愛する楽器 第7回 山岸竜之介のFENDER American Performer Jazzmaster
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山岸竜之介
アーティストが特にお気に入りの楽器を紹介するこの企画。今回は山岸竜之介(LIFE IS GROOVE)が今年からメインで使っているFENDER American Performer Jazzmasterについて語ってくれた。5月に20歳になったばかりの山岸だが、ギター歴はすでに17年。現在はギタリストとしてのみならず音楽家としても日々成長を続け、世界の音楽シーンのトレンドにも目配せする彼は、時代と共に変化するギターのあり方を熱弁してくれた。
音数が多くても埋もれない
僕はちょっと前までStratocasterをメインギターとして使っていたんですけど、もともとは、スポーツカーみたいなJazzmasterの形にすごく憧れてたんです。なので今回は色もスポーツカーっぽい青系を選びました。それと、もともとシングルコイルピックアップの音が好きなんですけど、Jazzmasterのシングルコイルはハムバッキングほどパンチのある音でもなく、一般的なシングルコイルほど繊細でもない音が出るところが好きですね。
American Performer Seriesは、1月にアメリカ・ロサンゼルスで開催された世界最大の楽器ショー「NAMM Show 2019」での発表に合わせてFENDERが開発した新シリーズです。このシリーズはYOSEMITEというピックアップが付いてるんですけど、パッと聴いた音の印象がすごく明るくて、いい意味で今っぽい。今はシンセサイザーや打ち込みのサウンドが入ってる曲がすごく多くて、そういう曲にはちゃんと芯があって、太く、明るいギターサウンドがマッチするんですよね。曲になじむというよりも、埋もれないと言ったほうがいいかもしれない。ちゃんとギターのよさも出しつつ、打ち込みやボーカルの邪魔もしない。その意味でも、音数が多いトラックで使うことをちゃんと考慮して作られたギターだと思うんです。
とがった部分を出せる
一番大きなポイントは、ブリッジがStratocasterと同じシンクロナイズドトレモロだということ。Jazzmasterのブリッジはフローティングトレモロが一般的で、これにより音はギャリギャリしてる印象で。それがいいところでもあるんですけど、カッティングをするにはちょっと残響が大き過ぎたり、ソロで使うと音の伸びがちょっと足りないイメージだったんです。オルタナティブなイメージが強いというか、My Bloody Valentineのケヴィン・シールズとか、Sonic Youthのサーストン・ムーアとかが使っているイメージですね。
でもこのブリッジだと、歯切れのいいカッティングもできるし、伸びのあるソロも弾けるし、指弾きなどでも繊細な音を出せる。僕が今出したい音にすごく合っています。最近は歌いながら弾くことも多いんですけど、歌うときもピックアップをセンターポジションにしてコードを鳴らすとすごく気持ちがいい。Jazzmasterの中でもAmerican Performer Seriesはちゃんと歌ものにも合うというか、バッキングギターとしての用途にも重点が置かれている気がするんです。
僕自身の細かいこだわりとしては、弦高をめっちゃ低くして使っていることです。Jazzmasterは高めの弦高で太い弦を張って、テンションをしっかりかけて、コードがしっかり鳴るようにするのが基本なんですが、僕はストロークしなくても弾けるくらいの弦高で、0.09~0.42mmの細い弦を張るのが一番しっくりくる。このギターも弦高はギリギリまで下げてもらいました。なので、チョーキングもすごくやりやすいんですよ。
曲作りやレコーディングでも使うんですけど、ライブでの相性がすごくいいです。ライブだと1曲の中で何本もギターを持ち変えられないじゃないですか。このギターはオーバードライブ1つあればどこでも同じ音が出せるし、どこでセッションしても勝てるくらいの安心感があります。僕が欲しいライブでの攻撃性やとがった部分を出せるし、なんでも任せられて、今の自分の音楽性に一番ぴったりなんです。
生のチョーキングで痺れさせたい
最近は「曲中で聴こえるギターの音が減った」みたいに言う人もいますけど、僕が海外のヒットチャートをチェックしていて思うのは、ギターの音、めっちゃ鳴ってるんですよ。「ギターが減った」みたいな話って、僕の中では5年前くらいの話。EDMが流行ったときは確かにそうだったかもしれないけど、最近のR&Bやヒップホップでは特にTelecastorがよく使われていて、チャーリー・プースみたいな、ミュート気味のギターの音が今っぽい音だと思います。
時代と共にプレイスタイルも変わっているし、パソコンで音を作れるようになって、バンドサウンドの概念が変化して、速弾きをする人が減っても、やっぱりギター、ベース、ドラムは曲作りやアレンジの土台にある。AIでの音作りがどれだけ進化しても、ときには生のチョーキングを聴いて痺れたい人がいるだろうし、そういう音を知らない人をも痺れさせるようなプレイをしたいですね。
新作の「未来 アジテーション」は、シンガーソングライターとしての自分と、ギタリストとしてソロを弾きまくる自分をちゃんとどっちも1個の作品にパッケージしたいと思って作りました。ギターはAmerican Performer Jazzmasterをメインに、計4本くらい使ったんですけど、家でプリプロしたときに録った音をそのまま本番に使ったりもしていて、その場合はラインとアンプの音を混ぜて使ってます。
アルバム収録曲の「人生映画」はEmのフレーズで始まるんですけど、ちょっとスパニッシュっぽい感じで、木琴やシンセドラム、クラップ音とかいろいろ入れています。ソロではJazzmasterを思いっきり弾きまくりました(笑)。「言葉以上に」はトロピカルハウスとかレゲトンのアレンジを取り入れています。普通南国とかラテンっぽいアレンジの曲って、クラシックギターとかアコギは入ってても、エレキのギターソロは入ってないんですよね。でも僕は3サビ終わりでJazzmasterを弾きまくっていて。もし外部のプロデューサーがいたら「やり過ぎだ!」って怒られると思うんですけど(笑)。自分でトラックを作るときも、やっぱりギターありきの曲になると思うんです。「一般的にはシンセの音で埋めると思うけど、俺はここでカッティングしたいから空けておこう」「ギターソロを入れたいから、サビを1回我慢しよう」みたいな発想をすることもあります。
今年の5月で20歳になったんですけど、ギター歴は17年間。本当にもう生活の一部ですね。大きな目標としては、ギターヒーローにもなりたいし、アーティストとして大スターになりたい。このギターと一緒に、いつか伝記を書かれるくらいの存在になるっていうのが、僕の夢ですね。
山岸竜之介
大阪在住、20歳。幼稚園年長の頃にTBSのバラエティ番組「さんまのスーパーからくりTV」でCharとギターセッションをし一躍注目の存在となる。その後、さまざまなアーティストと共演を重ね、2013年KenKen、ムッシュかまやつと共にLIFE IS GROOVEを結成し、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」や海外のフェスなどにも出演。2019年5月には山岸竜之介としての1st ミニアルバム「未来 アジテーション」をデジタルリリースした。6月27日からリリースツアー「未来 アジテーション RELEASE TOUR 2019」を広島、福岡、愛知、大阪、東京で開催する。
「未来 アジテーション RELEASE TOUR 2019」2019年6月27日(木)広島県 CAVE-BE
2019年6月28日(金)福岡県 Queblick
2019年7月5日(金)愛知県 RAD HALL
2019年7月13日(土)大阪府 梅田Zeela
2019年7月15日(月・祝)東京都 WWW
取材・文 / 金子厚武 撮影 / 阪本勇