたタイミングでのご結婚も、何かの巡り合わせのようですね。

徳永:ありがとうございます。そうですね……でも私、正直自分の経歴がちょっとおかしいと思っているんです(笑)。学生の役を演じることが多かった時代があって、女を演じる時代をすっ飛ばして、お母さんを演じることが多くなったという……(笑)。それで、いろんな人から「あなたは本当に女がない」というようなことを言われ続けていたんです。私自身も「女がないんだろうな」「求められていないんだろうな」と思っていたら、30代になって、立て続けにそういう役を演じることが増えてきたので、それはそれで面白いなと。結婚もそうですが、年齢とともに、女性としての変化は必ずあると思うので、それが表現としてどのように変わってくるのか、私自身も今からとても楽しみです。(取材・文・写真=宮川翔)