新作「私の恋人」に渡辺えりが意欲、「のんちゃん、小日向さんと汗だくに」
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渡辺えり
オフィス3◯◯「私の恋人」の合同取材会が5月下旬に東京都内で行われ、脚本・演出を手がける渡辺えりが取材に応じた。
「私の恋人」は、昨年2018年に創立40周年を迎えたオフィス3○○の新作。上田岳弘が15年に発表し、第28回三島由紀夫賞を受賞した同名小説を下敷きに、渡辺が音楽劇として立ち上げる。出演者は渡辺、小日向文世、のんの3人だ。
渡辺は、上田の小説「私の恋人」について「時空を超えて転生する主人公の10万年越しの恋が描かれています。1人のクロマニヨン人が“恋人”を空想して、その人を壁画として描き、次にドイツのダッハウでユダヤ人として生まれ変わる。さらに、新宿の歌舞伎町を歩いているニートに生まれ変わって、そこで初めて“恋人”に出会うんです」と解説。
続けて渡辺は15年に自身の還暦公演で上演した「ガーデン~空の海、風の国~」に触れ、「『ガーデン』も原始人が現代の主婦まで進化するという、時空を超える物語だったので、『テーマが似ている』と私が話したインタビュー記事を上田さんが読んで、公演を観に来てくださったのが出会いです」と振り返った。
渡辺は、上田作品について「私が演劇でやりたいと思うテーマと近くてホッとする」と述べ、「上田さんの小説『塔と重力』をもとにした音楽劇『肉の海』を昨年上演して、9割は創作でしたが、手応えがありました。次の新作の題材を何にしようかと考えたとき、私が一番最初に読んだ上田作品『私の恋人』が浮かんだんです」と今回の上演の経緯を語った。
話題が共演者のことにおよぶと渡辺は「小日向さんとは舞台『フィガロの結婚』で夫婦役を演じたときに意気投合して、二人芝居の『ミザリー』は、全国公演を2回やりました。小日向さんは、『舞台でしかできないような芝居がしたいから3◯◯の舞台に出たいんだ』と言ってくれていたんです」とエピソードを明かす。また「のんちゃんは、ドラマ『あまちゃん』で共演してから3◯◯の作品や私が出ている芝居をかかさず観て、毎回感想を教えてくれるんです。のんちゃんも『3◯◯にいつか出たい』と言ってくれて、今回ようやく出演が叶いました」と笑顔を見せた。
「私の恋人」でも、原作に大きくアレンジを加えると宣言する渡辺は、「『肉の海』では、1人の役を30人で演じましたが、今回は、主人公だけでなく、主人公のお母さんや弟、強制収容所の看守、神父、アボリジニなど、原作に出てくる30人ほどの人物を、3人だけで演じ分けます。誰かがしゃべっている間にほかの誰かが着替えて出てきて、代わる代わる役を演じる予定です」と述べる。また本作のビジュアルに収められた小日向の扮装姿ついて渡辺は「不気味でしょう?(笑)」といたずらっぽく笑い、「小日向さんにはカツラをかぶって青年の役もやってもらいます」と付け加えた。
「私の恋人」は、東京をはじめ兵庫、鹿児島、山口、福岡、岩手、山形と全国各地を巡演する。渡辺は「『あまちゃん』の舞台でもある岩手県の久慈でも上演します。また私の地元、山形県の山形県県民会館(やまぎんホール)は、私が『ガラスの動物園』を観て、役者になるために上京しようと決意した劇場。この会場は11月に閉鎖されて2020年3月に別の場所に移転してしまうので、無理を言って上演させてもらうことになりました」と上演会場への思い入れを語った。
「劇中では15曲くらい披露する予定です」と構想を明かす渡辺は、「のんちゃん、小日向さんと私が汗だくになりながら何役も演じるというだけでも大笑いできると思います。テーマは深くてシリアスですが、明るく笑える作品にしたい。演劇を観たことがない方や、若い方にも観ていただきたいです」と来場を呼びかける。
最後に、昨年40周年を迎えたオフィス3◯◯について渡辺は「もうライフワークですよね。でも、自分が演出して出演もするのは2020年までにしようと思っています」と思いを打ち明け、「演出も出演も同時に、というのは65歳までにして、66歳からは演出に専念したい。3◯◯では脚本・演出・プロデュース・出演を並行してやってきましたが、作・演出に徹したら、落ち着いて作品を作れるのかなと。過去作の再演もしたいです」と意欲をのぞかせた。
オフィス3◯◯「私の恋人」
2019年8月7日(水)
東京都 東大和市民会館ハミングホール ※プレビュー公演
2019年8月9日(金)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2019年8月13日(火)
鹿児島県 宝山ホール
2019年8月15日(木)
山口県 山口市民会館 大ホール
2019年8月17日(土)
福岡県 大野城まどかぴあ
2019年8月22日(木)
岩手県 久慈市文化会館 アンバーホール 大ホール
2019年8月25日(日)
山形県 やまぎんホール
2019年8月28日(水)~9月8日(日)
東京都 本多劇場
原作:上田岳弘「私の恋人」(新潮社)
脚本・演出:渡辺えり
ミュージシャン:三枝伸太郎
出演:小日向文世、のん、渡辺えり