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『なつぞら』井浦新が好演 ヒロインを導く“師匠”の姿は『半分、青い。』秋風にも重なる?

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 井浦新が朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)で演じるトップアニメーター・仲努がSNSを中心に好評を博している。6月14日には『あさイチ』(NHK総合)プレミアムトークで井浦の特集が放送される予定で、『なつぞら』を通して、彼の魅力が様々な世代にリーチしている状態だ。

 1994年、当時19歳でモデルデビュー。芸名をARATAとして、1999年、映画『ワンダフルライフ』で俳優活動を開始し、2002年には話題作、映画『ピンポン』に出演した。2012年、映画『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』への出演を機に、本名の井浦新に改名。その後は、ドラマ『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系/2012年)、『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』(フジテレビ系/2019年)など話題作に多数出演し、中でもドラマ『アンナチュラル』(TBS系/2018年)では壮絶な過去を背負う法医解剖医・中堂系を演じ、『第11回 コンフィデンスアワード・ドラマ賞』で助演男優賞を受賞した。2019年においては、2月公開の映画『赤い雪 Red Snow』を皮切りに、現在公開中の主演映画『嵐電』、6月公開の主演映画『こはく』、8月公開の映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』、9月公開の映画『宮本から君へ』と立て続けに出演作が封切りとなる、本格的な井浦新ブームが予感されるほどだ。

 そんな井浦は意外にも朝ドラ初出演。『なつぞら』で演じる仲は、ヒロイン・なつ(広瀬すず)に眠るアニメーターとしての才能をいち早く見出す東洋動画の作画監督だ。仲が初登場するのは、なつが兄・咲太郎(岡田将生)を捜すために東京を訪れた際、天陽(吉沢亮)の兄・陽平(犬飼貴丈)に誘われ、東洋動画に足を踏み入れる第31回。「いらっしゃい」となつを迎える第一声はとても柔らかく、アニメーションに夢を見るなつに触発されるかのように、仲自身もアニメーションに熱い思いを秘めているのが伝わってくる。陽平を始め、克己(川島明)といった後輩はもちろん、映画監督・露木(木下ほうか)からも人望が厚く、なつが2度のテストを経て東洋動画に入社でき、さらにはアニメーターになる試験を特別に受けることができたのは、仲の後ろ盾あってのものにほかならない。

 仲のデザインしたキャラクターはどれも可愛らしく、なつにあげたウサギのセル画は北海道の十勝に住んでいた頃、部屋に飾られ彼女の原動力の一つとなっていた。なつにかけた「この絵にはちゃんと君らしさが出てたと思うよ。ちゃんと勉強すればアニメーターになれると思うな」という言葉も。けれど、その言葉が後々、少し喧嘩っ早い咲太郎から責められる事態になる。第51回では、なつが東洋動画の試験に落ちたのが納得いかない咲太郎が、仲に直接理由を聞くために会社に訪れる。中庭に現れただけで黄色い声が飛ぶ仲が、咲太郎から突き飛ばされ頭から噴水に落ちるシーンは、2人の性格が対比されたユニークな場面。演技派俳優として名高い井浦のイメージとのギャップもシュールである。第58回で、仲に呼ばれたなつが喫茶リボンでランチをご馳走になるシーンでは、口元にケチャップを付けたなつになぜつっこまないのかとSNS、さらには“朝ドラ受け”でお馴染みの『あさイチ』で博多華丸・大吉が言及するほど話題になった。その真意は明らかになってはいないが、仲の温厚な性格が表れているのは確かだ。

 井浦は仲を演じる上でなつにとっての「北海道から東京への物語の橋渡し役」とコメントしている。同じ東京へ導く存在として思い出されるのが、朝ドラ『半分、青い。』(NHK総合/2018年)のカリスマ漫画家・秋風羽織(豊川悦司)。彼の代表作「いつもポケットにショパン」を読んで、世界を知り、何かが開いた感覚を味わったヒロイン・鈴愛(永野芽郁)は、秋風に自身の漫画「神様のメモ」を差し出す。漫画の描き方を知らない鈴愛に秋風は、丁寧にダメ出しをしていくも、その個性的なセンスに「私の弟子になりませんか?」と驚きの提案をする(五平餅目当ても多分にあるのだが)。すっかり魅了され上京を決心する鈴愛となつ、さらには鈴愛に秋風の漫画を貸した律(佐藤健)となつに絵心を教えた天陽も、どこかイメージを被らせる。

 『なつぞら』は現在、全体の3分の1が過ぎた辺り。アニメーション編としてはまだまだ序盤だ。豊川悦司にとって秋風が新たな代表作となったように、井浦にとっても仲は俳優としてさらに飛躍するきっかけの役である。(文=渡辺彰浩)