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桜田通が『わたし、定時で帰ります。』の一ファンとして思うこと 「弟役ハードルめっちゃ高い!」

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リアルサウンド

 働き方改革に揺れる“現代のオフィス“を切り取り、「私たちは、何のために働くのか」を真っ直ぐに問いかける『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)。

 「福永は危険な男です」と第1話から、結衣(吉高由里子)に情報を提供をしてきた謎の男・愁(桜田通)。第7話では、結衣の元婚約者で上司の種田晃太郎(向井理)の弟・柊であることが判明し、話題を呼んだ。部屋に引きこもって働くことから離れている柊と、ワーカーホリックな晃太郎。対象的な兄弟の関係性も、このドラマの見どころのひとつだ。

【写真】柊の兄・晃太郎演じる向井理

 過去のトラウマを抱える柊を繊細に演じている桜田に、『わたし、定時で帰ります。』を通じて感じたこと、そして彼自身の「働くとは」について聞いた。

■「イチ視聴者として楽しみ。初めてです、この感じ(笑)」

――『わたし、定時で帰ります。』という作品について、どのような印象を持ちましたか?

桜田通(以下、桜田):題材として、時代に合っていて面白いなと思いましたね。原作を読ませていただいたんですけど、すごく共感できるキャラクターが出てきて読みやすかったです。僕自身は、新入社員の来栖泰斗くんの心境が「わかるな~」って思いました。

――今回、桜田さんが演じられた柊に対しては?

桜田:物語のキーとなるポジションですし、純粋に「素敵な役に出会えて嬉しいな」とワクワクしました。柊は、ずっと部屋にこもっているので、メールの文章を読み上げるモノローグのほうが多くて。謎めいて見えるようにといった計算はなく、監督の演出指示に従って素直に演じさせていただきました。

――たしかにドラマのメイン舞台であるオフィスには、いらっしゃらなかったですもんね。

桜田:そうなんですよ。出演はしていますが、他のキャストのみなさんとも2~3回しか会ってないです(笑)。連ドラなのに2週間オフだった時期もあったり、本当に連ドラを撮ってる気がしないです(笑)。だから、今まで出演してきた作品の中でも、すごく客観的に見られているなと思うんですよ。もう番組ファンの感覚で「いいドラマだなー」って。毎回楽しみにしてるんです。

――そんな視聴者として楽しまれている中で、印象に残っている場面はありますか?

桜田:それはもう6話のラストですよ。晃太郎が結衣のことを「今も好きですよ」って言うシーン! あれは、向井さんがカッコ良すぎて(笑)。僕、出演が決まったときから、向井さんの弟役を演じるなんて、「嘘だろ」って自分でツッコミを入れてたんですけど、あのシーンで改めて「弟役ハードルめっちゃ高い!」って笑っちゃいました。

――確かに、あのシーンはドキドキしましたね。

桜田:その複雑な関係に挟まれてる吉高さんも、すごくキュートなんですよね。結衣の存在は、「定時帰りなんてそもそもできないし」と思っている、三谷さん(シシド・カフカ)みたいな考え方を持った視聴者の皆さんに、「困った人」と思われる可能性もあると思っていて。でも、それを嫌味なく演じられているのは、吉高さんが持っている、もともとの明るい雰囲気なんだろうなと思うんですよね。役者としても勉強になることが多く、楽しく見ています。

――6話では晃太郎と対面して、過呼吸になるという難しいシーンがありましたが。

桜田:あのシーンは実際に酸欠になって苦しかったです。向井さんも声をかけてくれて。「“過呼吸になる“って台本に書いてあるタイミングよりも前から、その予感が自分の中である意識をしたほうが、やりやすいと思うよ」っていうアドバイスもくださって。もう大好きです、向井さん(笑)。柊も本当はコーニー(晃太郎)のことが大好きなんだと思うんですよ。でも、大好きだからこそ、見るだけでも息が詰まる存在になってしまった。その真相は、9話で明かされるので楽しみにしていてほしいです。

――晃太郎の弟だったと判明して、まわりからの反響はありました?

桜田:母親から「弟だったんだね」って言われました(笑)。TwitterやInstagramのコメントで「向井さんの弟なんて素敵ですね」って褒めていただけたのはうれしかったですね。全部、向井さんのおかげです(笑)。

■「人間って違うんだ、比べる必要なんてないんだなって」

――柊という役柄から、客観的にドラマを楽しまれているとおっしゃっていましたが、お話を聞いているともともと桜田さんは物事を俯瞰して見ているように感じます。

桜田:そうですね。この仕事は、生まれたままの姿じゃいられない時間のほうが多いじゃないですか。役を演じるということもそうですし、求められる姿に自分を近づけることが多くて。普段、僕がやりたいことを選択するのは、自分の心に従っていますが、どこかで自分の存在を客観的に見ている感覚があるんですよね。

――セルフプロデュースしているような?

桜田:はい。自分のありのままでいたら、僕はまったくこの業界に向いていない人間なので(笑)。周りには向井さんのようなすごい方がたくさんいて、本当は柊のように引きこもっていたいです。そんな現状を整理するためにも客観視するしかなかったのかもしれません。何度も例に出して申し訳ないですけど、向井さんを見ると「ああ、自分が1個も勝ってるところなんてないな」と思うわけですよ。でも、客観的に見れば、同じ容姿でもないし、性格も、声も、何もかも違うのに、比べる必要なんてないよなって。そう思えるようになってから、超えたかった自分に超えられないときは悔しいですけど、人と争って悔しい思いをすることがなくなりましたね。自分が自分だから、今回も柊という役を演じられて、幸せだなって。

――何歳ごろからそうした視点で周囲を見るようになったんですか?

桜田:たぶん、20歳くらいですね。ロンドンに半年くらい留学していた時期があって。そのときに「あー、本当に1人ひとり人間って違うんだ、比べる必要なんてないんだな」って気づいたんです。それまでは、やっぱり僕も人と自分を比べて悔しがったり、「アイツうぜー」と思うこともあったんですけど(笑)。でも、20代になってからは「この人苦手だな」って思う人が全くいないわけじゃないですけど、別物として考えられるというか。この作品を見ていても、1人ひとり違うんだなって改めて思うんですよ。

――たしかに、福永(ユースケ・サンタマリア)やモンスター社員たちを徹底的に悪役にすることもできたはずなのに、この作品ではそうはしていない。そこが面白さでもありますよね。

桜田:そうなんですよ。ブラック上司と見られている福永ですら、福永の正義がある。僕は、その留学をきっかけに「それぞれ正義があるんだ」って気づいたので、感情に波風が立たなくなりました。もちろん、自分にイライラしたり、自分を残念だなって思うこともありますけど、人がイヤなことをしてきても「この人からの視点の世界では、そうするしかなかったのかな」って思うようになりましたし、もしかしたら自分も「正しい」と思ってとった行動が結果的に誰かにそういうふうに思わせてしまっているのかもしれない。だから逆に、自分に対してすごく良くしてくれる人たちがいたら、2倍よく感じるようになったんですよね。それぞれ個々に生きているのに、僕に対して良い感情を芽生えさせてくれるような人がいるんだっていう気づきは、本当に幸せで。そういう人との出会いが、今の自分のモチベーションかもしれません。

■「自分が幸せになるように動いて、周りも幸せにできるような人間に」

――桜田さんは、俳優という「仕事」を楽しまれていますか?

桜田:うーん。この仕事って、好きなことを好きでやってる人たちの集まりって見られがちなんですけど、僕は人前で話すのが苦手で(笑)。昔はすごくイヤだったんですよ。セリフ覚えるのだって正直大変ですし。でも、そのしんどい部分を乗り越えた先に味わえる楽しさがあって。僕自身は、人と人とがいい関係を築けているのが、今の1番の幸せなんですよ。だから、それができているので、楽しめていますね。その楽しいとしんどいのバランスというか、エネルギーの使いどころを個人がラクに調整できるようになったらいいのになと思っています。

――今後は「こんなふうに働いていきたい」という理想はありますか?

桜田:ありがたいことに、現状楽しい仕事のほうが多くて。もちろん、試練を感じている場面もあるんですけどね。9話では柊くん、びっくりするくらいしゃべるんで(笑)。セリフを覚えるのは、相変わらず大変です。でも、それって役者としてはとてもありがたいことなので乗り越えられるんですけど。そういうしんどさを乗り越えるモチベーションが、自分自身だけじゃなくて、自分に好意的に関わってくださっている人が幸せになることを意識していきたいなと思っているんです。自分ができることを、一つひとつもっと丁寧にしていきたくて。自分の行動に対しての責任が、自分だけじゃないっていうことを意識して生きていかないといけないなと。そうしたら、きっと結衣みたいに自分が幸せになるように動くことが、周りの幸せにつながるんじゃないかなって。そういうふうに、この仕事をしていきたいって思っています。

(佐藤結衣)